バイデン政権が「元に戻せない地雷」を埋めるトランプ大統領
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。米下院本会議がトランプ大統領の罷免を求める弾劾訴追決議案を可決したニュースについて解説した。
アメリカのトランプ大統領が史上初の2度目の弾劾訴追
アメリカ下院本会議は、1月6日に起きた議会襲撃を扇動したとして、トランプ大統領に対する弾劾訴追決議案を賛成多数で可決した。トランプ大統領は2019年、ウクライナ疑惑をめぐって弾劾訴追されていて、アメリカ史上初めて在職中に2回弾劾訴追された大統領となった。
飯田)今後は上院でどうなるかというところですが。
宮家)上院では訴追の決断を下さないと思います。辞めてしまった大統領を弾劾できるのかという素朴な疑問もありますが。あれだけの事件が起きて、しかもトランプさんはその直前に間違いなくけしかけているのです。その責任はありますから、当然の2回目の弾劾裁判なのだろうと思います。
飯田)そうですね。
宮家)それに関しては、「なぜ」とも思うのです。あと残り僅かではないかと。「政治的な目的のためのパフォーマンス」ではないかという共和党系の人からの批判もないわけではない。しかし、共和党からも下院で10人が弾劾に賛成しています。そういうところを見ると、アメリカの内政の劣化は続くのだろうと思いますね。
自分自身への恩赦を考えるトランプ大統領
宮家)もう1つ面白いと思うのは、トランプさんも馬鹿ではないから、負けたのはわかっているのです。しかし、性格的に負けを認めたくない。そこで何をするかと言うと、とにかく自分の業績をきちんと残るようにしたいのです。弾劾は凌ぐとしても、次は訴追が待っているわけです。そこで自分自身の恩赦を考える。
飯田)自分で自分の恩赦を考えると。
宮家)もしくは娘、娘婿、息子、主任弁護士、そういう人たちにやらせる。日本での恩赦法を考えたら、そんなことはできないようになっていますから。「そんなことできるの?」と思いますけれど、おそらくやるでしょう。そして、何とか生き延びようとする。
バイデン政権が元に戻せないように地雷を埋めるトランプ氏
宮家)外交面でも、面白いことをやっているのです。ポンペオさんの動きを見ていると、主流ではないと思いますが、イラン国内にアルカイダがいると言い、それに制裁をかけてみたり、イランに支持されていると言われているイエメンのフーシ派というのがいるのですが、これをテロリスト団体に指定したり、台湾との接触の仕方を変えると言ってみたりしています。すべて、新政権ができたときに「我々がこれをやってしまったから元には戻せませんよ」ということなのです。あるアメリカの記者が地雷と書いていましたが、地雷を埋めておいて、バイデンさんがそこを踏むとボンと。要するに、トランプさんがやったことを変えられないように、いろいろ地雷を埋めているのだと言う人がいます。
飯田)そうですか。
宮家)そういう意味では、史上初の2度目の弾劾訴追というのは当然なのですが、次の問題として、バイデンさんがどれだけ元に戻せるか。昔のように内政が安定していた時期ならともかく、内政が劣化しているなかで元に戻そうとしても、戻らないものが出て来るのではないかということは、少し心配しています。
インド太平洋調整官に就くカート・キャンベル氏
飯田)インド太平洋調整官として、カート・キャンベルさんという元国務次官補が起用されることが発表になりました。
宮家)もともと彼はロシアの専門家だったのです。しかし、冷戦が終わってしまったから、優秀な人材がアジアに流れて来たのでしょう。そのあとはアジアをやっている人で、彼は次官や副長官になってもおかしくないと思っていたでしょう。本人はどれくらいハッピーかわかりませんが、我々にとっては、彼のような人がアジアを見てくれるのは大事なことだと思います。
飯田)決してマイナスではないと。
宮家)マイナスではないです。しかし、彼がハッピーかどうかは知りません。
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