「新行市佳のパラスポヒーロー列伝」
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます
車いすラグビーのリモート記者会見が、8月4日に行われました。
車いすラグビー日本代表は、7月18日~24日にナショナルトレーニングセンターで合宿を再開。アメリカにいるケビン・オアーヘッドコーチは、リモートコーチングという形で合宿に参加しました。
感染防止の観点から、11人の選手と最小限の関係者のみで実施。その合宿での感想や現状などについて、リモート記者会見でケビン・オアーHCと池透暢選手、今井友明選手が語りました。
まずパラリンピック延期について、ケビンHCは「日本にとっていい方向に作用するのではないか」と話し、ポジティブに捉えていました。
今年(2020年)2月までの大会で、アメリカ代表に勢いがあった一方、日本はキープレイヤーの怪我などがありました。この1年の延期が、若い選手にとっては「能力を向上させるいい機会」になると言います。
若手選手・橋本勝也選手には、「彼の成長は大きなインパクトになる」と期待を寄せました。いまできることに集中して強化を図るとともに、東京パラリンピック以降も見据えた上で、新しい選手の発掘にも力を入れて行くそうです。
日本は合宿練習を再開させていて、他のナショナルチームよりも早く再スタートを切れています。
ケビンHCは、他国のチームのコーチとも連絡を取っており、ニュージーランドは代表チームの練習を再開、イギリスはクラブチームの練習が一部再開。カナダは個人トレーニング、アメリカは未だステイアットホームという状況だそうで、チームとして練習できているところは少ないことが伺えました。
先月(7月)の合宿でのリモートコーチングについては、アメリカとの時差が約14時間あり、ケビンHCにとっては昼夜逆転の状態となってしまったそうですが、「比較的うまくいった」と手ごたえを感じていました。
3台ほどのカメラでコート全体を2方向から撮影、時計も映し、その様子をケビンHCが見ながら、Zoomでつないでカメラ越しに話せるようにしていたそうです。
ゲーム形式の練習やキーオフェンス・ディフェンス、ペナルティシチュエーションの練習、ピリオド最後2分間の時間管理のトレーニングなど、テクニカルな技術の練習ができた合宿だったと振り返りました。
池透暢選手は、延期が決まったときに「救われたような気持ちになりました」と語っています。
日本代表キャプテンの池選手は、日本が東京パラリンピックで金メダルをとることを考えて自分自身を高めて来たので、その成果を発表する場がなくなってしまったらと考えると、「選手としての存在価値を失うような気持ちになっていた」と明かしました。
そのぶん、「自分たちには先がある! ということが本当に嬉しかった」そうです。
東京パラリンピックで金メダルに輝くことをモチベーションに、自粛期間中はトレーニングに励んだ池透暢選手と今井友明選手。
池選手は、自宅にあるマシーンなどを使って筋肉トレーニングを行い、来年(2021年)の8月を見据えて、体重減量の取り組みを増量に切り替えました。
今井選手は、肩周りの怪我防止のための肩甲骨周りのトレーニングや、可動域を広げたり、インナーマッスル系のトレーニングをしたそうです。
なかなか代表メンバーが集まれず、トレーニングができないなかでも、連絡を取り合って自宅でできるトレーニングを紹介し、お互いにその様子を見ることで刺激し合いました。
日本を含む上位国の実力が拮抗しているなか、この世界的な新型コロナ禍で差がつくとすれば、それは「チーム力」だと明言した池キャプテン。
「アメリカやイギリスといった、チーム力で相手を倒すチームが要注意になって来ると思います。彼ら(海外チームの選手)が練習できていないとは思っていなくて、いろいろなコミュニケーションをとって成長していると思います」
いまはチーム力を高め、切磋琢磨して仲間を押し上げる「チーム力を高めるとき」。国内選手は「日本車いすラグビー連盟ガイドライン」に則って活動をしており、政府の動向に合わせて、練習内容や人数について細かくフェーズ分けをしています。
ケビンHCがアメリカにいたりと、自粛以前と同じトレーニングにはまだ戻れない状況ですが、そのぶんチームメイトともコーチとも、絆が深まっているように感じられました。