ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月25日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。東京オリンピックの1年間延期について解説した。
東京オリンピック延期~トランプ大統領と連携へ
24日夜、安倍総理大臣が国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話で協議し、東京オリンピックを中止せず、2021年夏までに開催することで合意した。これを受けて安倍総理大臣とアメリカのトランプ大統領が電話で会談し、完全な形で開催するため緊密に連携することで一致した。
森田)安倍総理とトランプ大統領は25日に電話会談を行いまして、トランプ大統領はオリンピックの延期開催について「大変賢明で素晴らしい決定だ。総理の立場を100%支持する」と評価したとのことです。安倍総理はIOCのバッハ会長と24日夜に電話で協議し、東京オリンピックは中止せず、遅くとも2021年夏までに開催することで合意したとのことですが、これについてトランプ大統領に説明を行ったということです。電話会談について、菅官房長官が記者会見を行いました。
菅官房長官)トランプ大統領は「延期は大変賢明で、素晴らしい決定だ」と繰り返し述べつつ、総理の立場に支持を表明され、両首脳は人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、東京大会を完全な形で開催するため緊密に連携して行くことを確認しました。また両首脳は新型コロナウイルス感染症に関し、治療薬開発などを含め日米協力で情報共有し、引き続き連携して行くことで一致しました。
森田)トランプ大統領自身も12日、東京オリンピックは1年延期すべきとの考えを表明していました。IOCのバッハ会長は、「WHO(世界保健機関)が23日にパンデミック(世界的大流行)が加速していると発表したことが、史上初のオリンピックの延期判断に繋がった」と話しています。
河合)トランプ大統領がいちばん最初に「1年延期」という話に言及したわけですよね。ここまでアメリカ政府を含め、日本政府、IOC、組織委員会、東京都が水面下でずっと調整をして来て、このタイミングで「1年延期」を発表したのだと思います。いろいろな調整のなかで、1年先であれば開催できるという見込みが立っての延期表明なのだと思います。
追加費用が数千億円規模~会場などの確保という壁
森田)新たな開催の日程については、4月中旬に予定している大会組織委員会とIOC調整委員会との会合で協議するということを、バッハ会長は示しています。大会組織委員会は計画の見直し作業に着手するということですが、パラリンピックも国際パラリンピック委員会がオリンピックと連携して、延期するということで合意しています。複数の大会関係者によりますと、大会の会場を数ヵ月確保する交渉を含めて、これからいつできるのか、どのようにやって行くのかという実現性を探るということです。関係者の話では、追加費用が数千億円規模になるということですね。
河合)いまのままだと東京都が第一義的に負担しなければならないでしょうし、東京都だけで賄い切れないなら日本政府が(不足分を)負担という話になりそうですよね。細かい部分の補償額を詰めなければなりません。会場が既に次の予定で埋まってしまっているところに関しては、(延期したオリンピック・パラリンピックのためにキャンセルして)空けてもらうという話になります。どれだけ追加のお金が膨らんで行くのかということにもなるので、ここからが大変です。
森田)1年後に既に予約が入っている施設もあるようですので、場合によってはそういった会場も1年ずっと借り続けるのか、それとも違う会場にするのかということも考えなければいけません。また関係者の宿泊先としてのホテルや、輸送用の大型バスも抑えていたので、こういったものもキャンセルしなくてはいけません。選手村に関しては、分譲マンションにする予定でした。既に販売が始まっているので、ここをどうするのか。
河合)スポンサー契約も確か12月までとなっていたはずなので、1年延びたらスポンサー契約はどうなるのかということもあります。話は変わりますが、この1年延期というニュースを聞いたとき、安倍首相は「勝負に出たな」ということを最初に思いました。果たして1年先では、新型コロナウイルスの感染が世界規模で収まっているのかということを考えなければいけないわけです。仮に日本国内や、いま大変な状況にあるヨーロッパやアメリカなどは、この1年間で感染拡大が収束して行くかもしれませんが、これからアフリカ諸国など、まだ拡がっていないエリアに感染が及んだとき、実際にそれぞれの地区の予選大会を含めてやれるのかという問題が出て来ます。1年後も、また開催できないという状況が続いたならば、再延期はかなり難しいだろうと思います。今回「1年延期」としたのは、(最悪の場合には)「中止」という含みも残っている話だということは、注目しておかなければいけません。
森田)1年後、世界的にどうなっているのか。確かにアフリカのサハラ砂漠より南の国では、感染が拡がって来ている状況らしいです。サハラ以南のアフリカ諸国は医療体制が脆弱ですから、ここで拡がってしまうと抑えようがなくなってしまいます。
河合)治療薬もワクチンも、1年以内にできる保証はまったくありませんからね。
新たな開催時期や代表選手は~マラソン代表は再選考せず
森田)イギリスのメディアでは新しい日程について、「春にできるのではないか」と複数のIOC委員が言っています。「桜の季節のオリンピック」などと言っているようですが、他のメディアによるとアメリカのNBAやヨーロッパのサッカーが春はシーズン中なので、どうなのだと。
河合)来年(2021年)の夏に予定されている陸上の世界選手権と水泳の世界選手権は、大会の時期をずらしても構わないと言っているようですね。
森田)夏開催をずらしても構わないと言っているそうです。
河合)常識的に考えると、オリンピック・パラリンピックは来年の夏の開催だと思いますが、そこまでに新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が収まるのかどうかという方が、重要な話ですよね。
森田)先ほど入った情報だと、日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、既にマラソンで男女3人ずつのオリンピック代表メンバーが決まっていますが、東京オリンピックマラソン代表について「再選考はしない」という方針を明らかにしたということです。既に決まっている6人は、来年(2021年)になっても代表として出てもらうと。代表選考をやり直すとしても軋轢を生みますからね。
河合)ただ、競技によっては選び直しの声が出て来ている競技団体もありますから、アスリートのみなさんは気が気ではないと思います。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。