ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月28日放送)にジャーナリストの有本香が出演。自民党新型コロナ対策本部顧問の武見敬三参議院議員を電話ゲストに招き、新型コロナウイルス治療薬開発の現状について訊いた。
新型コロナの治療薬候補「レムデシビル」5月にも承認へ
安倍総理大臣は27日の衆参両院の本会議のなかで、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「レムデシビル」について「まもなく薬事承認が可能となる」と明らかにした。
飯田)この「レムデシビル」はエボラ出血熱の治療薬として、アメリカの製薬会社「ギリアド・サイエンシズ」というところが開発したものだそうです。いろいろな薬が候補として出ています。
有本)日本の「アビガン」というインフルエンザの薬や、他にも「イベルメクチン」という薬が効くという報道がオーストラリアでありました。これも日本のノーベル賞を取られた大村先生が発見した薬です。特に「アビガン」に関しては、承認を急ぐということをこれまでも総理はおっしゃっているから、こういうことに期待がされるわけです。
新型コロナウイルスの治療薬候補「レムデシビル」とは
飯田)ここで、元厚生労働副大臣で自民党新型コロナ対策本部顧問の武見敬三参議院議員と電話がつながっていますので、いろいろと伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。まず「レムデシビル」という薬ですが、どういう薬なのですか?
武見)いまのお話にもあったように、ギリアド社というアメリカの製薬企業が、エボラ出血熱のために新規に開発中のものです。
飯田)いまも開発中なのですね。
武見)実際に国際共同治験として、アメリカと日本、シンガポール、韓国の4ヵ国で共同治験を行い、日本では国立国際医療研究センターの大曲先生が参加していました。重篤な患者でも「レムデシビル」を投与したときに、かなりの臨床効果があったという結果が日本でも出ています。これらの結果を集めて「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という、世界的にも一流の雑誌でエビデンスに基づく論文が発表されて来ていて、新たに薬事申請されるのを待っている状態でした。しかし、ひと悶着あったのです。最初は希少新薬として、ギリアド社が新たに申請しようとしたのですが、希少新薬にすると価格が上がってしまうのですよ。「この大事な時期に、自分の会社だけ儲けようと思っているのか」と非難轟々になって、2日間で希少新薬の薬事申請を取り下げたということがありました。その上で改めて、新薬としての薬事申請が出されています。出されれば直ちに承認されるだろうと言われていますので、それが総理の発言につながっているわけです。
飯田)その部分に少し時間がかかったという報道もあったのですね。「アビガン」とはどう違うのでしょうか?
武見)「アビガン」は病原体の増殖を抑えることにより、薬の効果が生まれる薬ということになっていまして、日本でも観察研究という形で臨床に使われています。そのなかで軽症の患者さん、呼吸器に関わる不全は出ていないけれど、熱はあるというような患者さんに対しては、一定の効果があると言われています。そういう意味では、日本でも幅広く使われることが期待されている薬でもあります。ただ、「アビガン」にしても「レムデシビル」にしても、いつ特効薬が開発されるのか、みんなが固唾を呑んで見守っているわけです。期待感が先行してしまうと、しっかりとした科学的根拠に基づいて、薬の効果がどこまであるのかということをきちんと確認できないまま、政治的な流れで承認されて使われるようなことになるかも知れない。そうなると、実際にさまざまな副反応が出て来る可能性もありますので、その点は十分に注意しなければいけません。
新薬開発~本来は3段階からなる治験
飯田)我々メディアの悪い癖ですが、持ち上げるときは持ち上げておきながら、何か起こったら叩くという。例えば、「イレッサ」という薬はまさにそういうことがありました。そうならないように、我々も慎重に報道する必要がありますね。
武見)急がなければいけないけれど、副反応を起こしてはいけないという難しい局面にあるわけです。1相試験、2相試験、3相試験とやるのですが、最初は5人~10人くらいでやって、まず安全性の確認をする。第2相試験では100人単位でやります。このときには安全性に加えて、薬の効果の判定をして行きます。第3相試験では1000人単位でやって、薬の効果がより幅広く確認できると承認される、というプロセスを通常は踏むのです。
飯田)いくつか飛ばすにしても、細心の注意がいるわけですね。
武見)急ぐ場合には2相試験のところで、第3相試験の段階で実際には大量に使われるようなことが行われる場合があります。
有本)医師会の会長からもコメントがありましたが、ワクチンの開発が急がれます。特に日本の場合は2021年にオリンピックも控えていますので、ワクチンの開発が不可欠だと言われていますが、この辺りの見通しはどうなのでしょうか?
ワクチンの開発~年明けに大量生産に入る可能性も
武見)ワクチンの開発は難しいのですよ。通常は元気な方にワクチンを接種して、特定の疾患にかからないで済むか、あるいは軽くて済むかということを判定するわけですから、そういう判定の仕方は通常の薬よりも難しいのです。先ほど申し上げた通り、最初は5人~10人でやって、次に数百人、その次に数千人と大量にやるので、通常のプロセスを全部踏むと12ヵ月~18ヵ月はかかると言われています。2月くらいから開発が始まっていまして、アメリカや中国ではどちらの国が先にワクチンを開発するのかという、ライバル関係になってしまっています。イギリスでもオックスフォード大学での開発が始まっていて、9月くらいには第1相が終わるのではないかとも言われています。世界中で大競争時代に入っているのです。うまく行けば年明けくらいには、大量生産に入れるのではないかという期待感が持たれています。
緊急事態宣言の解除は徐々にして行くことになる可能性
飯田)最後に、緊急事態宣言が5月6日までと言われていますが、予定通り解除されますか?
武見)そう簡単ではないと思います。国民の皆さんのご協力で、人との接触8割減がかなり進んで来ました。しかし実際にはまだまだ、実効再生産率というものがありまして、1人が感染して何人にうつすのかを示すのですが、1.0以下になるとどんどん縮小して行くのです。1.0以下になれば、従来やっていたクラスターアプローチでも抑え込めるようになるので、まずは1.0に落とし込むまで皆さんで頑張ろう、ということになっています。
飯田)いまは1.0まで行っていないということですか?
武見)行っていません。したがって、これを1.0に持ち込むところまで頑張るのが基本です。そのことを考えながら、緊急事態宣言の解除を一気にではなく、徐々にして行くことになるのではないかと思います。
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