ボーカル&手話パフォーマーの「HANDSIGN(ハンドサイン)」による、聞こえない女性と聞こえる男性の恋愛の実話を基にしたラブソング『僕が君の耳になる』のミュージックビデオが、YouTube再生回数1,000万回を突破。これを記念して、HANDSIGNのTATSU、SHINGO、そして同作で主演をつとめた女優・足立梨花が集まり、喜びを語った。
HANDSIGNは、歌、ダンス、手話という新しい表現方法でメッセージを伝える2人組のユニットで、小学1年生の時からずっと仲がいいというTATSUとSHINGOが、2005年に結成。2017年にリリースした『僕が君の耳になる』の、声が聞こえないことで、さまざまなすれ違いを重ねてきた2人が壁を乗り越えて結ばれる、という感動的なストーリーは話題となり、MV再生数も約4年かけて大台を突破。映画化も決定し、今年2021年5月に公開を予定している。
『僕が君の耳になる』がヒット作となり、多くの人に見てもらえたことについて思うことや、MVの制作秘話、手話との出会いやHANDSIGN結成当時のことを聞いた。
――手話をパフォーマンスに取り入れたきっかけは何だったんでしょうか?
TATSU:昔、手話のドラマを見て、手話ってかっこいい、感動するなと思ったんです。
――そのドラマの作品は?
TATSU:『オレンジデイズ』(TBS系・2004年)です。当時、僕はSHINGOとストリートダンスをしていたんですが、そこに手話を取り入れたらかっこいいんじゃないかな、と思い。本当に軽い気持ちで誘ったんです。
――手話はどこで勉強されたんですか?
TATSU:SHINGOと2人で本屋さんに行って、手話の本を買って。好きな音楽の歌詞に、その本に載っていた手話の絵を切って一個一個貼って作り上げるという、めちゃくちゃアナログなことをしていました。
SHINGO:歌詞の中で辞書に載っていない単語もあって、僕ら、本当にノリで始めたので「そこは飛ばしていいか!」みたいな、最初はそれぐらい適当で(笑)
――TATSUさんに誘われた時はどう思いましたか?
SHINGO:『えっ? 手話?』みたいな感じで。僕、結構イエスマンなので、「じゃあ、やってみようか?」「とりあえず本屋に行く?」と言って。
――HANDSIGNの手話を取り入れた音楽やダンスについて、耳が聞こえる人、耳が聞こえない人、それぞれどんな反応がありましたか?
TATSU:大学の時にイベントを主催していて、その時に大学生200人くらいを集め、そこで初めて見せたんです。当時は髪もドレッド。僕らは、めちゃくちゃかっこいいと思ってパフォーマンスしたんです。でも終わった後、すごく仲のいい友人たちが「めっちゃ感動したんだけど」って、泣きながら言ってくれて。そこで、『かっこいいんじゃなくて、感動するんだ!』と思って。ダンスに手話を取り入れることによって、誰かを感動させられるエンターテイメントになるんだな、ということに気付きました。
SHINGO:耳が聞こえない方からは、僕らみたいにダンスでリズムを取りながら手話をするパフォーマンスを初めて見たと。「リズムが伝わってくるし、手話のおかげで言葉も少し入ってくるし、うれしい!」って言ってくれたのを、すごく覚えています。でも……嫌いな人ももちろんいて。「もっとしっかり手話をやらないと伝わらないよ
って言われたり、いろんな意見がありましたが、そこはポジティブに捉えて、もっと磨いていこうと思いました。
――そして、『僕が君の耳になる』のMVがついに1,000万再生を突破しました。
足立:あまりに大きい数字で実感がないです。凄すぎて、もはや私の手から離れた子供みたいな、遠くに行っちゃった感じです(笑)
TATSU:100万回再生までは早かったんですけど、実はそこからあまり伸びなくて。それが、2020年の1年間で500万回ぐらい伸びたんですよ。コロナ禍でみなさんが外出を自粛してネットを見る機会が増え、そこでどんどん拡散されて。みんなが本当に「これ、いい!」って感じてくれたから、こんなに広まったのだと思っています。あと、足立さんの演技!「本当に良かった」っていう人が多いです!
足立梨花:本当ですか!? ありがたいです!
TATSU:MV撮影は真冬で、本当に寒い中、薄着で頑張っていただいた。出演者のみなさんに感謝です。
足立:確かに寒かったですね。すぐそこが海で、海風も吹いて(笑)
――MV出演オファーを受けた当時、足立さんはどんな気持ちでしたか?
足立:私、2時間半の舞台で耳の聞こえない女性役を演じて、セリフなしで全部手話でやったことがあったんですけど、その時は手話監修の方がいない環境で、出演者も制作も手探りで作っていった作品だったんです。舞台後に、耳の聞こえない方に私の手話が伝わったという感想をいただいて、それは凄くうれしかったんですけど、「もっと簡単な表現があるのに」とも言われて……。だからこそ、ちゃんとしていない(専門家の指導を受けていない)私の手話でいいのかな? という不安はありました。
――MV撮影で印象に残っている思い出は?
足立:(HANDSIGNのファンと一緒に撮影した)コンサートシーンでは耳が聞こえる人、聞こえない人関係なく、本当に楽しそうにしていて。みんなが同じ反応をしていたのがすごく楽しくて、大勢で気持ちを共有できた幸せな空間でした。
TATSU:『僕が君の耳になる』のMVは、実は学校の道徳とか、大学の授業でも使われているそうで。曲ってどんどん忘れられていってしまいますが、自分たちの作品が教材として使われるのは、これはアーティストとして、とてもうれしいことです。
――HANDSIGNのお二人にとって手話はどんな存在ですか?
TATSU:英語と一緒で音楽などをたくさんの人に広めるための言語ですね。手話は言語でありエンターテインメントであって、福祉だとは思っていません。福祉の人たちが使う言葉、みたいな感じは全く無いです。
SHINGO:そうですね。歌や音楽も、ファンと僕らを繋ぐものじゃないですか? 僕らにとって、歌もダンスも、そして手話も、人と人を繋げるための存在だと思っています。
――今後の目標や夢は?
TATSU:これまでは、耳の聞こえない人達の実話を基にした曲を作ってきたので、今後は自分が体験したことを発信していきたいと思っています。
SHINGO:最近、若い子たちが『僕が君の耳になる』を、ダンス感覚で楽しんでくれていて、TikTokに投稿してくれていたりするんです! ライブ以外でも、こうしたSNSで楽しめるような手話、かっこいい手話も発信できたらいいなと思っています。
●HANDSIGNオフィシャルHP
https://www.hand-sign.com/