香港区議会選挙で民主派が圧勝~習近平主席の国賓来日は再考すべき

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(11月25日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。香港区議会選挙で民主派が圧勝したニュースについて解説した。

香港区議会選挙で民主派が圧勝~習近平主席の国賓来日は再考すべき

香港区議選、民主派躍進か 香港で行われた区議会選の開票作業=2019年11月24日夜(共同) 写真提供:共同通信社

香港区議会選挙、民主派が圧勝

政府への抗議デモが続く香港で24日、4年に1度の区議会選挙が実施され、投票率は過去最高の71.2%だった。中間集計で民主派が300議席を獲得したのに対し、親中派は40議席に留まり、デモに強硬姿勢で臨む香港政府と中国の習近平指導部に民意が明確にNOを突きつけた。

飯田)選挙前は親中派7割、民主派3割ということだったので、大きくひっくり返ったということです。

香港区議会選挙で民主派が圧勝~習近平主席の国賓来日は再考すべき

フェンスを登り香港理工大から出るデモ隊=2019年11月18日、香港(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

行政府、中国政府に対してNOだという民意を示すことができた

須田)ただ、区議会議員はほとんど決定権がなくて、町内の顔役のような役割です。ですからこれで物事が決まるとか、状況が変わることはないのでしょうけれども、民意をキチンと伝えるということはできたのではないでしょうか。いまの林鄭月娥(キャリー・ラム)香港特別行政区行政長官も含めて、行政府に対してはNOだと。そして、その裏にいる中国共産党や中国政府に対しても、NOだという民意が示されたというところも大きいだろうと思います。この選挙結果が出る直前に、まだトランプ大統領は署名していませんが、アメリカ議会で香港人権・民主主義法案の可決が行われたということが、大きく背中を押したのだろうと言えるのではないでしょうか。

飯田)特に香港中文大、理工大でのデモが激しくなって来たあたりで、デモ隊が暴力を振るっていて市民の心が離れているということを、勝手に解説する中国の専門家と称するような方がいました。けれども結局、民意はそうではなかったということです。

須田)むしろ、YouTubeなどで動画が拡散しています。大学構内で警察に対して完全に屈している、逮捕されますという姿勢を見せている学生に向けて、硬い靴で顔を思い切り踏みつける、背骨を警棒で殴るという状況も出ています。もうこれは虐殺のようになっている。それに対して市民は強い危機感を持っているし、学生に対するシンパシーを持ち続けているということではないでしょうか。今回の区議会選挙の前段で、あのような強行策を取ったということが、逆の方向に出たのではないかと思います。民意は行政庁からどんどん離れつつある。むしろ、40議席を獲ったことが不思議だと思います。

飯田)現地のメディア、或いは記者の人が伝えているネットなどを観ますと、得体の知れない投票箱が運ばれて来て、中身を調べろという話になった。周りで監視していた市民が、そんな得体の知れないものは受け取れないと揉めていました。また、投票しに行ったら「すでに午前中に君の名前で投票されています」とあったとか、選挙そのものがどうなっているのかということも報道されています。

香港区議会選挙で民主派が圧勝~習近平主席の国賓来日は再考すべき

香港理工大前の路上で、大学に突入しようとする警察車両に火炎瓶を投げる若者たち=2019年11月17日夜、香港(共同) 写真提供:共同通信社

SNSの影響力を甘く見ていた中国サイド

須田)中国国内においては、その種の民主的な選挙が行われていないではないですか。民主的な選挙をどうやったらコントロールできるのか、ノウハウがない。だからそんなあからさまなやり方を持ち出したのではないでしょうか。もう1つのミスは、そういう状況が必ずSNSや動画で拡散されてしまうということです。中国サイドは、この辺を甘く見ていますよね。

飯田)中国本土ではネットもコントロール下にありますものね。だからコントロールできるかと思いきや、そうではない。

香港区議会選挙で民主派が圧勝~習近平主席の国賓来日は再考すべき

香港理工大から脱出しようとしたデモ参加者の男性を拘束する警官隊(中国・香港)EPA=時事 2019年11月19日 写真提供:時事通信社

香港の金融センターとしての存在の危機

須田)アメリカにおける香港人権・民主主義法案が成立して、アメリカの香港に対する最恵国待遇が外されることが確実になって来ました。ブルームバーグが報道したところによると、東京都の担当者が香港の金融機関に対して、東京に戻って来ないかと働きかけているようです。東日本大震災以降、東京から避難した金融機関がいくつもあるわけですが、そういう金融機関に対して東京に戻って来ないかと言うだけではなく、拠点を香港から東京に移さないかとアプローチしているということです。これに対して、香港在住の金融機関がかなり前向きになって来ている。そうなると、香港の金融センターとしての役割も危うくなります。これを中国サイドはどう見るのか。

飯田)金融機関周りを取材しますと、いま香港では在宅勤務のような形になっているし、長期出張として東京やシンガポールなどで業務をしているところが多いそうです。その長期出張というのが1つの布石であると、かなり言われているようですね。

須田)在宅勤務ということは、店舗はクローズしています。実質的に、金融機能は麻痺状態に陥っているのが現状ではないかと思います。

飯田)これを中国はどう見るのか。習近平政権は反腐敗をやっていて、その1つのポイントが香港であるということは見抜かれている。ただここを潰してしまうと、本土の赤い官僚貴族たちに対して、広範囲に影響があります。

須田)香港には共産党幹部たちの隠し資産がありますからね。もう1点、そういう金融機関の動きを見てみると、事実上の内戦状態に陥っている。つまり戒厳令こそ宣告されていないけれども、同じ状況にあると考えられます。

飯田)後はトランプ大統領の署名を残すのみですが、仮に署名しなくても、また議会で大多数で可決すれば。

香港区議会選挙で民主派が圧勝~習近平主席の国賓来日は再考すべき

日中首脳会談 中国の習近平国家主席中国の習近平国家主席(右)と握手する安倍晋三首相=2019年6月27日午後、大阪府大阪市北区 写真提供:産経新聞社

国賓待遇での習近平国家主席の来日~このまま進めていいのか

須田)採決すれば通ってしまいますから、トランプ大統領としても署名するでしょう。そうなると、問題は日本のスタンスなのですよ。来年(2020年)、習近平国家主席が国賓待遇で来日しますが、それをこのまま容認して進めていいのかという問題。これは考え直すべきではないかと思いますけれどね。

飯田)ここへ来て、ようやく各政党が非難決議や談話を出し始めましたが、遅いですよね。

須田)遅いし、弱いですよ。各国政府、特に西側先進国はかなり強烈なメッセージを出して、中国との条約の見直し作業に入っている状況です。まさに天安門前夜になっているのは間違いない。それにも関わらず、日本だけが平時と同じような状況で中国との関係を保っているということは、国際社会のなかで日本が孤立することにもなりかねません。

飯田)いままで対話のドアはオープンだと言いながら、言いたいことは言って来た。どうしてここへ来て変わってしまったのですかね。

須田)官邸の方針が変わったということは言えると思います。これまでは少なくとも、安全保障と経済問題はバランスを取って来ました。現在の対中政策は、安全保障問題は後退して、経済一本槍です。安全保障問題に対して消極的になったという方針転換、これが果たしてよかったのだろうかということになっているのだと思います。

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