緊急事態宣言解除後~世の中の変化を慎重に見極めるべき

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月22日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。関西3府県の緊急事態宣言解除のニュースについて解説した。

緊急事態宣言解除後~世の中の変化を慎重に見極めるべき

2020年5月21日、総理大臣官邸で会見する安倍総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/21bura.html)

緊急事態宣言~京都・大阪・兵庫の関西3府県は解除

安倍総理大臣)感染状況、そして医療提供体制などについて、専門家の皆様にご評価をいただいた結果、関西の大阪府、京都府、そして兵庫県について、緊急事態宣言を解除することといたしました。

 

政府は21日、新型コロナウイルス感染症対策本部を総理官邸で開き、流行が落ち着いたと判断した京都・大阪・兵庫の関西3府県で緊急事態宣言を解除した。一方、埼玉・千葉・東京・神奈川の首都圏4都県と北海道では宣言を継続する。ただ、安倍総理は25日にも感染状況などを改めて評価し、可能であれば31日の期限を待たず、宣言を全面解除する方針も明らかにしている。

飯田)総理官邸で、記者のインタビューに答えての発言です。

緊急事態宣言解除後~世の中の変化を慎重に見極めるべき

【新型コロナウイルス】営業を再開した店舗も目立つ千日前商店街=2020年5月17日午前、大阪市中央区 写真提供:産経新聞社

日本は世界的に見るとうまく対処している

宮家)とても難しい判断だと思います。私は経済の専門ではありませんが、経済界からすれば、「やっとやってくれたか」というところでしょう。ビジネスとしてはもう持たないから、早く解除してくれという気持ちはあるに決まっています。一方、医療関係の方は、第2波が来るのではないかと心配されています。これから暖かくなるので大丈夫だという見方もありますが、これにはまったく根拠がありません。医療崩壊が避けられているから、ある程度の余裕があるかも知れないけれど、やはりこれは難しい判断です。批判は常にあるわけですが、アメリカと比べると、日本はうまく行っている方です。アメリカは連邦政府内が割れている。大統領が経済活動再開に前のめりになっていて、政府のなかの保健関係者のことを批判している。それでいて大統領は、マスクもせずにミシガンのフォード・モーターの工場を視察したりしています。アメリカは中央政府に相当の権限がある一方、州知事の権限も強いですから、日本と違って50州はバラバラなのです。他の国は中央政府が整理をしてくれるのに、アメリカではバラバラだという議論もある。それと比較すれば、日本はうまく落ち着いている方だと思います。宣言解除は難しい判断ですが、現時点ではこれが妥当なところかなという気がします。

飯田)結局はワクチンや特効薬ができないと、最終的には付き合って行くしかない状態が続くのですよね。

緊急事態宣言解除後~世の中の変化を慎重に見極めるべき

記者会見で新型コロナウイルスに対するワクチンの共同開発に関して説明する大阪大学の森下竜一教授=2020年3月5日、東京都千代田区 写真提供:時事通信社

新型コロナウイルスによって世の中は大きく変化する

宮家)最近、面白い記事を読んだのですが、仮にワクチンができたとしても、誰がつくるかでまるで結果が違います。日本がつくれば、それは真面目にやると思いますが、仮にそうでない国が独占的にワクチンをつくった場合は、必ずそれを政治的に利用するようになります。いま本当にまずワクチンが必要なのは、医療の最前線で働いているお医者さんや、看護師さんなどの関係者です。更に先進国よりも、これからは途上国の方が、感染拡大という観点からすると重要になります。しかし、いったい誰がどこに、どのくらいの量のワクチンを回すのか。仮にワクチンができても、完全に終息へ向かう保証はないのだという記事を読んで、「なるほど」と思いました。ですから、これはまだまだ長く続く問題で、あまり一喜一憂せずにいるべきでしょう。私は、宣言が解除されたとしても、あまり出歩くつもりはありません。若い人とは違うから、慎重に行こうと思っています。

飯田)コロナと生活するという新常態に変わって行く可能性もあります。

宮家)相当ものごとは変わりますよね。でも、コロナウイルスがものごとを変えるのではないのです。疫病は人間が築き上げたものをただ壊すだけです。疫病で何が起きるかというと、いままで起きていた方向性が加速され、促進され、場合によっては劇症化、悪化するということだと思います。その意味では、時間をかけて見る方がいいですが、世の中が大きく変わって行くことだけは間違いありません。

緊急事態宣言解除後~世の中の変化を慎重に見極めるべき

中国の習近平国家主席(左)とトランプ米大統領=2020年5月14日 写真提供:時事通信

ワクチン開発によって加速する米中対立

飯田)宮家さんはコロナ以前から、外交、安全保障の観点で、米中の対立は1930年代に近づいているとおっしゃっていました。これもそれによって加速、あるいは深くなるということでしょうか?

宮家)そうなると思います。グローバル化に対して、経済的なことはともかくとして、政治的には反対する方向へものごとが動いて行くのは間違いありません。米中の対立も前からあることなので、こういう形で新型コロナが中国から出て来て、そのワクチンがどうなるのかということになると、当然、米中の覇権争いも激化して行くと考えなければならないと思います。

飯田)ワクチンの開発も、米中の覇権争いのツールになるということですか?

宮家)既になっていますよ。報道では、中国はワクチンの情報を盗ろうとして、ハッキングをやっているという話があります。米中ともお互いにやっていると思いますが、競争は水面下で激化しています。

飯田)日本もワクチン開発の技術や情報があるということは、両方から狙われる可能性があるということですね。

宮家)当然狙われていますよ。保秘だけはきちんとしなければいけないと思います。情報が抜かれてしまっては意味がありませんからね。

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