政府が休業補償や一律給付金を出し渋る理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月13日放送)にアセットマネジメントOneエコノミストの村上尚己が出演。新型コロナウイルス対策としての国による休業補償について解説した。
国による休業補償や損失補填を改めて否定
11日、西村経済再生担当大臣とテレビ電話で会談した都道府県の知事らが、休業要請に応じた事業者に国が補償するよう求めたが、西村大臣は「国による休業損失の穴埋めはない」と重ねて否定した。一方、国が自治体向けに創設する1兆円の臨時交付金の使い道について、東京都が休業要請に応じた事業者向けに支払う協力金のような活用ができるかについては「考えたい」と述べた。
飯田)東京都は休業要請の具体的な業種も発表しまして、休業要請に協力した事業者には、協力金という形でお金を出すことを決めました。経済対策はいろいろなものが出て来ていますが、ご覧になっていかがですか?
村上)108兆円という総額は大きいのですが、今回の緊急経済対策では追加的に国債を発行するということで、増える歳出は17兆円くらいです。17兆円という規模は少ないのではないか、というのが第一印象です。休業補償まで賄えるのかどうかわかりません。
どうして国は休業補償を出し渋るのか~この先を見据えて温存しているのか
飯田)東京都は協力金で1店舗あたり50万円、複数店舗を持つ場合は100万円で、総額は1000億円規模になるということですが、どうして国はこんなにも渋るのでしょうか?
村上)いま起きていることは、ほとんど災害のようなものだと思うのです。災害のようなことが起きて経済活動が止まっている状態ですから、こういう状況だと小出しにお金を給付するべきではなく、もっと大規模にやらなければいけないのだと思います。なぜ絞るのかというと、政治的な話になるのですが、官僚機構の方で案をつくるときはお金をやや絞る形で、慎重につくるということがあります。彼らは彼らで仕事をしているのでしょうが、現在起きていることは非常事態なので、それに対してお金が出せないという状況ではないと思うのです。ある程度のルールは必要ですが、GDP対比で見て500兆円の5%~10%、25兆円~50兆円くらいの大規模なお金を用意しなければいけない局面だと思います。結局はいずれ、それをやらなければならないことになると思うのです。
飯田)この先のことも考えて、いまは温存しているのでしょうか?
村上)それもあるかも知れません。想定しているとは思います。他の国を見ると、米国がいちばん先を行っていて2兆ドルということですが、そのなかの半分くらいは家計に対して、直接給付するというものです。
飯田)小切手で出すと。
村上)当面の生活資金もそうだし、失業保険を大規模に上乗せします。あとは中小企業にお金を貸すのですが、雇用を維持するためであれば返さなくてもいいという前提で貸し出すという枠組みも、同時に発表しています。その規模がGDP比の4%~5%くらいで、日本に当てはめると20兆円~25兆円くらいです。コロナショックで生活できなくなる人も増えるので、いち早く手を打ったのが米国です。それに対して、日本政府の対応は遅いという印象しかないですね。
飯田)「貯金に回ってしまう」などといろいろな理屈をつけて、一律給付を嫌がるだけ嫌がっているように見えてしまいますね。
アメリカのように所得制限をして一律給付するべき
村上)普通の状況であれば、お金をばら撒き過ぎるのはよくないと思うのです。しかし、これほど広範囲に誰の目から見ても明らかなくらい経済活動が止まっていて、この1ヵ月同じ状況が続くのならば店を畳まなければいけない、給料を貰えるかわからないような人が増えているわけです。そういう状況で、30万円の給付金が緊急経済対策の予算措置として出て、これが総額4兆円です。4兆円はGDPの1%強なので、アメリカと比べると規模が小さいですし、対象は5000万世帯中の1000万世帯を想定しているということです。また手続きも複雑で、役所へ申請しなければいけないということもあり、下りるにも時間がかかるのです。諸々を考えると、緊急事態宣言が出る前から経済は自粛で酷いことになっているのに、間に合うのかどうかというところになっています。こういう状況ではあまり複雑な仕組みはつくらずに、とりあえず一律である程度のお金を給付する。そして、あげなくていい人については後で徴収すればいいだけの話だと思います。なぜそれをやらないのか、不思議で仕方がありません。
飯田)GDPの5%くらいというと、だいたい25~26兆円だということですが、1人当たり20万円~30万円を給付すれば、だいたいその金額になるということですね。
村上)1人当たりにすると子どものこともありますし、世帯で見た方がいいですね。
飯田)だいたい5000万世帯と考えると。
村上)アメリカでも実は年収800万円くらいの所得制限で切っているので、お金持ちにあげる必要はないというのは、その通りだと思います。予算措置としては確定申告のときに戻すことができるので、アメリカでは小切手を送付して簡単にできる手段があります。日本も工夫して、広範囲の方にとりあえず1~2ヵ月は困らないくらいのお金を給付することはできると思うのです。
飯田)アメリカでは社会保障番号がみんなに振られていて、日本はそういう把握ができていないという、もともとの基礎データの差があるのでしょうか?
村上)それは言い訳だという気がします。マスクは全世帯に配れるわけですから、給付ができないというのは意味がわかりません。単にそれをやりたくないのか、慎重にまだそこまでする必要はないと思っているのか。そういう判断なのではないでしょうか。
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