自衛隊がドローンを配備すべきである「これだけの理由」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月31日放送)に安全保障アナリストで慶応義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮が出演。「自衛隊はドローンを配備せよ」という自身の主張について解説した。
自衛隊にドローンを配備せよ
「自衛隊は無人戦闘機・武装ドローンを導入すべきである」というのは、安全保障アナリストで慶応義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮氏の主張である。防衛省は、2035年にもドローンを配備する方針であることを発表している。
飯田)ドローンと言うと、イスラエルが思い出されますが、インドネシアも自前で開発しているということです。
アゼルバイジャンとアルメニアの戦争で活躍したドローン「バイラクタルTB2」
部谷)そうですね。トルコもアゼルバイジャンとアルメニアの戦争で、「バイラクタルTB2」という24時間飛び続けるドローンを使いました。そこから対戦車ミサイルを発射して戦車を次々と潰すのです。トルコが言うには、この機種だけで自衛隊で言うところの1個師団ほどの戦力を撃破したということです。
飯田)1個師団ですか!
部谷)戦車何百両とか、そのレベルです。よく「ドローンは電波妨害すればイチコロ」ということを聞きますが、電波妨害をしているものも10機ほど破壊したという話です。カザフスタンなども攻撃用ドローンを自国生産して、システムをつくっています。いろいろな国でやっているのです。
飯田)ドローンの活用というと、アメリカのような大国がやるものだと思っていましたが、むしろ、そうではない国がその有用性を認めているのですか?
「無秩序な拡散と無秩序な運用が行われている」ドローン
部谷)国連の特別報告者がドローンについて調べていて、「いまは第2の黄金期を迎えている」と言うのです。第1期は一部の大国が開発して使っていたのですが、それが多くの国々や非国家主体に拡散している。「無秩序な拡散と無秩序な運用が行われているので大変なことだ」と言っています。
飯田)なるほど。
部谷)携帯電話は、先進国で広がりましたが、いまアフリカで盛んに使われています。それと同じです。
飯田)蛙飛び現象のようなことですね。
スマートフォンの技術が軍事転用されて武装ドローンに
部谷)アメリカの人は、ドローンを「空飛ぶスマートフォン」と呼んでいます。飛行機からパイロットを降ろしたのではないと。
飯田)違うのですね。
部谷)違います。もともとドローンは軍用で、標的機から始まったのですが、いま民間技術が飲み込みつつあります。もともとは深圳から出て来たのです。深圳にはスマートフォンの工場があって、その余った部品でつくったのがドローンなのです。ドローンはWi-Fiで操作してカメラが付いていて、LEDも付いていて、センサーも付いている。センサーはスマートフォンと一緒です。加速度センサーが付いていて、それでバランスを取っています。そしてアプリやGPSで遠隔で動かす。お手軽に入るスマートフォンの技術が、軍事転用されているのです。だから、いろいろな国で使えているのです。
飯田)しかも既存のプラットフォームはすでにあるので、簡単に使えてしまう。
部谷)そうなのです。民生品で使っても、そこそこ行けるので、すぐ買えて、人間も乗っていないですし、下手な偵察機よりも気軽に使えます。
ドローンによって朝鮮戦争以来の空爆を受けたアメリカ軍
飯田)まずは偵察で使ってから、ということですか?
