香港が崩れると中国の支配は一帯一路を通じてアジア、アフリカへ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月30日放送)に国際政治学者の細谷雄一が出演。混乱が続く香港情勢の今後、中国の影響力の浸透について解説した。
香港区議会選挙への黄之鋒氏の立候補、認められず
香港政府は10月29日、11月に実施する区議会選挙(地方議会選挙)に出馬を届け出た、2014年の民主化運動「雨傘運動」のリーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏の立候補を認めない決定をした。香港政府は「香港を中国の一部と定めた基本法に反する」と理由を述べている。
飯田)「香港の独立を支持するか」という質問には「NO」と答えていたのですが、政治的に却下されたのではないかと言われています。香港情勢をどうご覧になっていますか?
細谷)もともとイギリスと中国の間では、一国二制度ということで、あくまで香港の自治を認めることが香港返還のときの合意だったわけです。ところが、いまはイギリスと中国の国力が完全に逆転して、この問題に対してイギリスはほとんど批判をしていません。アメリカも世界中から影響力が後退しています。中東でもアメリカに代わって、トルコとロシアが影響力を拡大していますが、同じように香港や台湾を含めてアメリカの影響力が後退すれば、中国の影響力が拡大します。つまり、いままで中国の統治下にあった地域を超えて、中国の意向が反映されます。中国の意にそぐわない人に、通常の法の支配を超えた圧力がかかって来ます。
中国の支配は一帯一路を通してアジアやアフリカに広がる
細谷)今度はそれが東南アジアまで広がると思います。いま香港で起こっていることが、一帯一路で中央アジアやアフリカへ入って行く。これが世界中に広がるのを押し戻せるかどうか。中国国内で中国がどういう行動をするかということは、中国の自由なのですが、香港はグレーゾーンです。あくまでも中国国内ということになっていますが、同時に一国二制度ですので、今回の行動に対してますますデモがエスカレートするでしょうね。中国に完全に飲み込まれるかどうかの瀬戸際にいるというのが、香港の人たちの認識ではないでしょうか。
監視カメラによって行動を把握されている香港市民
飯田)いままでのデモではマスクを着けていたのですが、それすら禁止ということになってしまいました。そうでなくても、香港警察の取り締まりの仕方があまりにも無茶過ぎると。ほとんど丸腰の市民に対して、銃弾を発砲するわけですよね。どんどん香港警察も中国化しているところがあるような気がします。
細谷)今回も香港のデモで、電灯がたくさん壊されているのをご覧になったと思うのですが、あれは電灯に監視カメラが埋め込まれているのです。中国と同様に、香港でも多くの監視カメラで市民の行動が把握されています。マスクをするのは顔認証を避けるという目的もあるのですが、それができなくなって来るということは、香港の人たちが丸裸で中国の監視にさらされることになります。どこまで中国の影響力の浸透を許すのかというところで、これ以上許してしまったら自分たちの自治が失われるという、強い恐怖心を抱いていると思います。
飯田)押し戻せるかどうかはアメリカの行動にもかかっていると思いますが、制裁リストの会社のなかに「ハイクビジョン」という会社が入りましたよね。まさに顔認証をやっている会社ということになります。
統治のために発達した中国のIT技術~デジタル権威主義
細谷)例えばアリババのジャック・マーが中国の共産党員ということで、中国の多くのIT企業は我々の考えている以上に共産党政権と結びついていることが、ここ何年かで報道されていました。中国の技術がなぜここまで発展したかと言うと、国内の統治に必要なものでIT技術が発達した部分もあったのです。逆にアメリカや日本は、そこまで国民を監視する必要がないですから、そういったシステムが発展していないのかもしれません。したがって中国型の統治、デジタル権威主義と呼びますが、これが世界中に一帯一路で広がっているのです。言い換えると、個人の自由や人権を守るという、日本や西側諸国のリベラルデモクラシーが大変な危機にある。つまり後退しているということです。このことは世界のなかで大きな傾向として、これからも続いて行くだろうと思います。民主主義は後退し、権威主義が広がって行く、その1つの事例が香港だと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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