すでにはじまっている“米中冷戦”~今後起こる代理戦争
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月10日放送)に地政学戦略学者の奥山真司が出演。アメリカと中国の今後の関係について解説した。
米中が合意に署名へ~中国の副首相が13日から渡米
中国商務省の高峰報道官は9日の会見で、劉鶴副首相が13日~15日までワシントンを訪れ、米中貿易協議第1段階の合意文書に署名すると発表した。中国はアメリカ産農産品の輸入を大幅に増やす一方、アメリカは2月中旬にも、中国に対する制裁関税の一部を引き下げる。関税緩和の動きは貿易戦争が本格化した2019年の夏以降初めてとなる。
飯田)雪解けの兆しなのではと、川崎市中原区の“てっちゃん”さん、60歳会社員の方。「貿易戦争がいい方向に進んで欲しいですね」といただいています。
米中の貿易争いの本質~世界の覇権争い~合意は一時的なもの
奥山)地政学、国際政治の枠組みの観点から見ると、これが雪解けになるわけがないのです。その理由はいくつかあります。1つは、アメリカと中国は直近のところ、テクノロジーや貿易関係で戦っているということになりますが、本質的なところでは「どちらがナンバーワンか」という争いをしているのです。今回は小手先的に合意となりましたが、本質的な枠組みでは、アメリカと中国の世界ナンバーワンの争いであるということを見誤ってはいけない。冷戦がもうはじまっているのだと、考えなくてはいけないと思います。
飯田)米中の間で。
奥山)米中です。前回の米ソ冷戦は、子ども時代に赤の広場でSS-20ミサイルがパレードしているところなどを見ましたが、あの状態が戻って来ていると思ったほうがいいと思います。冷戦になったきっかけとして、ペンス演説が2018年10月にありましたが、あれから本格的に米中の冷戦が始まったと見ています。現在でも、米中は貿易も続いていますし、激しい冷戦をしていないではないかと思う方が多いと思います。
米中冷戦の始まり~米ソ冷戦時代の朝鮮戦争勃発前の時期
奥山)以前はアメリカとソ連でした。あのときの時間的な枠組みをいまに持って来て考えてみると、興味深いことがわかります。冷戦が始まったのは、1947年くらいからです。朝鮮戦争はその3年後です。3年後に大きな戦争が起こったことによって、冷戦は確定したのです。その間に中国ができたり、ベルリンの壁ができたり、いろいろな事件があるのですけれど、いま私たちが認識しなくてはいけないのは、1947年がたぶん2018年で、以前と同じリズムで行くとすると、いまは冷戦が本格化するまでの間の時期にいるのだと考えることができます。
飯田)冷戦がはじまるときに起きた出来事としてあったものの1つが、チャーチルさんが1946年にアメリカで行った演説、「鉄のカーテン」でした。
奥山)東欧の方に鉄壁ができている、閉ざしているということでした。この演説がきっかけになって、お互いに歩み寄ろうとした形跡は1947年、1950年のときもあったのですけれど、最終的には朝鮮半島で1950年6月25日に戦争が起こりました。いまはそれまでの間と考えるのが正しいと思います。
ペンス演説がジョージ・F・ケナンの「X論文」
飯田)あのときはチャーチルさんの演説があって、理論的な詩集のようなものがいろいろ出たではないですか。
奥山)ジョージ・F・ケナン氏が「X論文」という有名なものを書きました。「フォーリン・アフェアーズ」という雑誌に、「ソ連はこういうところだから気をつけましょう」ということを書いたのです。私はペンス演説が、この「X論文」と同じような役割を果たしているのではないかと思います。これから冷戦がはじまる。核兵器もあるから大きな戦争は起こりませんが、代理戦争や内戦、ベトナム戦争のようなものが起こって来ると思います。
今後、ベトナム戦争のような代理戦争が起こる
飯田)東西冷戦のあの時期は、東西の勢力でお互いのど真ん中にいる国々は戦わなかったけれども、周辺や端にいる、どっちつかずのところを取り合うような内戦や代理戦争が起こった。
奥山)そうですね。第三国、例えばベトナム戦争など東南アジアの、アメリカ人がどこだかわからないようなところでやった。しかしバックには、中国とソ連がついていた。似たような状況になるのではないでしょうか。代理戦争と内戦の時代がこれからはじまるのだと思います。
飯田)かつての地政学で言えば、大陸国家と海洋国家の覇権争いがある。これだけ兵器が進化して、テクノロジーが発達したなかで、いままで日本という国は海に隔てられていたから、海洋国家側にいることが明確でしたが、何だか半島国家に近くなったような気がするのですけれども、いかがでしょう?
奥山)韓国は陸側に引っ張られていますが、日本は相変わらず海側の勢力として生きて行くのでしょう。今回、安倍総理が行くところはサウジアラビア、UAE、オマーンという、どちらかと言えば海側に入っているところです。海側ということで、旗色を鮮明にして生きて行く覚悟はしていると思います。
習近平国家主席の国賓来日
飯田)そんななかで今年(2020年)の春に、習近平国家主席が国賓として来ます。これはその流れに水を差すことになるような気がしますが。
奥山)そこがいま痛いところだと思います。陸側のトップの方におもねるような姿勢を見せるのは、対外的にもよくないと思います。海側なのだから海として、特にウイグルなどの人権問題で騒がれていますけれど、かつてのナチスと同じような酷いことをやっている国のトップを国賓として呼ぶことは、人権は大事だと言っている日本としても対外イメージが悪いと思います。
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