新型コロナ収束後の各国の経済活動~治療薬開発が不可欠
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月17日放送)に慶応義塾大学教授の神保謙が出演。16日に行われたG7首脳のテレビ会議について解説した。
G7の首脳がテレビ会議を開催
先進7ヵ国(G7)首脳は日本時間16日夜にテレビ会議を開き、世界中に感染が拡がる新型コロナウイルスへの対応を協議した。各首脳は事態の収束後を見据え、世界の経済活動が安定的に再開するための準備が重要だとの認識で一致している。なお、安倍総理大臣は治療薬として期待される「アビガン」の臨床研究を進める方針を表明し、「希望する国に無償供与する。世界の英知を結集して治療薬の開発、普及を進めたい」と語った。
世界的に経済成長率の大幅マイナスは必至
飯田)治療薬やワクチンは、今後を占うという意味で非常に注目されていますが、G7各国はいままさに蔓延に苦しんでいる国々ですよね。
神保)本来であれば国際秩序を先進国の首脳会議がリードするのですが、現在、最も体力を奪われているのがG7の国々だということも事実です。数日前に出たIMFの経済データはかなり衝撃的で、アメリカの今年(2020年)の成長率はマイナス5.9%、ユーロ圏もマイナス7.5%、日本もマイナス5.2%ということです。まさにリーマンショックと同等か、それ以上の経済的な落ち込みが見込まれるということが、G7の直面する現状だと思います。そのなかでトランプ大統領は、「ピークを過ぎた」という表現をしています。全米は州が強いですから、州のなかで少し明るい兆しを見せたところを、徐々に行動規制や自粛を緩和して行く出口戦略を模索するフェーズに入ったと、本人は捉えています。ドイツもほぼ横ばいになり、そろそろ次のフェーズに入ることを協議し始めたのだと思います。G7は日本を含めて、どうやって少しでも正常化へ戻して行くのか、協調して考えなければいけない時期に入ったのでしょう。各国の厳しい情勢に対応しつつ、次の段階も考えるということが大きなテーマだと思います。
薬やワクチンの開発がどの時点でできるのか~ここでも米中の覇権争いとなる
飯田)感染者数の伸びを縦軸にして、時間軸を横にすると、先進各国では山がものすごく高くて、それがいま落ち始めている。一方、日本はその山を低くして感染者数を爆発的に増やさないようにしているけれど、時間は長くかかるという戦略を取っています。そうすると出口戦略も、日本と他国では違って来ると思った方がいいですか?
神保)これは考え方の違いで、社会的に一定程度の免疫を持つ人をつくるという戦略であれば、もしかしたら山は高い方が時間は短いかもしれませんが、社会的な犠牲を相当に払うわけです。やはりポイントは、薬の開発とワクチンがどの時点でできるのかということです。それが出口戦略の最大の焦点と言っていいので、研究開発に集中するのは当然だと思います。ただ、ニューヨークのクオモ知事が言っているように、経済活動の再開は早くても1年半後になるのではないかとか、アメリカの各大学でも、ボストン大学などは授業の開始が来年(2021年)にならざるを得ないと言っています。ソーシャル・ディスタンシングに関しても2022年まで必要だということであれば、長期戦を覚悟することが浸透した認識になっているという印象です。
飯田)ワクチンや薬という話が出ましたが、政治学者の中山俊宏さんは、次のワクチンや特効薬を中国が開発するのかアメリカが開発するのか、世界の覇権がそこで変わって来るという指摘をされていますが、どう思いますか?
神保)それはその通りだと思います。決定的な薬がある国で独自に開発されて、それが複製されて広がる形になるのか、それとも共同開発のようなやり方で、オープンソースでデータを共有しながら多くの企業が協力してつくるのか。それによって捉え方が変わるので、できれば後者の形、世界各国が医療データを共有して開発する形がいいと思います。
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