ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月3日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2021年度予算案が衆議院を通過し、年度内の成立が確定したニュースについて解説した。
2021年度予算案が衆議院を通過~年度内の成立が確定へ
2021年度予算案は3月2日、衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決された。3月3日から審議の舞台を参議院に移すが、憲法の衆院優越規定に基づいて年度内の成立が確定している。
飯田)各紙には、「9年連続過去最大」「一般会計総額106兆円あまり」というような見出しが出ています。
新型コロナ予備費を除けば2020年度から増えていない
佐々木)それほど金額は膨れ上がっていません。昨年(2020年度)の当初予算が102兆円で、今年が約107兆円です。そのうちコロナ予備費が5兆円計上されているので、それを引くとほぼ増えていません。だから野放図な、ということではないです。さっそくメディアの緊縮の好きな人たちは、「財政規律が」とか「次世代につけを」などと言っていますが、そういう次元ではないと思います。
飯田)そうですね。
佐々木)逆に野党から「コロナ対策費が不十分」という批判がありました。これはその通りで、もう少し増やすべきですし、「給付金をもう1度やるべきだ」とも言われていますけれど、政府はやろうとしません。金融庁が、中小企業向けのコロナ関連融資の返済期限である1年になるので、「もう1度猶予を」と言っています。確かに来月、再来月に返済しなければと苦しんでいる中小企業の事業者は助かるでしょうが、それは苦しい期間が延びるだけです。その先に展望があるわけではありません。
コロナ後も回復しないマーケットは出て来る~「そのために予算をどう使うか」に踏み込むべき
飯田)元本がそのまま残っているわけですからね。
佐々木)返さなくてはならないことは変わりません。だから返済猶予というような話ではなく、経済をきちんと回すという方向に舵を切らないと、事態は打開しないと思います。コロナが一過性で終われば、また元に戻るかと言うとそうではなく、リモートワークが大企業を中心にある程度定着して来ています。それによってマーケットが変わって来ることもあります。そうすると、コロナが終わっても回復しないマーケットも出て来るわけで、そこの経済をどう回すかを全体的に考えなければいけません。「そのために予算をどう使うか」というところに踏み込んで欲しいです。
飯田)社会全体の構造が変わって行くところで、どうデザインして行くかという話ですが、いままで通りの思考回路のままで来ています。
佐々木)去年、持続化給付金や1人10万円の給付金を配ったからいいだろうと、あとは皆さん頑張ってください、返済猶予はある程度考えますよ、というのが政府の対応に見えてしまいますが、それでは経済をもう1度回復することはできないと思います。
新しい行動に基づいた、新しい経済の回し方を考えるべき
佐々木)以前からグリーン・ニューディールという話があり、脱炭素を推進し、予算を使って新規ビジネスを、という話をしていますが、そうではなく、財政出動させて予算を投下して新規事業が回る仕組みを考えなければいけません。
飯田)一方で経済を回すことを考えると、緊急事態宣言をいつまでやるのかという話になります。東京都など1都3県は未だに出ていますが、延長を要請する方針だそうです。
佐々木)このまま行くと、数ヵ月後に2000人を超える事態になるからということです。ワクチンが行き渡らない限り、そのリスクは抱え続けます。去年の早い段階では「ハンマー&ダンス」と言って、「ある程度抑え込んだら経済を回して、それで増えたらまた抑えればいい」という話でした。ただ、それをやると「政府はどうなっているのか、みんなこんなに緩んでいるではないか」と怒り出す人がいる。抑えたら今度は「経済が回らない」と怒ります。どっちにしても怒られるので、言われるがままに、緊急事態宣言を続けるかと。緊急事態宣言を続けると地方に行けないから、みんな都心で遊んで、人が大量に出ている状況です。
飯田)そうですね。
佐々木)これって緊急事態なのでしょうか? 夜8時くらいまでしか店をやらないので夜の街は暗いですが、その分、早い時間からドンチャン騒ぎをしている人もいるわけです。そのようにズルズルやるのではなく、ある程度1月~2月、みんな一生懸命やったので、東京でも感染者数が200人くらいになりました。ここは1度、自由に経済を回して、ただしその経済の回し方も昔のようにドンチャン騒ぎで回すのではなく、旅行はするけれども、静かに騒がないで行く。観光地に集中して行かないなど、新しい旅のスタイルを定着させる。その上である程度、また感染者数が増えて来たら、もう1回考えるという、新しい行動に基づいた、新しい経済を考えなければいけませんが、なかなかそこには行けないし、政府側もそこまでのモデルが示せていません。
戦争で言えば「撤退戦」
飯田)それよりも宣言を続けていた方が手っ取り早いと思うのですかね。
佐々木)こうやってGo To もいつ再開するかわからず、緊急事態宣言も続いて観光業、飲食業はますます減少するだけで、何の展望もないですからね。
飯田)その見通しを、リーダーシップを取って示すのが、政治の責任かも知れませんが、それよりも、支持率を気にしてしまうということですか?
佐々木)これは戦争で言うと撤退戦です。「勝った勝った」と言える戦争ではありません。キスカ島から撤退するようなものです。
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