法案・条約で24本のミス~その背景にある伝統的な事情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月26日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。政府が各府省庁による再点検結果を国会に報告したニュースについて解説した。
政府提出法案で、誤りが相次ぐ~法案23本、条約1本、合計24本のミス
政府は3月25日、今国会の政府提出法案で誤りが相次いでいる問題を受け、各府省庁による再点検結果を国会に報告した。新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案など、法案23本、条約1本、合わせて24本にミスが見つかり、関連資料を含めると134件あったということである。
飯田)一時期は野党が審議拒否か、というような報道まで流れましたが。
宮家)もちろん、公式の文書を国会に法案として提出するわけですから、間違いがあってはいけないのは当然です。ですから、官房長官、総理がお詫びをおっしゃるのは当たり前なのです。ただ、そうは言っても、私も似たような作業をやったことがあるので、是非聞いて欲しいのですが、この24本、条約は外務省の問題なので1本は置いておいて、かなり多くがコロナと関係があるとしますよね。そうすると、例えばですが条約で「WTOの何とか」というものだったら、全体で何千ページにもなるのです。少なくとも何百ページなのです。コロナ関連の法案がどれくらいかはわかりませんが、最低数十、数百ページあってもおかしくありません。そして、普通、この作業をやるのは担当官なのです。他の人たちはわかりませんから。
飯田)細分化されていますからね。
担当官は国会の質問の答えをつくりながら、法案も提出しなくてはならない
宮家)厚生労働省のなかにもいろいろな部局があるわけですが、この問題に関して言うと、担当の課長や、担当官や課長補佐など、本当に作業するのはおそらく数人だと思います。それが仮に10本~20本の法案を出せと言われるとしましょう。しかし、国会で質問が来れば、そのためには当然徹夜で答えをつくるわけです。徹夜で答えをつくりながら、法案も提出しなくてはいけない。その公式文書の読み合わせもすべてやらなくてはいけない。その読み合わせの前に、内閣法制局で何週間もかけて文章を詰めて、やっとプリントして、そうしたらまた変わった箇所が出て、どんどん変わって行くのですよ。恐らく、国会提出は明日だからとにかく早く印刷しようということになって、ミスが起きたのでしょうね。
飯田)あるかも知れませんね。
宮家)それを私は正当化することはできません。しかし、いまのような仕事のやり方でやっている限りは、どうしてもミスを0にはできないかも知れません。そこは、私も実際にやったことがありますからわかるのですが、本当に細心の注意を払います。勿論それは時間があればできます。しかし、時間がないなかで文書をつくり、意識朦朧で国会に飛んで行くことだって私も昔は何度もありましたから、少しかわいそうな気がしないでもない。私も同じような立場に置かれて、おまえは完璧にできたかと聞かれれば、私は「体力が続けば、できただろう」と思います。
スタッフを充実させて、国会の審議だけでなく、その周りの努力もするべき
飯田)体力の問題になって来る。官僚の方々、特に旧行政管理の方の流れを汲むキャリアの人に話を聞くと、「霞が関の働き方改革は、国会が変わらなければできない」と。それに従属的に呼び出しをされて、説明をするなど、もちろん大事な仕事ですが、そういうものが積み重なっているから、「こちらだけ人を減らすというわけにはいかないのだ」と言います。
宮家)気持ちはわかりますけれども、でも、それを言ってはダメなのです。なぜかと言えば、国会は民主主義を担保しているわけですから、そのために必要なら我々は何度でも徹夜します。それは国会のためだけれど、最終的には民主主義を守るためです。官僚にはそのような気概がなければダメです。「国会が悪い」などと言うのは簡単ですが、話はそんなに簡単ではありません。
飯田)最近は、野党がヒアリングなどと言って、公式でないところでも出て来るのに負担がかかっているらしいという話はあります。
宮家)もう少しスタッフを充実させて、国会の審議だけでなく、その周りの重要な仕事にも努力をした方がいいです。
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