ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月8日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」の特例承認について解説した。
コロナ治療薬の「レムデシビル」国が初めての承認
厚生労働省は7日、新型コロナウイルス感染症の国内初の治療薬として、アメリカの製薬会社が開発した「レムデシビル」を特例承認した。アメリカで5月1日に緊急使用が許可されたため、海外での承認などを条件に、国内審査の手続きを簡略化できる特例制度を適用。申請の3日後という異例のスピード承認となっている。
飯田)「レムデシビル」は副作用が指摘されている他、治療効果の評価が定まっておらず、投与には細心の注意が必要だということも言われています。早かったですね。
評価に値する素早い承認
宮家)普通の人の感覚からすると、「やればできるではないか」ということでしょう。「いままでがおかしいのではないか」と思う人もいると思います。確かに今回アメリカは早かった。4月末にファウチ氏(米国立アレルギー・感染症研究所所長)が標準的な治療薬になる可能性があると言い出して、瞬く間にアメリカで承認されました。しかし、問題は安全性とのバランスはどうなのかということです。いままでは、日本は承認に時間がかかり過ぎると批判されて来ました。責任を回避するためとは思わないけれど、日本は親方日の丸ですが、その代わりお上が責任を負わなければいけないのです。ある薬を承認するのであれば、きちんと安全なのだろうなと。安全と薬の効果、両方をおさえるのはなかなか難しいのだけれど、200%の安全があるのかと言われると、それは難しいところです。今回も辛い決断だったと思いますが、こういう形で症状がよくなる薬を早く認めることによって、人々の間で「何とかなる」という気持ちが出て来ることも大事なので、よくやったなというのが率直な印象です。
飯田)アメリカは自由診療の部分が大きいです。自分で保険に入って、治療方法も自分で選ぶ。日本の場合は基本的に国民皆保険だから、承認するかしないかは財政面も含めて、厚生労働省にプレッシャーがかかるわけですね。
宮家)批判するのは簡単ですが、決めるのは相当の勇気がいる重要な判断です。今回は珍しく早くやってくれました。
飯田)これはアメリカで承認された薬ですが、一方で、日本のインフルエンザ治療薬「アビガン」がずいぶん前から取り沙汰されています。これも5月中には承認したいということです。
治療薬の開発はポストコロナの世界各国の位置づけにおいても重要
宮家)日本が世界に貢献できることの1つでもありますから、できるだけ早くやれたらいいと思います。各国には「レムデシビル」も無償で提供されるのですよね。それは外交手段の1つにもなります。新型コロナウイルスの特効薬やワクチンを誰が開発するのかは、外交的にも極めて重要な意味を持ちますので、日本も頑張って欲しいと思います。
飯田)その部分が、ポストコロナの世界を誰が引っ張って行くのかにもつながるという指摘があります。
宮家)効果があって副作用がない、万能に近いワクチンがつくれたら、その国の立場は圧倒的に強くなります。だからアメリカも欧州諸国も一生懸命に先手を打とうとしており、当然中国も同じようなことをやろうとしています。いい方向への競争で薬ができればいいのですが、実際にはそんな綺麗事ばかりではないかも知れません。
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