部谷)そこからさらに爆弾を落としたり、手榴弾を落としたりということを武装勢力はやっています。
飯田)正規軍ではなく、そのような武装勢力などが使っていると。
部谷)はい。米軍もドローンの攻撃に非常に衝撃を受けています。米軍の指揮官は「朝鮮戦争以来の空爆を受けた」と言っているのです。米軍は朝鮮戦争以来、空爆を受けていません。
飯田)なるほど。ベトナム戦争を戦いましたが。
部谷)ベトナム戦争は大砲を撃つだけでしたからね。それがいま、田舎の武装勢力は10年前では考えられなかったような空軍能力を、戦術レベルでは持っているのです。
新たな戦闘空間をつくったドローン~撃破することが難しい
飯田)空軍の大事さというものが第二次世界大戦後に認められ、国連憲章のなかにも「各国は空軍を整備すべきだ」というようなことが書かれるぐらいに、その脅威とともに意識され出しました。それがドローンによって手軽になって来ている。これは相当なパラダイムシフトですね。
部谷)そうなのです。最近、「空地中間領域」という新しい戦闘空間があるということについて、米空軍の方が論文で書いています。ある人は、空域は上と下で分かれていると。「F35などが飛んでいる空域と、ドローンが飛んでいる空間は、上だけ抑えても意味がないのだ」と言っています。確かに上の空域をF35で抑えても、下の方で殺人ドローンが飛んでいたら意味がないのです。
飯田)そっちで痛手を被ってしまう。
部谷)別のアメリカ軍の偉い人は、これを「空岸」と言っています。海岸が海と地上の間であるように、空と地上の間である空岸があって、そこにドローンが飛んでいる。
飯田)その境界領域のことを空岸と言う。
部谷)サイバーなどと同じく、ドローン対処が難しいのはそこなのです。新しい戦闘空間ができてしまった。
飯田)それを戦闘機で守るには、あまりにも構えが大き過ぎて対応ができない。
部谷)費用対効果もよくありません。地上から落とそうとしても、レーダーに映りにくいのです。レーダーとドローンの間に山やビルなどがありますから。
飯田)高度が低いので、そのような遮蔽物で容易に隠れられる。
部谷)ドローン自体も小さくてレーダーに映りにくい。これは実戦に参加している人も言っています。シリアに攻め込んだアメリカ兵も、「米軍は高度1000メートル以下の制空権を持っていなかった、イスラム国(IS)に獲られていた」と会議で発表しています。
鳥や電波しか飛んでいなかった空間を使うのがドローンの意義
飯田)そう考えると、日本はその空間ががら空きですね。
部谷)がら空きですね。私の上司の先生も、「鳥や電波や虫しか飛んでいなかった空間を使うのがドローンの意義だ」と言っています。それは軍においても同じことが起きているのです。空き空間の有効活用ですね。
飯田)日本では「ドローンを航空法でどうするか」というような話をしていますよね。航空法の範囲外だから、ここは自由に飛ばしていいけれど、総理官邸のような重要な施設の周りは飛ばさないでね、と。
部谷)あとは人口密集地ですね。
飯田)こんなものでは足りないし、守るためにはどうするのか、ということですね。
ドローンを使い、そのノウハウを蓄積するべき
部谷)そうですし、活用も進まないです。外国では産業用とホビードローンの規制を分けています。ホビードローンは厳しくするけれども、産業用は緩くする。
飯田)そこからの技術派生を安全保障にも持って行く。日本はこれだけ災害も多いではないですか。そうすると、偵察機能などはそこに使えますよね。
部谷)使えます。いま自衛隊が災害用ドローンを一生懸命やっています。いいことだと思います。横から見る情報と上から見る情報とではまったく違います。
飯田)その辺もスキームとしては活用しながら、しかしもっとやらなければいけないということですか?
部谷)やらなければいけませんし、実際、武装ドローンがやって来た場合、どのように対処するのか。日本人の悪い癖なのですが、実際に入れてどう使おうか、というのではなく、「入れるべきか、入れないべきか」となってしまいます。戦前のレーダーと一緒なのです。レーダーも、日本には八木アンテナやマグネトロンなどの技術がありましたが、「レーダーは扱えるか扱えないか」という机上の議論を延々とやっているうちに、米軍がレーダーを使って来ました。
飯田)「何で米軍は我々の位置を知っているのだ、まさかレーダーを使っているのか」みたいな。
部谷)日本が航空機を入れたときもそうだったのですが、いろいろなものを入れてみて、そして使ってみてノウハウを貯めて行くべきだと思います。よく、「ドローンの技術は完成してから入れればいい」と言う人もいるのですが、「パソコンの技術が完成してからパソコンを習おうという人は、パソコンの使い方がわかりますか」という話にもなります。
規制を緩和しないと国内メーカーは成長しない
飯田)今度はこれをどのように配備するのかということなのですが、いまはホビー用のドローンだと中国製のものが並んでいます。
部谷)中国製のドローンは性能がいいのです。
飯田)国内メーカーはどうなのですか?
部谷)国内メーカーも頑張っていて、いいものはあるのですが、規制を緩和しないと成長しないですね。「地方でないと使えない」ということでは難しいです。東京の方が市場は大きいですから。
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