大阪都構想~賛成派に回らざるを得ない公明党の事情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月19日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。住民投票が告示され、10月18日に初の日曜日を迎えた大阪都構想について解説した。
大阪都構想~前回は反対側であった公明党が賛成派に
大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票が告示され、初の日曜日となった10月18日、賛成派と反対派が市内で街頭演説を行い、11月1日の投開票に向け支持を訴えた。日本維新の会の松井市長、吉村府知事、公明党の山口代表は一緒に街頭演説に立って賛成を呼びかけた。
飯田)賛成派は行政のコストが下がり、府市一体での都市開発ができるというメリットを挙げています。一方の反対派の方は、将来的に1000億円を超えるコストがプラスでかかるのではないかということや、コロナウイルス禍のいまやることかというような主張をしています。ざっくり整理するとそういうことになりますが、山口代表が同じ選挙カーに松井市長・吉村府知事と乗りましたね。
須田)前回の住民投票では、公明党は反対側に回ったのです。公明党が反対に回ったことで、おそらく否決されたのではないかと言われています。その公明党が、今回は賛成派に回ったというところが大きなポイントです。「基本的な設計図がよりよいものになったから」というのが、公明党の主張です。
反対派の主張~コスト高になる、2000億円大阪府に召し上げられる
須田)私も15日に松井市長、吉村府知事にインタビューしましたし、その前には、反対派の知恵袋になっている京都大学教授の藤井聡さんに話を伺いました。ポイントを整理しますと、反対派は、初期費用に比べて、それが回収できるのかどうなのか、「コスト高になる」と主張しています。それと、大阪市が解体されて4つの特別区に分かれると、住民税などの税金が2000億円ほど一旦大阪府に入ることになります。そうすると、本来ならば2000億円大阪市に入るものが府に入るわけですから、その分、住民サービスが低下するのではないかと。要するに「2000億円召し上げられるぞ」ということです。
税金については、「特別会計」にして透明性を確保する
須田)ただその点については、松井市長、吉村府知事共に「特別会計」という別扱いにして、透明性を確保した上で、4つの特別区に分配して行くという形にすると説明しています。東京では、そういう制度は採られていません。完全にブラックボックスになっています。反対派サイド、藤井さんの説明によれば、確かにそれは特別会計になっているけれども、その使い道については府市統合した後の府議会が決める。府議会の構成を見ると、旧大阪市の議員よりも、それ以外の方が多く、府議会によっては大阪市以外に使われてしまう可能性があるのではないか、そういう主張をされていました。それについても設計図である協定書の文言に書かれているとあるのですが、私の読む力が浅いせいかも知れませんが、曖昧なのです。
飯田)どうとでも取れるようになっている。
須田)藤井さんの言っているように、勝手に使うことができるとも取れるし、そうではなく、2000億円については元のように配分されるのだとも取れる。「どうなのかな」というのが素朴な疑問です。
初期費用と税金の問題~賛成・反対派共に、経済成長させることに関しては一致
須田)初期費用と税金の問題ですが、そうは言っても、大阪府と大阪市が統合することによって経済成長をすれば、その部分は十分回収できるのです。藤井さんも、仮に統合しても経済成長については、テコ入れしなくてはならないお立場です。市がそのまま残っても、統合されても、大阪経済の成長に関しては一致しているわけです。その部分については、両者が手を結ぶ側面も出て来るのではないでしょうか。
公明党が日本維新の会を重要視する理由~国政選挙との関係
須田)公明党は「常勝関西」と言われています。特に大阪は、公明党の最大の支援団体である創価学会の発祥の地ということもあり、絶対に負けられない地盤なのです。兵庫についても、赤羽国交相の地元になっていますから、重要視されている。国政選挙と密な関係にあり、日本維新の会を敵に回すことはできないという側面が色濃くあるのだと思います。次の国政選挙では、特に関西では、公明党・日本維新の会は連携を強めて行くでしょう。次の国政選挙とワンセットだと考えてもいいと思います。
飯田)公明党にしてみれば、自分のところの小選挙区に維新の候補が立ってしまうと、選挙が厳しくなってしまう。事実上の選挙協力という形で、維新の候補は、公明党の候補が立つ選挙区には立たないというようなことになっている。これは何としても残してもらわないとならない。しかも公明党は比例代表との重複をしないから、小選挙区で落ちてしまうと、本当に落ちてしまう。だからここは何とかしないとならない。
須田)先日、誰がという実名は挙げることができませんが、日本維新の会の大幹部の方と偶然、新幹線のなかで会ったのです。「住民投票の勝算はあるのでしょう」と聞いたところ、「いま公明党さんが頑張って住民説明会をしていただいているから……」と。自信満々に見えました。
今回の住民投票で非常に大きい公明党の存在
飯田)なるほど。ここの組織がどう動くかということは重要ですものね。山口代表が今回入ったということは大きいですね。山口さんは支持母体の創価学会の婦人部に強いと言われている。そこが選挙のときには実働するということも考えると、この意味は大きいですか?
須田)大きいですね。加えて大阪は北側一雄さんの地元ですから。
飯田)北側さん、副代表の重鎮です。しかも選挙区は大阪の南の方です。2015年の住民投票のときに取材で入りましたが、「南をどうするか」ということが、特に維新にとっては重要でした。北の方の所得の高い人たちは理解もあり、改革マインドもあるけれど、「南の方をどうして行くかが重要なのです」と聞きました。どうなりますか?
須田)いまのところ、予測することは差し控えます。
飯田)最後までどうなるかわからない。
須田)ただ、これは将来的には道州制にもつながる話です。
飯田)政令指定都市は関東にもたくさんあります。特に菅さんの地元では、横浜、川崎、相模原とある。その辺りも官邸としては意識していますか?
須田)そうですね。吉村府知事、松井市長に言わせると、東京23区と比べれば、はるかに自由度が高くて権限が強化される特別区ができるということで、東京の特別区にも影響を与えると言っていました。小池知事にとっても他人事ではありません。
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