まさきとしか~最新刊『あの日、君は何をした』を語る
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に作家のまさきとしかが出演。最新刊『あの日、君は何をした』について語った。
黒木)今週のゲストは作家のまさきとしかさんです。最新刊『あの日、君は何をした』が、7月に小学館文庫から発売されました。このタイトルもまたいいですね。
まさき)タイトルは、いままでで5勝5敗です。5敗というのは、ボツになって編集者の方に決めていただいたものです。これは勝ちました。歩いていたとき、いきなりふっと浮かんだフレーズで、相談したら編集者の方も「これで行きましょう」と言ってくださいました。
黒木)「君は」というのがどの人を指すのだろう、と思いながら読み始めますよね。「君」があの人かとわかって来ると、またのめり込みます。そこで、どう結びついているのか。「このミステリーはなかなかすごい」と素人ながらに思いつつ、読ませていただきました。まさきさんからもう一度、最新刊のご説明をお願いいたします。
まさき)2004年が1部、その15年後の2019年が2部という、2部構成になっていて、1部は中学生の息子を突然の事故で亡くしてしまった母親の内面を中心に描いています。2部では舞台が変わり、新宿で若い女性が殺害される事件が起こるのですけれども、その捜査を進めるにつれて、15年前の少年の事故死が浮かんで来るというミステリーになっています。
黒木)帯にはブックジャーナリストの内田さんが、「まさかの結末にあなたは戦慄するか涙するか。著者の力量に茫然自失。火傷注意の1冊」と書いていますが、まさにそうです。
まさき)ありがとうございます。
黒木)「誰か、私の気持ちを掬って私に戻して」という気持ちにさせられたのですが、この本はどういう方に読んでいただきたいと思っていますか?
まさき)大切な人がいる世界と、大切な人がいなくなった世界というのは、時間軸ではつながっていても、まったく違う世界になってしまいます。大切な人がそばにいてくれている人に、改めてその幸せを感じてもらいたいので、すべての人に読んでいただきたいです。
黒木)いまおっしゃったように、大切な人がいる景色と、大切な人がいなくなった世界で見える景色は違うし、気持ちも違う。いなくなった人はあまり描かれないのですが、周りが右往左往するではないですか。その人がいなくなる前と、いなくなった後で人の気持ちが変わっているというのがわかりやすく、共感します。
まさき)人がいなくなったときは、本当にいなくなったときでないと、自分がどうなるのか予想できません。まったく次元が違う世界に、いきなり飛ばされる感覚になると思います。
黒木)他に、伝えておきたいことはありますか?
まさき)『あの日、君は何をした』がちょうど10冊目の著書になるのですが、計算すると、1年に1冊も出していないのですね。いま55歳ですから、これからあと何年書けるかわかりません。この先はペースを上げて年に2~3冊は出せるように、ギアチェンジしなければと決意をしているところです。
まさきとしか/作家
■1965年、東京都生まれ。北海道・札幌育ち。札幌市に在住。
■2007年、『散る咲く巡る』で第41回北海道新聞文学賞を受賞。
■2013年、母親の子どもに対する歪んだ愛情を描いたミステリー『完璧な母親』が刊行され話題になる。
■他の著書に『夜の空の星の』『熊金家のひとり娘』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ゆりかごに聞く』『屑の結晶』などがある。
■最新刊は『あの日、君は何をした』(小学館文庫)
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