新型コロナウイルス~これほど間違っている日本の対応
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月18日放送)にジャーナリストの有本香が出演。新型コロナウイルスへのこれまでの日本の対応について解説した。
厚生労働省が新型コロナウイルスの相談目安を公表
加藤厚生労働大臣)風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方。強いだるさや息苦しさ、呼吸困難がある方はセンターにご相談ください。
新型コロナウイルスによる肺炎をめぐって17日、加藤厚生労働大臣が会見を開き、相談の目安を公表した。
飯田)加藤大臣が言っていたのは一般の方の場合です。高齢者や糖尿病、心不全のある方、透析を行っている方、免疫抑制剤や抗がん剤を使っている方などは、風邪の症状が出たり、発熱が2日程度続いた場合には相談してくださいということです。しかし、4日待てるかというところですよね。
世界で日本だけが抜け穴になっている
有本)そうなのです。朝刊各紙、このことが一面ですよね。目安が必要だというのはわかります。ここに至ってみんながパニックを起こし、医療機関に押し寄せるようなことが起きてはいけないという配慮があることも、十分理解します。しかし、今回の新型コロナウイルスに関する一連の政府の対応、厚生労働省が中心となっての対応ですが、私は渡航制限を積極的にかけるべきではないかと言って来ました。WHOが出すいろいろなステイトメントとは関係なく、アメリカは先月(1月)末に、大胆に中国本土との人の行き来を止めました。そして、アメリカに追随する国がたくさん出ました。いまは日本だけがスピンホールになっていると言われています。
飯田)抜け穴ですね。
有本)現在、中国側の主要都市のほとんどが外出禁止のような状態になっているので、たまたま人が出て来ません。しかし、事情がある人や当局に近い人は、普通に飛行機に乗れば日本に入国することができます。これが他の国にとっては、「日本は危ない国だ」ということなのです。つまり、日本国内の感染の拡がり状況だけではないのです。感染症は拡がることが問題なので隔離してしまおう、距離を置こうということがいちばんの策であるはずですが、日本だけがそれを主体的に行っていません。特定の人を排除しようということではなく、拡げないために行うべきことです。問題なのは、例えば日本に中国本土から人が来て、日本で2週間過ごしたと言えば他の国に行けてしまいます。
飯田)他の国々でも、中国に滞在していた人は14日間の隔離をするということですが、直近14日間を中国でない場所にいた人は、その網には引っかからない。
日本は中国と同じ「危険な国」と見られている
有本)14日間、何も症状が出なかったからいいのかというと、必ずしもいいとはこの感染症の場合には言い切れません。日本が感染の広がりやすい地域でなければ、そこにいたということでもいいのです。しかし日本には、「日本で2週間症状が出ませんでした」という特定の個人以外にも、どんどんと入って来ています。他の国からすると「ちょっと待てよ」ということになる。私の身内も先週末に、予定を早めてアメリカ出張に行きました。なぜなら予定通りに待っていると、アメリカの場合は大統領令1つで日本人の入国に条件を付けられたり、制限をかけられたりしかねません。ですので、日本人の生活には相当影響が出ています。政府が他の国々と同じ対応を取らなかったが故に、「中国と一蓮托生の国」と見られてしまっているのです。
飯田)この感染症に置いては、同じような国だと。
アナウンスの仕方が悪かった~最初に強いリスクを提示するべきであった
有本)これをもう1度、検証する必要があると思います。それから、一連の事柄の意思決定が1つ1つ遅いと言われています。それだけではなく本題に話を戻すと、アナウンスの仕方がまずいのです。
飯田)アナウンスの仕方。
有本)例えば今回の目安も、いま出すべきものなのか。常にことが起きてから会議を行って、それからことが出て来る。大胆に渡航制限をかけなかったにも関わらず、ジワジワといろいろなものに制限をかけています。さらに日本国民に対しても制限をかけます。
飯田)そうですね。中国への渡航に関しても、スポット情報という形で「不要不急の渡航はやめましょう」とか、「再検討しましょう」というように。
有本)こういうリスク場面でのアナウンスとしては、非常にまずいやり方です。私のSNSにも書いたのですが、お化け屋敷はなぜ怖いのかという話なのです。お化け屋敷は、最初からいちばん怖いものは出て来ません。真っ暗なところを歩いて行くと、いろいろなものが出て来て、だんだんと恐怖がせり上がる。これがいちばんまずいのです。最初から「この感染症は恐れるに足りません。みなさん、パニックを起こさないでください」ということを強く言い過ぎたのです。日本はそもそも、あまりパニックを起こさない国民性です。ですから「リスクというものをある程度高めに見なくてはいけない。ただちに事態が深刻になるわけではないが、最悪はこういったこともあり得ます。だから国としては思い切った策を取ります」ということを最初に言って、そこから下げる分には大丈夫なのです。
飯田)最初にまず壁をぐっと上げる。
有本)そうではなく、最初にリスクを低く見せておいて、ジワジワ上げるというのはいちばんダメです。
飯田)そうですよね。戦力の逐次投入につながるので、いちばんいけないパターンですよね。
厚生労働省ではなく国家安全保障会議(NSC)が対応すべき
有本)戦力の逐次投入で昔は負けているので、いちばん行ってはいけません。しかし、その種の戦略を厚生労働省が考えられるわけもありません。渡航制限においても、どう防疫をするのか、国防としてどう考えるのかということをプロが言っているわけではありません。そういうことについて、総合的に高い見地から判断するということが、早い段階で必要だったのではないでしょうか。私は今後この種のことが起きたとき、感染症の拡がりがあるかも知れない場合には、国家安全保障会議が対応すべきではないかと思います。
飯田)NSCですね。確かにもともとの機能としてありますよね。外交ばかり行っていますが。
有本)外交は基本的に外務省のマターですが、国家安全保障会議のトップは割合、外交的に動き回っています。そうではなく、こういうことこそ、そこに話を一元化させるべきだったのではないかなと思いました。
飯田)国家安全保障という、本来の目的ですね。
有本)軍事のことだけではなく、防疫というのは国民の命に直結する安全保障そのものです。なぜ、あそこを機能させなかったのか、非常に不思議です。
飯田)そうですね。今回は感染症の対策ということですが、これが別の転び方をすれば、発端がテロであるという可能性もあります。そのときに日本政府がどのような対応をするのか、世界は見ていますよね。
有本)そういう点でも、実地で機能させる場面をつくり、さらに高いリスクに対しても対応できるようなトレーニングをすべきだったと思います。
これほど大きな感染症の蔓延という経験が日本にはなかった
飯田)NSCには官僚トップがいますが、最終的には官邸の話なので安倍総理ということになります。危機管理は得意だと言われていた安倍政権ですが、今回は任せてしまったのでしょうか?
有本)いくつか理由があると私も聞きました。1つは危機管理と言うけれども、いままでとはまったく筋が異なります。いままで政権のなかで言われていた危機管理は、属人的なことや政権自体の危機管理、天然の災害に対してどう対応するかということです。これは過去の蓄積で、かなりシステムができています。しかし今回は、世界的なパンデミックになるかもしれないという、100年に1度くらいの感染症の蔓延です。これは経験がありません。SARSや新型インフルエンザのときにも、日本はあまり被害を受けていません。SARSは特にそうです。新型インフルエンザのときは、舛添さんが厚生労働大臣で早めに動きました。また新型インフルエンザについては、実はあそこまで大きな警告を鳴らす必要はなかったと、WHOも反省に至っています。ですので、あまり経験値が積み重ねられていません。そこが弱みになってしまいましたね。
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