自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月31日放送)に安全保障アナリストで慶応義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮が出演。「自衛隊はドローンを配備せよ」という自身の主張について解説した。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

災害ドローン運用を開始前に、ドローンの操縦訓練を行う消防隊員ら=2019年9月27日 広島市佐伯区 写真提供:産経新聞社

自衛隊にドローンを配備せよ

「自衛隊は無人戦闘機・武装ドローンを導入すべきである」というのは、安全保障アナリストで慶応義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮氏の主張である。防衛省は、2035年にもドローンを配備する方針であることを発表している。

飯田)ドローンと言うと、イスラエルが思い出されますが、インドネシアも自前で開発しているということです。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

東京スカイツリーで行われたドローンによる警備システムの実証実験=2020年7月30日午前、東京都墨田区 写真提供:産経新聞社

アゼルバイジャンとアルメニアの戦争で活躍したドローン「バイラクタルTB2」

部谷)そうですね。トルコもアゼルバイジャンとアルメニアの戦争で、「バイラクタルTB2」という24時間飛び続けるドローンを使いました。そこから対戦車ミサイルを発射して戦車を次々と潰すのです。トルコが言うには、この機種だけで自衛隊で言うところの1個師団ほどの戦力を撃破したということです。

飯田)1個師団ですか!

部谷)戦車何百両とか、そのレベルです。よく「ドローンは電波妨害すればイチコロ」ということを聞きますが、電波妨害をしているものも10機ほど破壊したという話です。カザフスタンなども攻撃用ドローンを自国生産して、システムをつくっています。いろいろな国でやっているのです。

飯田)ドローンの活用というと、アメリカのような大国がやるものだと思っていましたが、むしろ、そうではない国がその有用性を認めているのですか?

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

シリア内戦新局面 トルコとロシア、実益確保 23日、トルコ国境に接するシリア北部テルアビヤドに立つトルコ軍の兵士ら(ロイター=共同)=2019年10月23日 写真提供:共同通信社

「無秩序な拡散と無秩序な運用が行われている」ドローン

部谷)国連の特別報告者がドローンについて調べていて、「いまは第2の黄金期を迎えている」と言うのです。第1期は一部の大国が開発して使っていたのですが、それが多くの国々や非国家主体に拡散している。「無秩序な拡散と無秩序な運用が行われているので大変なことだ」と言っています。

飯田)なるほど。

部谷)携帯電話は、先進国で広がりましたが、いまアフリカで盛んに使われています。それと同じです。

飯田)蛙飛び現象のようなことですね。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

中国は2020年10月14日午前、広東省深セン市で深セン経済特区〈SEZ〉設置40周年を祝う盛大な大会を開いた。習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席がこれに出席し、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕写真提供:時事通信社

スマートフォンの技術が軍事転用されて武装ドローンに

部谷)アメリカの人は、ドローンを「空飛ぶスマートフォン」と呼んでいます。飛行機からパイロットを降ろしたのではないと。

飯田)違うのですね。

部谷)違います。もともとドローンは軍用で、標的機から始まったのですが、いま民間技術が飲み込みつつあります。もともとは深圳から出て来たのです。深圳にはスマートフォンの工場があって、その余った部品でつくったのがドローンなのです。ドローンはWi-Fiで操作してカメラが付いていて、LEDも付いていて、センサーも付いている。センサーはスマートフォンと一緒です。加速度センサーが付いていて、それでバランスを取っています。そしてアプリやGPSで遠隔で動かす。お手軽に入るスマートフォンの技術が、軍事転用されているのです。だから、いろいろな国で使えているのです。

飯田)しかも既存のプラットフォームはすでにあるので、簡単に使えてしまう。

部谷)そうなのです。民生品で使っても、そこそこ行けるので、すぐ買えて、人間も乗っていないですし、下手な偵察機よりも気軽に使えます。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

ホワイトハウスで記者会見するバイデン米大統領(アメリカ・ワシントン)=2021年3月25日 AFP=時事 写真提供:時事通信

ドローンによって朝鮮戦争以来の空爆を受けたアメリカ軍

飯田)まずは偵察で使ってから、ということですか?

部谷)そこからさらに爆弾を落としたり、手榴弾を落としたりということを武装勢力はやっています。

飯田)正規軍ではなく、そのような武装勢力などが使っていると。

部谷)はい。米軍もドローンの攻撃に非常に衝撃を受けています。米軍の指揮官は「朝鮮戦争以来の空爆を受けた」と言っているのです。米軍は朝鮮戦争以来、空爆を受けていません。

飯田)なるほど。ベトナム戦争を戦いましたが。

部谷)ベトナム戦争は大砲を撃つだけでしたからね。それがいま、田舎の武装勢力は10年前では考えられなかったような空軍能力を、戦術レベルでは持っているのです。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

