中国、米に反発するも打つ手なし~香港人権法の通商協議への影響
公開: 更新:
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(12月3日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。香港人権法に対する中国の反応について解説した。
米NGOへの制裁決定も具体策は出ず
アメリカのトランプ大統領は自らが署名した香港人権・民主主義法の成立が中国との貿易交渉に与える影響について「良くはならない」との認識を示した。また「中国との通商協議は容易ではなくなったが、中国は依然としてアメリカとの取引を望んでいる」とコメントした。
森田耕次解説委員)中国は2日、アメリカでの香港人権・民主主義法成立への報復措置として、アメリカ軍の軍艦や航空機が整備などで香港へ立ち寄る際に必要な審査手続きを停止しました。その上で「アメリカが香港への介入を止めるよう促す」という指摘をしております。一方で、アメリカ国務省の報道担当者は声明を発表し、「香港の寄港には長い実績があるので、今後も続くことを期待している」と表明しました。また、中国がアメリカの非政府組織(NGO)も制裁対象としたことについて、「香港のデモを支援したという事実と異なる主張に基づくものだ」という批判をしております。今回は香港寄港の際の手続き停止という報復措置を出しましたが、これまでにも対米関係悪化の際によく出していた体らしいですね。
野村)中国はアメリカが成立させた香港人権法に感情的にはものすごく反発していますが、それに対する具体的な制裁の対策が見えてきていませんよね。簡単に言えば、打つ手がないということなのでしょう。例えば寄港を制限すると言っても影響はそれほど大きくないですし、NGOに対して制裁をすると言っていますが、具体的に何をするかということは一切出てきていません。結局のところ、口頭で反論している状況です。
強気な対抗措置が取れない中国
森田)アメリカのトランプ政権は15日に中国への制裁関税の発動を予定しています。第4弾の後半と言われている発動はおよそ17兆4000億円分の制裁関税で、スマートフォンなど幅広い製品が対象になると言われています。その辺も見ながら少し弱い手で対抗しているということなのでしょうか。
野村)いまのアメリカは経済が非常にいいですから、ここでいろいろな策を打っても経済の力関係からいくとアメリカの方が有利な状況にあります。もちろんアメリカにもダメージはあるわけで、自分たちが高い関税をかけると、結果的にアメリカの経済が弱くなる可能性があります。したがって、そう簡単に無謀な関税をかけるとは思いにくいのですが、米中がお互いに歩み寄ろうとしていた中で、香港人権法の問題がどう絡んでくるのか。ここがいちばんの注目点です。
森田)ロス商務長官はFOXビジネステレビに対して中国との貿易協議は「15日が理にかなった期限だ」と発言しています。中国としても輸出の製造業を中心に影響が出てきていますので、どこかで妥協してくるのかというところです。
香港の関心は米よりも区議会選挙の影響
野村)実は、香港がアメリカのことより一番気にしているのは、この間の区議会選挙のことではないでしょうか。あれで民意が明確に示されましたから、親中派としても、民主化をある程度受け入れざるを得ないと思われますが、その具体的な方法がポイントになります。区議会の選挙は香港政府そのものには大きな影響はなくて、地域の自治の部分です。ただ、直接選挙をすれば自分たちが政権を取る力を持っているということが示されましたので、民主化運動の矛先は、行政長官などの間接選挙を直接選挙に変えるよう求めてくることになるでしょう。現在の仕組みでは、どんなに民主化運動が盛り上がっても、結局は中国共産党が支持する人しか行政長官や立法会の議員になれません。これが今後どのように変わっていくのか、そこが注目点です。
森田)この香港人権・民主主義法についてはアメリカの世論調査でも68%くらいの人が「中国政府を怒らせても、香港の民主派を支援すべきだ」という回答をしているということですから、トランプさんとしてもこれだけの支持があるということで、大統領選を考えればますますこの方向に行かなければいけません。
野村)この法案自体は上院が全会一致で可決していますし、下院でも反対しているのは1人だけです。署名しなかった場合でも再決議によって制定されてしまうものだったので、トランプ大統領も署名したのだと思います。ただ、法の執行は大統領がするものなので、まだトランプ大統領は最後のカードを握っています。
森田)香港の問題をめぐって、米中の貿易協議はアメリカが優位に立っている感じがしますね。
野村)ただ、香港問題について、日本はどのような立場を取るのかということが、すごく大事な論点だと思います。
ザ・フォーカス
FM93AM1242ニッポン放送 月-木 18:00-20:20
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。