イギリスとEUのFTA交渉~年内の合意は不可能
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月14日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。イギリスとEUがFTA交渉を継続することで合意したというニュースについて解説した。
イギリスとEU、FTA交渉をさらに継続することで合意
イギリスのジョンソン首相と、EUのフォンデアライエン委員長は12月13日の電話協議で、EU離脱を目指すイギリスと、EUとの自由貿易協定(FTA)などの将来関係をめぐる交渉をさらに継続することで合意した。13日を最終期限としていたが、ギリギリまで合意への努力を続ける必要があると判断したもので、新しい交渉期限は示していない。
飯田)いまのルールでは、12月末で終えるということになっています。どうなるのでしょうか?
FTA交渉が決裂するとどうなるのか~関税が乗せられ、イギリスで生産したものの競争力がなくなる
須田)大前提として、正しく理解して欲しいことは、この交渉が決裂すると、ある種のフリーハンド状態になって、イギリスがやりたい放題になるのかと言うと、そうではありません。WTO規定のルールのもとに行われるということですから、無政府状態になるというわけではありません。では交渉が決裂するとどのようなことが起きるかと言うと、WTO規定に基づく関税の上限が設定されて、いまはほぼゼロという状況ではありますが、これに一定の関税が乗せられて行くということになるわけです。そうなった場合に何が起きるかと言うと、例えば、EUのエリアのなかで「自動車を生産しましょう」となったときに、部品をイギリス以外の国で生産してイギリスで組み立てる。そして完成品をEUの域内で販売するということになると、関税が発生するために、イギリスで生産したものが競争力を失ってしまうという状況になる。そうなると、イギリスに組み立て工場を置いておく必要があるのか。置いておく必要がないということになると、そこから空洞化が始まる。あるいはそこで工場を設営しているメーカーに多大な負担がかかって来るという問題が起こります。
飯田)そうですね。
移動の自由が認められなくなり、建設土木業に従事しているポーランド系の労働力がなくなる
須田)では混乱していないから別に問題になってはいないのかと言うと、そうではありません。一部には大きく影響が及んで来ますし、例えば移動の自由が認められなくなると、ロンドン市内においては、建設土木業に従事している人はほとんどがポーランド系ですが、そのような人たちがイギリスに留まることができなくなる。そうなると、ロンドンの公共事業投資や道路建設はどうするのかというようなことになりますから、そこでは一定の混乱が起こると思います。
EU離脱へ向かったイギリスの心情的な不満~漁獲高にまつわる「譲れない一線」
須田)イギリスのEU離脱にはいろいろな理由があるのですが、心情的なものもかなりあります。イギリスの排他的経済水域のなかで、漁獲高の割り当てというのが、イギリスはまったくタッチすることができなかった。不当に少ない割り当てのなかで不満が増長して行った。それに対する反発がトリガーとなった部分もあるのです。もちろんこれだけではありませんが、他にもそのような要素があって、離脱に向かって行ったのです。「自分たちのことが、なぜ自分たちで決められないのか」という感情的な部分をどのように解消して行くのか、というところがあると思います。
飯田)漁業権で揉めていると言われていますが、そこがまさにその発端の部分になるのですね。
須田)イギリスの経済全体で考えると、それほど割合は大きくありませんが、そこを勝ち取るために、それ以外の工業製品をネガティブな方向に持って行けば、プラスマイナスで考えると大きなマイナスなのです。しかし、そこには心情として「譲れない一線」というものがあるのだと思います。
年内に合意することは不可能~交渉延期になる可能性が高い
飯田)住民投票から交渉を続けて来ているというところがあって、一応、2020年末が期限となっていますが、確か規定で1回延長できますよね?
須田)延長できます。ただ「延長はしない」とジョンソン首相が言っていますが、私はこれは駆け引きの1つだと思います。
飯田)なるほど。
須田)加えてクリスマス休暇に入ってしまいますから、年内に合意するということはほぼ不可能だろうと思います。
飯田)実質的に交渉できるのは今週1週間(12月20日まで)ぐらいですか?
須田)そうですね。解決すべき課題は山ほどありますから、物理的に無理ではないかと思います。いずれ交渉延長ということが出て来るのではないでしょうか。
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