ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月15日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカのブリンケン国務長官とオースティン国防長官が来日するというニュースについて解説した。
ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が来日
アメリカのバイデン政権初の閣僚による外遊として、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が3月15日から17日まで来日する。両長官は16日、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に臨む。
バイデン政権は中国政策にどう臨むのか
飯田)日本のあとはソウルで行われる2プラス2にも出席するということが報じられております。ブリンケンさんとオースティンさんが初めて来るところは日本だったということです。
須田)それまでのアメリカ一国主義から国際協調主義に切り替えるそのなかで、トランプ政権とバイデン政権の違いがどう出るのか。現政権による国際協調路線の具体的な内容が、今回の来日で少しは見えて来るのかなと思います。ブリンケン国務長官は対中強硬派ということで知られていますので、そこに大きく期待するものではないけれども、バイデン政権として「中国政策にどう臨んで行くのか」というところも、その一端が見えて来ると思います。そこを見てみないと、これについての評価は難しいのではないでしょうか。
飯田)そうですね。
須田)その一方で、バイデン政権の政権基盤である議会の方を見ると、強力なリーダーシップを発揮できるような状況にはありません。2022年に中間選挙を迎えるという状況のなかでは、それを意識して動いて行かなければならない。確かに上下院とも議会は過半数を獲っていますが、過半数と言っても上院の方は50対50で、最後の議長枠が副大統領ですから、51対50という微妙なところになっています。そういう点で、議会運営がスムーズに進むのかどうかはわかりません。
飯田)微妙であると。
どのタイミングでバイデン政権の閣僚全員が揃うのか~決して一枚岩ではない民主党
須田)さらに閣僚がすべて議会承認を得ているわけではありません。この綱引きがあって、6月くらいまでずれ込むのではないか。加えて閣僚承認をするにあたって、やはり上院ということになるのですが、いま与党である民主党側からも造反が出て来かねない状況にあるのです。その辺りを考えると、もちろんトランプ政権もなかなか議会承認を取れなかったというのはあるのですが、オーソドックスなやり方をするバイデン政権にとってみると、閣僚の議会承認がどのタイミングで取れて閣僚全員が揃うのか、どういう形で足元の与党から反対が出て来るのかというところが注目するところです。
飯田)民主党の上院議員のなかにも、中絶反対など、保守的な主張をされている方もいらっしゃいます。CO2削減でパイプラインを止めるとバイデン政権は言っていますが、それでは雇用がなくなってしまうと反対している方もいて、決して一枚岩という感じでもないわけですね。
須田)その一方で、共和党の方も割れていますから、いまのアメリカ議会は4派~5派に分裂しているような状況になります。そこでも相当難しい政権運営の舵取りということになるでしょうね。
アメリカの内政状況を見極めている北朝鮮
須田)北朝鮮問題についての話し合いにしても、北朝鮮とアメリカは国交がありませんから、国連本部のあるニューヨークを舞台に水面下で接触して交渉をしているのですが、国連本部とアメリカの対北朝鮮交渉になっていて、北朝鮮からは無反応なのです。そこは北朝鮮サイドとしてもアメリカの出方を窺っているのだろうと思います。ここで軽々にトランプ政権のときのように乗っかってしまっても、経済制裁の解除などの実利が何ら得られなかった以上、ここで変に動くこともできない。アメリカとしても、対応がしっかりと決まっていない。ですから、北朝鮮が無視しているというよりも、アメリカの状況を見極めているのだろうと思います。
飯田)それだけ内政に注力しなければならない、外交に本腰が入っていないかも知れないということを見透かしているわけですね。
須田)加えて今回の日米2プラス2に関して言うと、先だってのクアッド、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの協議とも連携して来ますが、ここも同床異夢ですよね。インドはどちらかというと中国と強く対立したくないというスタンスですし、オーストラリアはいまは対中強硬なのですが、政権交代ごとに対中政策が変わるという国です。ですからいま現在、クアッドで固まったからといって、「それでよかった」ということにはならないと思います。
排除はしないけれど、中国にとってのハードルを高く設定する各国
飯田)クアッドの首脳たちが米紙ワシントン・ポストに寄稿もしましたけれど、中国という名前は1度も出していないけれども、明らかにそこを意識したような文章が出ています。あの辺が一致点というか、妥協点というところでもあるわけですかね。
須田)ただ、ここ最近の対中政策は、例えばサイバーセキュリティの世界でも、明らかに中国を排除するような動きを見せているのですが、だからといって、公式には「中国を排除することはしません。我々の条件に中国の企業が乗って来て、例えば共産党に対して情報のデータ提供をしません、というところを約束すれば、ウェルカムである」という姿勢を取りながら、腹のなかでは「でもその条件は飲めないでしょうね」ということを前提に、サイバーセキュリティなどは構築されています。これがスタンダードになって来るのかなと思います。中国がこちら側に来るのであれば、あるいは中国企業がこちら側の陣営に入って来るのであれば、それを排除するものではないけれども、「そのハードルを中国にとって高く設定する」というやり方が、最近の流行りになって来ていると思います。
飯田)自由で開かれたインド太平洋というのも、「自由で開かれた国になってくれるのならウェルカムですよ」と言っているわけですものね。
須田)「南シナ海で中国が一方的に権益を主張しないのであれば、一緒にやりましょう」というようなところです。しかし中国としては、それは安全保障上、受け入れられない話でしょうからね。結果的に対立が深まる構図になって行くのかなと思います。
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