バイデン政権の米国内向けの事情なのでは~米軍アフガン完全撤退
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月16日放送)に国際政治学者・慶應義塾大学教授の神保謙が出演。アフガニスタンから米軍を完全撤退させるというバイデン大統領の発表について解説した。
バイデン大統領がアメリカ軍のアフガン完全撤退を表明
アメリカのバイデン大統領は4月14日、アメリカ同時多発テロから20年となる2021年9月11日までに、アフガニスタンからアメリカ軍を全面的に撤退させると発表した。バイデン大統領は、アフガンに留まる理由が「ますます不明確になった」とし、アフガンを再建できるのはアメリカの国民だけだと指摘。「アメリカ史上最長の戦争を終わらせるときが来た」と述べている。
飯田)ホワイトハウスで演説し、発表したということです。これを受けて、NATOやオーストラリアも撤兵を表明しています。
2020年「ドーハ合意」では撤収には「攻撃停止か和平交渉進展」の条件付きであった
神保)これはかなり気になります。トランプ政権は約2年前、2018年くらいからタリバンとの和平協議を開始して、去年(2020年)2月にタリバンと「ドーハ合意」という合意を結んでいます。この合意によると、今年の5月までに米軍を撤収するという約束をしていて、いまのところ、1万3000人くらいいた駐在米軍が2500人くらいまでに減っているのですが、最終的にこれをゼロにするかどうかというのは、条件付きだったのです。タリバンの攻撃が停止するとか、和平交渉が進展するということなのですけれども。
飯田)条件付きで。
バイデン政権が「無条件で撤退」と一方的に表明~中国以外のグローバルな安全保障をどのくらい責任を持って見ているのか疑問
神保)これがバイデン政権に引き継がれ、5月までの撤退というのは近過ぎて難しいということなのですが、9月11日のテロから、ちょうど20年ですよね。この期限を切って、実は「条件をつけないで撤退する」ということを、一方的に表明しているのです。私は「これはアメリカ国内向けの事情なのではないか」と思うわけです。やや、バイデン外交の危うさを感じてしまいます。本来であれば、タリバンとの和平交渉をきちんと決着させ、「移行政権を成立させるなりして、安定を見極めてやる」という条件を追求するのかと思いきや、「アフガンに留まる理由がますます不明確になった」ということです。今年に入ってから、治安は悪化していますし、テロも頻発していて、現アフガン政権とタリバンとの合意がそう簡単にできるとは思えないわけです。タリバンは、もちろん外国駐留勢力がいる間はそういう話はできないと言っているのですが、退いたからと言って、平和的に何か話が進むかというと、そんな甘い見通しは立てられないということを考えれば、バイデンさんは中国政策はこれだけきっちりと強硬でやっていますけれど、「グローバルな安全保障をどのくらい責任を持って見ているのか」というところは気になります。
飯田)「中所得層のための外交」というものを言って来たところを考えると、全体の安定よりも国内の人気取りのようなところに引っ張られてしまうということが、いろいろな面で出ていますか?
神保)もちろん、アメリカも国内政治の延長が外交に現れるということで、アメリカ国内では、こういう問題にあまり立ち入りたくないということは、オバマ時代からありました。それにしても、「アメリカ軍の関与をどのように名誉ある形で撤退するか」ということは考えるべきだと思います。
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