ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!激論 Rock & Go!」(4月16日放送)に日本感染症学会の専門医で東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授が出演。新型コロナウイルス感染症の特徴について解説した。
普通の肺炎との違いとは?
辛坊)日本では年間100万人以上のお年寄りが亡くなっていて、そのうちの1割くらいは肺炎です。ということは毎年10万人くらいとすると、1日当たりでは300人くらいの人が新型コロナに関係のない肺炎で亡くなっているということですよね。日本でいうとこの新型コロナウイルスが蔓延する前は「細菌感染による肺炎球菌の肺炎にお年寄りは気をつけてください、ワクチンを打ってくださいね」というキャンペーンが行われていました。そういうお年寄りのかかる典型的な肺炎球菌による肺炎と、今回のコロナの肺炎とでは違うのでしょうか?
寺嶋)どちらも肺炎ですが、肺炎球菌による肺炎も重症化すると命に係わりますし、ご高齢の方が亡くなる死因としては高齢になるほど肺炎が多くの割合を占めます。感覚としてはウイルスによる肺炎、風邪を起こす多くの要因はウイルスですが、いままでのコロナウイルス、従来のものは単に“風邪症状”に収まっていました。ですが、(今回の)ウイルスが肺炎を起こす、重症の肺炎で命に係わるというのは感覚が違う気がします。
辛坊)ものすごく初歩的な質問なのですが、肺炎は肺がどのような状態になるのですか?
寺嶋)肺というのは吸った空気が入って来て、酸素を取り入れてできた二酸化炭素を吐き出します。気管というのは木の幹のようなもので、気管支が枝、肺胞が葉のような形で、そこで酸素を取り入れて二酸化炭素を吐き出す空気の入った小さな袋なのです。肺炎になるとその肺胞が水浸しになるような状態なので、そこで酸素のやり取りができなくなります。
辛坊)水浸しというのは文字通り体液が肺胞のなかに出てきてしまうということですか?
寺嶋)そうです。
辛坊)ということは、水で溺れたような状態になる?
寺嶋)そうです。ですから、重症化すると陸にいても溺れたような感じになりますね。
辛坊)それはレントゲンを取ったらわかりますか?
寺嶋)わかります。レントゲンでは空気が黒く写って、骨や水分は白く写りますから、もともと黒かったところが白くなるのでわかります。
辛坊)今回の新型コロナウイルスの肺炎、肺炎球菌とそれ以外の肺炎ではレントゲンで見て違いがわかりますか?
寺嶋)わかります。というのは、肺炎球菌や従来見慣れた肺炎というのはどちらかと言うとべったりしたというか、雪で言うと牡丹雪のような感じで白黒はっきりわかりやすいのですが、今回のウイルス性肺炎が薄っすらとしていて、よく我々は曇りガラス様と表現します。CTスキャンという専門の精密検査では違いがわかりやすくて、一般の健康診断でやるようなレントゲンだと本当に肺炎があるのか見つけにくいところはあります。
辛坊)寺嶋さんくらいの専門家中の専門家であれば別ですが、町医者でレントゲンを撮って普通の内科医が見てわかるものですか?
寺嶋)難しいです。町の先生が見ても難しいですし、我々が見ても難しいです。
辛坊)CTスキャンまでいくとだいたいわかる感じですね。
寺嶋)CTスキャンまでいくとわかります。
隠れた陽性の人がいれば一定の割合で出るはずの重症者が出ていない
辛坊)ヨーロッパのように実は爆発的に感染が広がっているのだけれど、PCR検査をしていないから見つかっていないだけという説が一部にあります。実際、お医者さんの感覚からするとどうですか?
寺嶋)爆発的ではないと思いますが、いま日本では1万人が診断されていますが、もしかするとその数倍か10倍くらいは合計するといるのかもしれません。
辛坊)私の知り合いに愛知県の大きな病院へ勤めている人がいるのですが、その人に「最近若い人が「味がおかしい」「味覚、嗅覚障害だ」と言って続々いらっしゃって、PCR検査をしてくれと言うから検査するけれど、実はあまり陽性とは出てこないのですよ」という話を聞いたのですが、どうなのでしょうか。
寺嶋)もちろん芸能人の方もそういう症状で陽性だった人がいますが、もともとアレルギー性鼻炎などでも味覚や嗅覚が落ちることはあります。隠れた陽性の人がもっと爆発的にいるとすると、そのなかでは一定の割合で重症者がいますし、一定の割合で集団に体調の悪い人が出てきてもいいと思いますが、あまりそういう現象もないので爆発的に水面下でいるのに検査しないからわからないだけだということは、いまの日本ではないと思います。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)