ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月20日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で陰性と確認された乗客の下船が始まったニュースについて解説した。
新型肺炎の感染が確認されたクルーズ船の乗客、443人が下船
新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、ウイルス検査で陰性と確認された乗客の下船が19日から始まった。厚生労働省によると、19日の1日で443人が船を下りたということである。
飯田)20日も500人前後が降り、下船は21日までかかるということですが、19日に下船した乗客に、ニッポン放送の宮崎裕子記者がお話を伺っております。
宮崎)乗客の方ですか?
乗客)はい、そうです。
宮崎)体調はいかがでしょうか?
乗客)はい、大丈夫ですよ。
宮崎)これからどういう形で帰られるのでしょうか?
乗客)JRで帰ります。
宮崎)この2週間の船内での生活を、ちょっと振り返ってみていただけないでしょうか?
乗客)快適ですよ。みなさん我慢しながら。
飯田)船のなかで暮らしていらっしゃった方を、出て来たところを捕まえて、少しお話を伺うという感じではありましたけれども。
乗客にとって重要なのは情報~曖昧であった政府の隔離期間
鈴木)貴重な声ですね。私はダイヤモンド・プリンセス号が接岸した直後の、約2週間前に乗客の方に電話取材をしました。いま考えると本質的なことをおっしゃっていたと思うのですが、重要なのは情報です。あのときは「接岸して2日目には下りられる」という話だった。それが「いや、下りられない」となり、どうなるのかわからない。結局、「潜伏期間と言われる2週間はいてもらいます」となった。留め置かれるなかでも、一部では「検査が始まって感染者が出た」などと言っている。あのときもそういう話になっていましたけれども、もともと潜伏期間が2週間と言われているのだから、日本に接岸、もしくは入って来た瞬間から「潜伏期間である2週間は様子を見ますよ」と。これは最初の大方針、大決定としてあるべきだった。そのことを、その方も「最初に言ってくれ」と言っていたのです。
飯田)そうすれば心構えもあった。
鈴木)情報を公開するとはそういうことです。最初に最悪の状況を決めておく。危機管理というのは、最初に最悪の状態で入って行く。「だから2週間は絶対に降りることができませんよ」と。そこから、10日が潜伏期間となれば「10日で出られます」というように、だんだん緩くなって行くのが正しいやり方です。それが「2日、いやいや3日留め置きます、いや5日です、10日です、いややっぱり2週間です」となってしまった。そのときも「精神的に参ります」とおっしゃっていたけれど、そういうことだと思います。クルーズ船について、日本政府はよくやっているとは思うのだけれど、反省点も多い。第1便のチャーター機が帰って来たときも、2週間留め置かないで…。
飯田)最初はそのまま帰すという選択肢も検討されていました。
鈴木)おかしいと思いました。諸外国は「自分の国に着いてから2週間は隔離します」と伝えています。
飯田)経過観察をすると。
トップである総理が覚悟をもって口に出すべきではなかったか
鈴木)これが普通の考え方ですよね。官僚の方を取材すると、日本の場合は法律や人権の問題があって、限界なのだということです。各自治体、東京などが行う記者会見で「検査した後になぜ仕事に行くなと言わなかったのですか?」と記者から質問されて、「法律的にそこまでは言えないのです」と答えている場面が出て来ますよね。でも、危機管理はそれではいけない。法律に縛られすぎてはいけない。法律や平等ということに縛られるから、官僚や役人には限界があるのです。これを「やれ」と決断できるのは、政治任用のトップなのです。自治体でいえば知事や市長、政府で言えば総理です。トラブルになるのなら、自分の首をかけてでも「いまはこうやれ」という決断ができるかどうか、これが試される。ある官僚が言っていましたが、安倍総理は今回、チャーター便にしても何にしても「やれ」という指示は早かった。でも指示は出すけれど、そこから先は官僚がやるのです。そうすると限界が出て来る。だから中身まで、例えば「2週間は留め置け」と総理が決めて、覚悟を持って口を出せるのかどうか。そういうところも問われているのだと思います。各自治体の首長も、今回のダイヤモンド・プリンセス号は反省すべき教訓も残しているのです。これは次に生かすしかないと思いますけれどね。
省庁横断したチームで対応するべき
飯田)基本的に厚生労働省が中心となって、防衛省や自衛隊も加わってチームになっていますが、危機管理の枠組みにはNSC(国家安全保障会議)の枠組みもあります。NSCは省庁横断的ではないですか。それは使えなかったのかなと思うのですが。
鈴木)おっしゃる通りです。今回のトップは厚労省ではなく、総理なのです。そして、「対策本部」などという生ぬるいものではありません。これは有事で、戦争と同じです。国家的ないまある危機管理のものを使うか、もしくは新たに立ち上げるべきです。健康、命の問題だけではなく、これからは経済やオリンピック、ありとあらゆるものに大きな影響が出て来ます。そういう意味では、これは国家の危機なのです。省庁横断で一括しなくてはなりません。そういう組織をつくっていいと思います。総理が旗を振れないのであれば、その下に人材がいるではないですか。政治任用できる政治家など、そういう人をトップにしたもう1つの政府をつくるくらいの対応をしないと、もう追いつかなくなると思います。
飯田)諸外国の場合は軍隊が出るような、戒厳的なところも選択肢としてはある。
鈴木)隔離するときに基地を使ったりね。
飯田)アメリカなどはそれをやっていますね。
鈴木)人の出入りも制限されているし、危機管理されているわけですからね。日本ではどうなのでしょう、自衛隊の基地が使えますか? 例えばプリンセス号も横浜港に着いたけれど、軍港があれば。
飯田)手前の横須賀。
鈴木)そこを日本も考えなくてはいけない。
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