「維新の会」の進むべき道~大阪都構想の経験を糧に
公開: 更新:
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月4日放送)に東京外国語大学教授で国際政治学者の篠田英朗が出演。「維新の会」の存在について解説した。
松井一郎市長が大阪維新の会の代表も降りる意向
大阪市を廃止し4つの特別区に再編する大阪都構想が住民投票で否決されたことを受け、大阪維新の会代表の松井一郎大阪市長が、近く代表を辞任する意向を固めたことがわかった。11月に開かれる党の全体会議で正式に表明するものとみられている。
飯田)11月1日に住民投票が行われ、都構想が否決となりました。その後の会見のなかでも、市長の任期満了をもって政界を引退すると表明していますが、地域政党の大阪維新の会代表も降りるということです。維新の形が変わって行くということですかね。
篠田)1つの大きな区切りにはなるのでしょうね。
維新の会にとって、大阪都構想は次に進むための「いい経験」になる
飯田)今後の維新については、どうご覧になりますか?
篠田)維新の会は位置付けが特殊なので、国会での議席以上の存在感を持つ政党だと思います。私自身は専門分野ではないので、大阪都構想がいいのか悪いのか、判断する知識を持っていませんが、今回の住民投票については、暮らしている方々にも迷いがありました。説明はわかるけれども、「これで10年後、本当によくなるのか」と言われたら、どんな人がどれくらい働くかによっても変わって行きますから、それはわからないですよね。自分の決断をかけて住民の皆さんが投票をし、結果を出したのですが、結論としては簡単には言えません。維新の会は、吉村府知事に次の世代を委ねるということを、意識的に発言しています。「吉村さんという若いカードをどう使うのか」ということを、お考えになっているところではないでしょうか。大阪維新の会が国政における重要性をよく認識して、国政においてより一層活躍してもらえるのであれば、大阪都構想というのは1つの段階として、いい経験となり、次に進む糧になるのではないかと思います。
飯田)既存の野党とは別の照らし方をして行くべきだということですか?
篠田)維新の会ができる前は、「大阪に都をつくりたい」と誰かが口走っても、誰もまともに取り合わなかったと思います。しかし、少なくとも、世論を二分してみんなが迷いに迷って、「ひょっとしたら」というところまで持って行きました。維新を批判する人からすれば、税金を投入する価値があったのかとなりますが、大きなアジェンダセッティングをする実力を見せたということは、言えると思います。それは、「改革をしたい」ということを旗印にしている政党としては、大変に重要です。もちろん、選挙で自民党の次に多くの議席を取るというようなことは言えませんが、「次々と新しい意味のあるアジェンダセッティングをしてくれる」という印象を持つ政党に生まれ変わる、大きなポテンシャルを持っています。
素面の議論を大真面目にできる存在感のある政党に
篠田)有権者に「そんな政策があったのか。勉強しなくてはならない」というような気持ちにさせるような既存の政党があるでしょうか。維新の会はそういう政党になれるのだと思います。特殊な「ああいう政党が1つあるといい」とみんなが思うような政党に脱皮する可能性を持っているのです。
飯田)国会論戦を見ていると、「絶対反対」か、「提出した法案を押し通す」かという二分論になってしまいます。特に安全保障の議論はそうなってしまっています。
篠田)国会の論争と考えると、いつも「こんなことを言うのか」というような人が、同じ話を聞いてシュプレヒコールをあげる人に向かって叫んで、それに反応しない人は反応しないというような構図のなかで、陣取り合戦をしているだけです。それで「内閣支持率が5%下がった、下がっていない」というようなことを、大の大人が給料をもらって血眼になってやっている。この状況を有権者が見れば、「これで1億2000万人の国はやって行けるのか」という不安だけが募ります。その現状のなかで、どういう政策を取るにしろ、「これは素面の議論ではないのか、責任政党はそういうことを言わなければいけないのではないのか」ということを大真面目に、書生論のような形でいいので言ってくれる政治家をみんな待望しているのだと思います。それを維新の会に、愚直にそのカラーでやって欲しいです。「今回はいい、今回は悪い」ということがあっても、維新は日本のなかで存在感があると認められるポテンシャルがあると思います。
飯田)それが使い古された言葉ですが、「熟議の国会」ということですよね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。