護憲派は憲法を「1度死んでも蘇るゾンビのように扱っている」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月22日放送)に政治学者・大和大学准教授の岩田温が出演。菅総理が防衛大学校の卒業式で述べた訓示について解説した。
菅総理、防衛大学校卒業式で訓示
菅総理大臣は3月21日、防衛大学校の卒業式に出席し、自衛隊の最高指揮官として卒業生およそ500人に訓示した。総理はPKOなどの30年前に誰も予測できなかった数々の任務に立派に対応していることに触れ、今後30年についても、「これまでにない課題や脅威が現れ、新たな任務が自衛隊に付与されるのではないか」と述べた。
飯田)30年前はPKOに出すというところでも世論沸騰、という感じになっていましたね。
30年前のPKOのときにも集団的自衛権反対と同じ「我が国の立憲主義が破壊されて憲法が死ぬ」と言っていた護憲派
岩田)集団的自衛権のときに、PKOのときのことについて、過去の朝日新聞の記事を全部読んでみたのです。そうしたら、この間の集団的自衛権に反対するのと、同じことを言っているのです。要するに、PKOができて、自衛隊を外国に派遣することになると、「我が国の立憲主義が破壊されて憲法が死ぬ」と言っていたのです。
飯田)憲法が死ぬと。
岩田)それから30年経ってどうなったかと言うと、今度は集団的自衛権で憲法が死ぬと言い始めたのです。護憲派の人たちは、憲法のことを、1回死んでも蘇るゾンビのように扱っているわけです。この間死んだのであれば、もう死んでいるわけなのに、今度また死ぬと。そうすると、30年後、また「憲法が死ぬ」と言っているはずです。新しい任務が付与されるということは、時代の流れですから、当たり前のことです。例えば宇宙の問題にしても、技術は進歩しているわけですから、国を守るためにやることは、いろいろと変わって行くわけです。そのなかにおいて、時代の流れについて行けずに、同じことをしているだけであれば意味がありません。
飯田)そうですね。
今後30年について、これまでにない課題や脅威が現れ、新たな任務が自衛隊に付与されるという総理の話は当然なこと
岩田)これを批判的に取り上げて、「また新しい何かをさせようとしている」と言うのはおかしいわけでして、時代が30年変わって、きょうと同じことを30年後にやり続けるのは無理です。いまから30年前は、携帯電話もスマホもない時代です。時代によって、技術によって国の守り方が変わるのは当たり前のことですから、今回、総理がおっしゃったのは当たり前のことを言っているだけなのです。
飯田)PKOが最初に派遣されたのはカンボジアでしたけれども、中東の湾岸戦争での悔しさのような、あれだけお金を出したのにという話。あの当時は、中東が正面だったけれども、いまは正面が日本の目の前に来ています。
台湾で有事があった場合、日本は台湾を守らなければならない
岩田)そうなのです。台湾の問題に関して、もし台湾有事があったときに、日本は関係ないと、自分の国の平和が一切侵されていないのだから、「どうぞ勝手に中国と台湾でやってください」という無責任なことはできません。もう目の前の問題ですし、シーレーンの問題などを考えると、ある種運命共同体に近いところがあります。自由と民主主義を共有している国家、あるいは地域と言った方がいいかも知れませんが、見捨てるということはあってはならないと思います。
飯田)もう事実上は民主主義で、自分たちで総統を選ぶということを、長いこと続けて来たというところが、台湾にあるということですよね。
岩田)そうなのです。むしろそれを中国は見習うべきなのですけれども、逆に、台湾を自分たちの方に、力尽くで中国共産党の非自由、非民主主義体制に組み込もうとしていることから、自由主義諸国が連携して守らなければいけません。
ずる賢いことをすれば国際社会から信用されなくなる~アメリカとも中国ともうまくやろうという「いいとこ取り」はよくない
飯田)日本は「自由で開かれたインド太平洋」という旗を上げ続けて、今後はこの概念というものが重要になって来るわけですか?
岩田)はい。クアッドにしても、日本だけで中国と1対1で対峙することは、本当に残念なことではありますけれども、経済の規模、人口、それから技術面においても、非常に厳しい。となれば、やはり価値観を同じくする大国同士が連携しなくてはならないと思います。日本のなかには、「いいとこ取り」をしようとする人がいます。中国とも仲よくやりながら、アメリカとも仲よくやろうという、コウモリみたいなことをやっていると、どちらからも嫌われるということになりかねないので、気を付けないといけません。21日の朝日新聞の社説にもありましたけれども、「それが賢いことだ」というようなことを言っていますが、そうではなく、ずる賢い人間は信用されなくなるだけです。国際社会から信用されなくなったら、我が国の存立は危ないと私は考えています。
飯田)まさに同じようにアメリカにつくか中国につくかとして、結果どちらからもそっぽを向かれたという国が、隣にありました。韓国の朴槿恵政権はそれを試しました。
尖閣諸島での有事のときには、日本はまず自分たちで戦わなくてはならない
飯田)今後の日本のあり方として、最終的には、「自分の国は自分で守る」という姿勢は見せなければならないわけですよね。
岩田)もちろんです。同盟国があっても、自分の国を自分で守る意思も気概も持たない国を守ってくれる国なんてありません。尖閣諸島の問題で、「もし中国が攻めて来たらどうする」というときに、多くの人が、「アメリカが来てくれるではないか」と言うけれども、それは間違いです。まずは日本で戦わなければなりません。そのときに、「側面支援をアメリカがしてくれたらありがたい」という程度の話でして、最初から日本の自衛隊は戦わないけれど、「アメリカさん行ってください」と言っても、アメリカ人の方が納得しないですよ。なぜアメリカ人が日本人のために血を流さなくてはならないのだと、それはトランプさんが最初に言っていたことですけれども、こういう常識は当たり前で、我々だってそう思うし、アメリカ人だって思いますよ。「自分の国は自分で守る」と。どこの独立国家でも持っている気概というものを忘れては、国防は成り立たないと思います。
飯田)そのための予算付けや装備が足りるのかと、本当は国会でやるべきですよね。
岩田)防衛大学校の卒業のお話でしたけれども、私の教え子も自衛隊幹部候補生学校というところに一般の大学から行っています。私のゼミ生だった卒業生に聞くと、演習のときの油が足りないから、本当は何キロも行かなくてはならないところを半分にすると言っていました。そんなことがあっていいのだろうかと、強く憤りを感じます。
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