陸自・中部方面隊創隊60周年記念行事 マスク姿で行進する自衛隊員ら=2020年10月4日午前、兵庫県伊丹市の陸上自衛隊伊丹駐屯地 写真提供:産経新聞社

新たな戦闘空間をつくったドローン~撃破することが難しい

飯田)空軍の大事さというものが第二次世界大戦後に認められ、国連憲章のなかにも「各国は空軍を整備すべきだ」というようなことが書かれるぐらいに、その脅威とともに意識され出しました。それがドローンによって手軽になって来ている。これは相当なパラダイムシフトですね。

部谷)そうなのです。最近、「空地中間領域」という新しい戦闘空間があるということについて、米空軍の方が論文で書いています。ある人は、空域は上と下で分かれていると。「F35などが飛んでいる空域と、ドローンが飛んでいる空間は、上だけ抑えても意味がないのだ」と言っています。確かに上の空域をF35で抑えても、下の方で殺人ドローンが飛んでいたら意味がないのです。

飯田)そっちで痛手を被ってしまう。

部谷)別のアメリカ軍の偉い人は、これを「空岸」と言っています。海岸が海と地上の間であるように、空と地上の間である空岸があって、そこにドローンが飛んでいる。

飯田)その境界領域のことを空岸と言う。

部谷)サイバーなどと同じく、ドローン対処が難しいのはそこなのです。新しい戦闘空間ができてしまった。

飯田)それを戦闘機で守るには、あまりにも構えが大き過ぎて対応ができない。

部谷)費用対効果もよくありません。地上から落とそうとしても、レーダーに映りにくいのです。レーダーとドローンの間に山やビルなどがありますから。

飯田)高度が低いので、そのような遮蔽物で容易に隠れられる。

部谷)ドローン自体も小さくてレーダーに映りにくい。これは実戦に参加している人も言っています。シリアに攻め込んだアメリカ兵も、「米軍は高度1000メートル以下の制空権を持っていなかった、イスラム国(IS)に獲られていた」と会議で発表しています。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

「福島ロボットテストフィールド」で行われたドローンの実証実験=2019年3月1日、福島県南相馬市 写真提供:共同通信社

鳥や電波しか飛んでいなかった空間を使うのがドローンの意義

飯田)そう考えると、日本はその空間ががら空きですね。

部谷)がら空きですね。私の上司の先生も、「鳥や電波や虫しか飛んでいなかった空間を使うのがドローンの意義だ」と言っています。それは軍においても同じことが起きているのです。空き空間の有効活用ですね。

飯田)日本では「ドローンを航空法でどうするか」というような話をしていますよね。航空法の範囲外だから、ここは自由に飛ばしていいけれど、総理官邸のような重要な施設の周りは飛ばさないでね、と。

部谷)あとは人口密集地ですね。

飯田)こんなものでは足りないし、守るためにはどうするのか、ということですね。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

日米共同統合演習「キーン・ソード」護衛艦「かが」の甲板で記者会見する、防衛省の山崎幸二・統合幕僚長=2020年10月26日 写真提供:産経新聞社

ドローンを使い、そのノウハウを蓄積するべき

部谷)そうですし、活用も進まないです。外国では産業用とホビードローンの規制を分けています。ホビードローンは厳しくするけれども、産業用は緩くする。

飯田)そこからの技術派生を安全保障にも持って行く。日本はこれだけ災害も多いではないですか。そうすると、偵察機能などはそこに使えますよね。

部谷)使えます。いま自衛隊が災害用ドローンを一生懸命やっています。いいことだと思います。横から見る情報と上から見る情報とではまったく違います。

飯田)その辺もスキームとしては活用しながら、しかしもっとやらなければいけないということですか?

部谷)やらなければいけませんし、実際、武装ドローンがやって来た場合、どのように対処するのか。日本人の悪い癖なのですが、実際に入れてどう使おうか、というのではなく、「入れるべきか、入れないべきか」となってしまいます。戦前のレーダーと一緒なのです。レーダーも、日本には八木アンテナやマグネトロンなどの技術がありましたが、「レーダーは扱えるか扱えないか」という机上の議論を延々とやっているうちに、米軍がレーダーを使って来ました。

飯田)「何で米軍は我々の位置を知っているのだ、まさかレーダーを使っているのか」みたいな。

部谷)日本が航空機を入れたときもそうだったのですが、いろいろなものを入れてみて、そして使ってみてノウハウを貯めて行くべきだと思います。よく、「ドローンの技術は完成してから入れればいい」と言う人もいるのですが、「パソコンの技術が完成してからパソコンを習おうという人は、パソコンの使い方がわかりますか」という話にもなります。

自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」

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規制を緩和しないと国内メーカーは成長しない

飯田)今度はこれをどのように配備するのかということなのですが、いまはホビー用のドローンだと中国製のものが並んでいます。

部谷)中国製のドローンは性能がいいのです。

飯田)国内メーカーはどうなのですか?

部谷)国内メーカーも頑張っていて、いいものはあるのですが、規制を緩和しないと成長しないですね。「地方でないと使えない」ということでは難しいです。東京の方が市場は大きいですから。

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