香港理工大学に警察が突入~中国が強行策に踏み切った実情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。香港デモ隊が占拠する大学へ警官隊が突入したニュースについて解説した。
香港理工大学へ警官隊が突入
17日夜~18日未明にかけてデモ隊と警官隊が激しく衝突していた香港理工大学で、デモ隊が占拠していた大学構内に警官隊が突入した。
飯田)香港メディアが報じていますが、香港の警察は突入に先立って、「火炎瓶や弓といった武器の使用を含むすべての襲撃行為をやめなければ、実弾で反撃する」と警告していました。大学は尖沙咀(チムサーチョイ)という、観光客も多い繫華街の一角にあります。
須田)実弾で反撃するという表明は、なりふり構わずというところなのでしょうけれども、そこまで追い詰められたということでもあります。中国国内と違って香港はフルオープンになっていますから、香港行政庁や中国共産党は、強行策を取ることに関して躊躇していました。外国メディアからも注目されているところで躊躇していたのですが、そうも言っていられない動きが起こったのです。香港が混乱しているということで、とうとう香港にある金融機関が一斉休業に踏み切りました。金融センターとしての香港は麻痺状態に陥っています。そして、ようやくアメリカの上院でも、香港人権・民主主義法案が通る見通しが立って、あとはトランプ大統領の署名だけになりました。中国がいちばん嫌がるこの法案の見通しが立ったので、結果的にアメリカから相当なプレッシャーがかかることも明らかになった。このまま事態を放置できないということで、強行策に踏み切ったのです。これが第1段階です。第2段階としては、人民解放軍の投入があり得るのかどうか。その予兆と思えるような、路上のがれきを撤去する人民解放軍兵士がいました。このときは武装していない状態で作業をしていましたが、いつそれが武装するのかわかりません。
崩壊した一国二制度
飯田)人民解放軍による清掃活動は「自発的に」ということですが、基本的に香港政府からの要請がなければ、人民解放軍は外へ出て活動することはできません。自主的だったら何でもいいのか、ということです。
須田)香港における憲法に基づいて、政府の要請が必要だという建前になっているのだけれど、それすらもないがしろにされている。香港の憲法である基本法を踏みにじる行為ではないかと思います。一国二制度が、これで完全に崩壊したと見ていいと思います。
飯田)大学への突入について、13日は中文大学で立てこもりがあり、最後は自主的に抗議者たちが退いたという形でしたが、今回はどこまで退けたのか。拘束者も出ているようです。そもそも大学という私有地に警官が入るということは、西側からすればそれだけでショッキングな映像です。
須田)香港は中国と違って、自由と民主主義のエリアですから、学園自治の精神を踏みにじるということで、欧米各国にとっては相当なショックでしょう。日本でもかつての60年安保、70年安保のときに、学内へ警官隊を導入するかどうかで相当な議論がありました。最終的な手段として導入を図ることになったのですが、それだけこの問題はナイーブなのです。
飯田)中国共産党の意向が表れたのが、今月(11月)頭に林鄭月娥行政長官と習近平国家主席が会って、暴動の鎮圧が第一命題だということを言い、そこからエスカレートしましたね。
厳しい欧米諸国の反応~日本はこのままでいいのか
須田)いままでは一国二制度ということを、まがりなりにも中国も意識していた。だから表面化することはなかったのだけれど、表面化させることによって中国政府のスタンスを、香港を支援する外国政府に対しても示すという意図があるのでしょう。ただ、これは諸刃の剣です。アメリカは大統領よりも議会の方が中国に対して強硬派に転じていますし、ヨーロッパの国々が続々と、中国に対して強硬な姿勢で臨むようになっています。あのドイツですら問題視しているというのが実態です。
飯田)2度の大戦やさまざまな戦争を経て、人権の大事さというものを、ヨーロッパの人たちは身に染みてわかっているわけです。そうすると、こういう映像に即座に反応しますね。
須田)中国国内においては、この種のことが起こってもSNSなどがコントロールされていますから、リアルタイムで映像が出ることはありません。香港は域外ですからすぐに出ます。そうすると、これが中国の弾圧スタイルなのだということがわかってしまいます。天安門事件も情報はコントロールできたのですが、今回ばかりは世界がどう見るのか。日本は未だにこの問題に対して、きちんと声明を発表していません。来年(2020年)の習近平国家主席の国賓での来日を控えているからか、日本は諸外国に比べて遅れています。
飯田)天安門事件があった後、いまの上皇陛下が訪中したことを突破口に、中国は国際社会へ復帰しました。今回の国賓での招待も、それと同じことをやってしまう可能性がありますよね。
須田)その二の舞になりかねません。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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