ソーシャルサーカスの可能性と海外の現状 ~ 東京五輪・パラ開閉会式仕掛け人・栗栖良依氏に訊く

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「新行市佳のパラスポヒーロー列伝」
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます

「パラスポヒーロー列伝」では、これまでパラスポーツに焦点を当てて大会の模様などをお送りしてきましたが、今回はまた違った視点からパラリンピックの可能性について考えていけたらと思っています。

2月7日、「SLOW MOVEMENT-Showcase&Forum vol.4-南米・ソーシャルサーカス最前線」というフォーラムが港区男女平等参画センターリーブラホールで行われました。

SLOW MOVEMENT-Showcase&Forum vol.4-南米・ソーシャルサーカス最前線

「SLOW LABEL」とは、国内外で活躍するアーティストとともに、コミュニティがかかえる課題を発掘し、さまざまな分野の専門家や市民・企業・行政をまきこんで、マイノリティの視点から社会課題を解決にみちびく「もの」「こと」「人」のしくみをデザインするNPO法人です。

SLOW LABELの設立者でありディレクターの栗栖良依(くりす・よしえ)さんは、2016年リオパラリピック閉会式の「旗引継ぎ式」ではステージアドバイザーを務め、来る東京大会の開会式・閉会式総合プランニングチームクリエイティブディレクターとして、キャスティングや構成演出に携わっています。(この記事の後半で栗栖さんとお話し内容をお伝えしますネ!)

このSLOW LABELの活動の一つとして、2017年に始動したのが、日本初のソーシャルサーカスカンパニー「SLOW CIRCUS PROJECT」。

「ソーシャルサーカス」とは、サーカスの技術の練習や取得を通じて社会性やコミュニケーションを育むプログラムとして、世界各地で社会的マイノリティ支援に活用されているプログラムです。世界で、障害や貧困・難民・虐待などに起因するマイノリティのエンパワメントに活用されています。

「SLOW CIRCUS PROJECT」は、シルク・ドゥ・ソレイユのサポートを受けて世界各地でソーシャルサーカスを実践する団体と連携しながら、障害のある人とのパフォーマンス創作、ワークショップなど国内での普及と実践に取り組んでいます。

取材に伺ったこのフォーラムでは、国内で展開してきた「ソーシャルサーカス」の実施報告、ソーシャルサーカス業界で最も注目を集めている南米のリサーチ報告などがされました。

SLOW MOVEMENT-Showcase&Forum vol.4-南米・ソーシャルサーカス最前線

2015年に立ち上がった「SLOW MOVEMENT」は、表現者として舞台に立ちたいと思っている誰もが障害を理由に諦めなくてすむ環境を作ることにも力を入れてきました。

そのためにアクセスコーディネーターやアカンパニスト(伴奏者:障害のあるパフォーマーと一緒に演技をする人のこと)の育成をしてきました。

2017年にソーシャルサーカスの普及・体験プログラム「SLOW CIRCUS PROJECT」をはじめ、港区を中心に、これまで障害のある人、中学校の生徒や教員、子育て世代の方や企業社員、市役所職員などを対象に「コミュニケーションのきっかけづくりとなるプログラム」を実施してきました。

2020年には、日本財団が主催する超ダイバーシティ芸術祭「TRUE COLORS FESTIVAL」の一環として、5月9日、10日には池袋西口公園野外劇場でTrue Colors CIRCUS SLOW CIRCUS PROJECT「T∞KY∞(トーキョー)」という野外サーカス公演も予定されています。

世界各地で社会的マイノリティ支援に活用されていた「ソーシャルサーカス」のプログラムですが、港区の学校や幅広い世代へ向けて行われている「SLOW CIRCUS PROJECT」の取り組みを見てみると、参加者間のコミュニケーションを高めたり、身体を使うことで日ごろのストレスや疲れを発散させるようなオリエンテーリングとしての可能性もあることが伺えます。

では、海外のソーシャルサーカスの現状はどうなっているのでしょうか。

金井ケイスケさん

南米初のソーシャルサーカス国際会議に招聘されたサーカスアーティスト金井ケイスケさんから現地視察の報告がありました。

2019年10月2~7日にかけてアルゼンチン(ブエノスアイレス、フフイ州)とチリ(サンティアゴ)の3つのサーカス団体を訪問した金井さん。

南米における「ソーシャルサーカス」は、貧困地域の少年たちへの支援、女性蔑視問題や移民問題の解決、若者の収録意欲向上に向けて行われている社会奉仕活動です。

ピノチェト政権後に広がりを見せたサーカス団体「エル・シルコ・デル・ムンド(サンティアゴ)」、スラム街から活動をスタートさせた「シルコ・デル・スル(ブエノスアイレス)」、女性差別撤廃、若者の就労支援などの活動をしている「シスコ・エン・ムビミエント(フフイ州)」それぞれの団体の取り組みや現地の様子などを知ることができて、とても新鮮でした。

2日間にわたってブエノスアイレスで行われたソーシャルサーカス国際会議には、コロンビア、ウルグアイ、エクアドル、ペルー、チリ、ブラジル、カナダ、スペイン、日本など約10カ国が参加。

南米視察の報告の様子

そして栗栖良依さんと金井ケイスケさんは日本のソーシャルサーカス団体の代表として、ワークショップを行いました。

海外のソーシャルサーカスは貧困や差別問題撤廃のためのものが多く、障害のある人と一緒にサーカスをしている団体はそこまで多くないため、「障害のある人とサーカスプログラムを実施する時の工夫が知りたい!」と注目を集めたそうです。

障害のある人もない人も一緒にサーカスを行うという形は、今後日本から発信していくことができる新たな可能性なのかもしれません。

今回の報告会の終盤、栗栖良依さんとお話することができました。

栗栖良依さん

昨年2019年末に東京パラリンピックの開会式・閉会式の出演するキャストオーディションの公募が行われましたが、なんと延べ5000人以上の申し込みがあったそうです。

「これから審査をしてキャストを絞っていくんですけれど、彼らが最高のパフォーマンスができるように支えていきたいです。起承転結と言いますか、オリンピックパラリンピックの開閉会式を一つにという想いがあるので、常にオリンピックチームと連携を取りながらやっているということになっています」

2020年以降のビジョンについても伺いました。

「パラリンピックの開会式と閉会式で強いメッセージを発信したいと思っています。競技では選手の皆さんが活躍して一人一人違いを活かしたプレーで魅せてくれると思うので、それを見た後の日本の皆さん、海外も含めてですけれど、障害に対する考え方って、きっと変わるんじゃないかなと、まだまだ道半ばですが少しだけ希望が見えてきたかなと思います。

リオの時にはボランティアの中にも障害のある人もいて、障害あるなし関係なくスタッフの人たちもフレンドリーだったし、見る人たちの中にも障害のあるなし関係なく、まぜこぜな環境だったと思うんですね。それは凄く良いなぁと思っていて、日本でもそういう景色が作れたら良いなと思いますね」

栗栖良依さんとは「ニッポン放送 ラジオパークin日比谷2016 ~みどりと、スポーツと、音楽と~」(2016年4月)のステージでお話を伺ったり、2016年リオパラリンピックでも現地でお会いして一緒に車椅子バスケを観戦、夕食をわいわい皆で食べた思い出があります。

「あれからもう4年が経ったんですねー……」と感慨深い気持ちになりつつも、東京オリンピックパラリンピックの開閉会式にかける想いも伺い、充実の時間でした。


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