いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月14日放送)に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。4月13日に行われた日本とドイツの「2プラス2」について解説した。

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

沖縄県・尖閣諸島の南小島(右奥)付近を航行する中国海警局の船=2021年2月15日(仲間均・石垣市議撮影) 写真提供:共同通信社

日本とドイツ、4月13日に初の2プラス2協議開催

日本とドイツの初の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が4月13日、テレビ会議方式で開かれ、日本側からは茂木外務大臣と岸防衛大臣が、ドイツ側からはマース外相とクランプカレンバウアー国防相が出席した。日本とドイツ両国は各地で覇権主義的な行動を強める中国への懸念を共有し、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、安全保障面での連携を強化して行くことで一致した。

飯田)ドイツ側は、この夏にもフリゲート艦をインド太平洋地域へ派遣するということも発表しています。東アジアへの興味というものがヨーロッパでも強まっているということでしょうか?

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

中国政府による人権侵害に抗議の声を挙げる、日本で暮らすウイグルやモンゴル、香港など少数民族の女性たち=2021年3月7日午後、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

ウイグルの人権問題がヨーロッパでも話題に

高橋)ウイグルの人権問題というのがヨーロッパでも話題になっています。そして2022年2月には、冬季オリンピックが北京で開催されるではないですか。

飯田)そうですね。

高橋)その平和な祭典とウイグルの話がヨーロッパに広がりつつあるのです。アメリカはバイデン政権になってからも、中国に対して「体制の問題だ」と言って、民主主義対専制主義というわかりやすい構図を打ち出しています。ヨーロッパも昔はビジネス的に中国に依存していたのですが、ウイグル問題やオリンピックの話が出て来たので、人権や民主主義の価値観に揺れているのだと思います。

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

記者会見したドイツのメルケル首相=2020年12月13日、ベルリンの首相府(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

東ドイツ出身のメルケル首相は社会主義や共産主義に対する感覚が我々とは少し違う

飯田)ただドイツに関しては、この2プラス2をやる直前に、メルケル首相が習近平氏と電話会談をしていますね。

高橋)メルケルさんは東ドイツの出身ですから、DNAが西側の立身国とはどこか違うのです。若いころは東ドイツにいたので、社会主義や共産主義に対する感覚が我々とは少し違うのかも知れません。生まれ育ったところは、DNAに残るものがあるのでしょうね。

飯田)もともとの原体験のようなものとして。

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

「五大要求」を掲げて香港中心部をデモ行進する市民ら=2019年12月8日(共同) 写真提供:共同通信社

香港問題で中国に裏切られたイギリス~人権問題から中国を注視するヨーロッパ

高橋)イギリスも4~5年前のキャメロンさんのときなどは中国といい関係だったのですが、香港の問題で一転しました。香港の問題では、イギリスは裏切られたと思っているでしょう。

飯田)中英共同声明のなかで、返還後50年間は一国二制度を保障すると。

高橋)50年と言っていたのが二十数年で終わってしまったわけですから。

飯田)民主制が実質終わってしまったようなものですからね。

高橋)完全に終わってしまいました。またイギリスはEUから離れたので、TPPに加わりたいのです。すると東アジアを意識せざるを得ないのです。いろいろな国でそれぞれ事情があるとは思いますが、中国は世界のなかで異質だという感覚が出て来ています。民主主義が負けてしまったら大変だということは各国とも共通にあるので、「人権問題で中国を注視する」ということが出て来たのだと思います。ヨーロッパは特にそのような気がします。

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

沖縄県・尖閣諸島 手前から南小島、北小島、魚釣島 海上自衛隊の哨戒機「P-3C」 から=2011年10月13日 写真提供:産経新聞社

気候変動サミットへ向けた調整で訪中するケリー米特使

飯田)アメリカもバイデン政権になって、中国に対して宥和的に変わるのではないかと言われていましたが、いまのところはそのようなことはない。

高橋)いまのところはさすがに変われないですよね。ただ、ケリーさんが中国に行きますから、わからないですけれどね。

飯田)気候変動担当の特使ということで、14日から中国に行くということです。

高橋)気候変動のことになると、中国の協力を求めたいということで、価値観の話を犠牲にする可能性はありますよね。

飯田)前々からそれをアメリカで記者からいろいろと聞かれているので、「そのようなことはない」と必死に火消しをしていましたが。

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

台北市の総統府で記者会見する蔡英文総統=2020年1月15日(共同) 写真提供:共同通信社

日本はいろいろな国と「2プラス2」をするべき

飯田)日本としては、今後、各国との連携をアピールすることも大事になりますか?

