ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月14日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。非正規労働者と正社員の待遇格差をめぐって争われた2件の訴訟問題について解説した。
非正規労働者と正社員の待遇格差
非正規雇用の人が、正規雇用の人と同じボーナスや退職金が支払われないのは不当であると訴えた2件の裁判で、最高裁判所は10月13日、いずれも不合理な格差には当たらないとして、支給を認めない判決を言い渡した。
飯田)2件の裁判ですが、まず1つが大阪医科大、いまは大阪医科薬科大に変わっていますが、ここの元アルバイト職員への賞与について。2つ目は東京メトロの子会社メトロコマースの元契約社員2人の退職金についてです。それぞれ原告側は、「同じ仕事をしているのに待遇の差があるのは不当だ」という主張です。最高裁の判決は、「同じ仕事と言いながら、業務内容の難易度が正規の社員と違う」というところを重く見たようです。
「同一労働同一賃金」~事実認定として同じ仕事かどうか
高橋)原則ははっきりしていて、同一労働同一賃金です。英語で“Same work same pay(セイムワーク・セイムペイ)”です。事実認定として、同じ仕事なのかどうかということが問題です。非正規は冷遇されているとか、そういう問題ではありません。「同じ仕事か、そうではないのか」という認定問題なのです。今回の件は、同じ仕事に見えるけれど、正規の人の方が仕事の幅が広いのでしょう。そこで違うと判断したのでしょう。これは判断だから、あるところを見ると同じにも見えるかも知れません。全体を見たときに、同じかどうかがポイントです。
飯田)高裁までの判決は、「同じ」というところを重く見ていましたが、今回は、実は違うという「実は」の部分ですよね。典型的な業務の内容を文字で書くと見えて来ない。
高橋)原告の人も同じだと思ったから訴えたのでしょう。かなりの部分が同じだったとは思いますが、よく見ると違うという話です。
日本も職務内容を明確にした「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」をつくるべき
飯田)諸外国の場合はジョブ・ディスクリプション(職務記述書)に「何をすべきか」ということが書いています。
高橋)はっきりしています。これから日本も書いた方がいいです。その方が違いがわかりやすいでしょう。
飯田)どこまでやるべきかをはっきり書くということですね。例えば「クレームの処理」とか、付随する業務などですね。
高橋)勤務時間とかですね。私は内閣官房参与ですが、非常勤です。はっきりと契約で書いてあります。担当、勤務場所など、はっきりしています。非常勤と常勤とは何が違うかと言うと、毎日行ってはいけないというところです。毎日行ったら常勤になってしまいます。
飯田)日本の雇用慣行で特に正社員はそうですが、会社に入ったら「何でもやる」という包括的な契約になっています。
高橋)「入ったら何でもやる」と契約書に書いておけばいいのです。
飯田)「何でもやる」ということも書いてはいない。
高橋)書けばいいです。何でも列挙したらその範囲だとわかります。書けばみんな納得すると思いますよ。書いていないとわかりづらいです。裁判をするときも、いろいろ聞いてみて違いがわかります。聞いた話だから面倒でしょう。最初から文書で業務内容がはっきりしていれば、わかりやすいです。
原則は「同一労働同一賃金」しかない
飯田)使用者からすると、曖昧模糊にした方が何でもやらせることができるから楽ということでしょうか。
高橋)そうすると、今回のような形で訴えられたら裁判で大変です。流れとしては、きっちりしないとトラブルが大きくなるという傾向になっているのではないでしょうか。昔ならば、こういうことは訴訟にもならないレベルで、曖昧模糊とした方が有利だったかも知れませんが、これからは曖昧模糊とした方が不利になる可能性が高いです。
飯田)最高裁でこういう判決が出てしまいました。これから先、「非正規にはボーナスを払わなくていいという無体なことが横行するのではないか」という指摘もあります。
高橋)そうなると、「同じ仕事なのになぜ違うか」という訴訟がまた出ると思います。
飯田)挙証責任は企業側にあるわけですよね。
高橋)今回の2例の判決が他のところで適用になるとは限りません。原則は同一労働同一賃金しかありません。
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