高橋)日本の場合はクアッドということで中国の方にもつくっていて、TPPもつくっています。そのようなところに、いろいろな国を入れて行くというのはいいことです。TPPにイギリスが入って来るのも、いいことだと思いますし、これで台湾とアメリカが入れば磐石ですよね。あとはクアッドをもう少し強固にして、集団的安全保障のようなところに持って行ければ、もっといいのですが、それはなかなか大変でしょうね。

飯田)NATOのような枠組みに。

高橋)なれるといいのですけれどね。しかし日本の憲法では難しいと思います。すると2プラス2をやって、それを広げて行くということです。2プラス2はとりあえずいまの枠組みでもできます。なるべくいろいろな国でやるというのが、いまの日本にできることではないでしょうか。

飯田)プラスして演習などを多国間でもやるというようなことになるのでしょうか?

高橋)そうですね。日米やクアッド、イギリス・フランス・ドイツとの2プラス2。そこに演習を加えることができればいい。それしかいまはやりようがないですから。もちろん日本で防衛費をきちんと確保しなければいけません。いくら話をしたって、「守ってくれるか、くれないか」という話になれば、「まずは日本が自分で守れ」と言われるに決まっているのです。

飯田)まず行動で示してもらわないと、ということになる。

高橋)自分でやっているときに、いろいろな国が味方をしてくれるというのが2プラス2なのです。ですので、まずは自分でやらなければいけないのですが、最後のときにいろいろな国が味方をしてくれる、ということのためにいろいろな国でやっておく方がいいと思います。

いま目前に迫る台湾と尖閣の有事~日本が採るべき対中戦略

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 〔新華社=中国通信〕 中国通信/時事通信

台湾と尖閣諸島の有事に備え、台湾と中国に備える体制を取る

飯田)外交や安全保障の部分に加えて、経済安全保障ということもいろいろと言われています。半導体についても日米首脳会談でもやると。

高橋)やるでしょうね。日本の半導体は、量は多いのですが、汎用性のものばかりなのです。同じ半導体でもいろいろなレベルのものがあるので、技術協力できるところは一生懸命やる。いざというときに、サプライが困らないように日米でやったり。これに台湾を入れるというのもあるとは思います。台湾は半導体について言えば、重要なパートナーなのです。

飯田)アメリカの半導体の業界団体が、13日辺りにも記事などで出ていましたが、台湾が1年間ぐらい止まったら50兆円ぐらい吹っ飛んでしまうと。

高橋)大変ですよ。ですから台湾がキーパーソンになるのです。台湾は台湾で守ってあげなくてはならない。TPPには入ってもらった方がいいとは思いますが。

飯田)その辺も含めて、いままでは国際分業という形でやって来たところが、台湾は特に台湾海峡の話が出ています。そのなかでは、地政学リスクというものも意識しなければいけない。

高橋)尖閣諸島を守ることと台湾を守ることは一緒なのです。台湾と尖閣諸島は中国から見れば一体ですから。台湾と一緒になって中国に対する体制を取らなければいけません。TPPのようなものをきっかけにしながら、なるべく多国間のなかで話をして、あとは2国間でやる。

飯田)いまのままというよりは、きちっと備えておかないと枠組み的にもいけない。

高橋)従来のままでいいというわけには行かないですよね。台湾と尖閣諸島の有事というのは目の前に迫っていると思います。これは核心的利益でウイグルをやって、南シナ海をやって、香港をやったのですから、次は台湾と尖閣諸島に来ないはずがありません。

飯田)太平洋軍司令官も「6年以内だ」と言っています。

高橋)中国の経済発展も今後は行き詰まると思います。これから「10年の間でブレイクスルーしないと大変なことになる」という中国側の事情もあると思います。

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