ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月26日放送)に元内閣官房参与で前駐スイス大使、現TMI総合法律事務所顧問の本田悦朗が出演。米バイデン大統領が主催した気候変動サミットについて解説した。
気候変動サミット、アメリカと中国が協力の姿勢
アメリカのバイデン大統領が主催した気候変動サミットが、4月22日~23日の2日間、オンラインで開催された。アメリカは2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる新たな目標を表明。中国の習近平国家主席は、気候変動対策でアメリカと協力して行く姿勢を示した。
飯田)米中関係は対立していますけれども、ここでは一定の協力ということが報じられています。
どこかで中国との協調の道を探るバイデン大統領
本田)米中関係は、中国が大きなモンスターのようになって来ましたので、大変難しい状況になって来た。ですから、単に貿易戦争ではなくて、覇権争い、または世界の貿易経済取引ルールを誰がつくるのかという問題、さらにはイデオロギー問題と。独裁体制がいいのか、民主主義、人権尊重、法の支配がいいのかという、体制間の争いにまで発展して来たのです。トランプ前大統領は中国に対して強硬な態度を取り、「自分から譲歩するつもりはない」ということをおっしゃっていました。バイデンさんは、トランプさんのやり方を基本的に受け継いではいるのですが、「どこかで協調する道を探そう」ということも探っています。そこで最初にアプローチしたのが気候変動問題です。ここは協調できると。世界最大のCO2排出国は中国ですから、中国を何とかしないかぎり、他の国がいくら努力してもあまり変わらないのです。
地球温暖化はCO2が主犯ではない
本田)そういう意味では非常にいい点に着目したと思います。ただ、私個人の意見を申し上げますと、地球温暖化、気候変動という観点からすると、実はCO2が主犯ではないと思っております。私は科学者ではないので、自分で証拠を証明するわけにはいかないのですが、そう言っている信頼できる学者が多くいます。CO2は産業革命以降、増える一方ですが、世界の気温は上がったり下がったりしているのです。よく、ホッキョクグマが絶滅危惧種であるとか、氷河が後退しているということが言われます。しかし、それはすべて別の原因で、実際ホッキョクグマは増えています。氷が溶けても海水面の高さは変わりません。もちろん陸の上に積んである氷が落ちると上がりますけれども、海に浮かんでいる氷が溶けても海水面は変わらない。
飯田)質量保存の法則ですものね。
本田)それはアルキメデスの原理で、みんな忘れているかも知れませんが、中学生でも知っている原理なのです。温暖化するからツバルが沈むということはありません。むしろツバルは地盤沈下している、そちらの方が問題なのです。ですから、冷静に考えると地球温暖化は、確かに徐々に、ものすごくわずかに温暖化していますが、その主犯は水蒸気、つまり雲です。雲ができると気温が下がります。雲ができるかできないかというのは太陽の電磁波活動です。黒点が多いときは太陽の活動が活発化しているということなのです。
飯田)なるほど。
世界のルールがCO2を減らすことを前提にできつつある
本田)本当の理由は違うところにあるのですが、みんなCO2を減らすということを大きな目標にしています。そうなると、そこには必ず利権が生まれるのです。これは、政策ならば何でもそうなのですが、この政策をやろうと決めると、そこから利益を得ようとする人がたくさん群がりますので、なかなか方向転換が難しい。かつ、世界の取引ルールが二酸化炭素を減らそうということを前提にできてしまうのです。
飯田)世界の取引ルール。
本田)例えば炭素税がそうです。それから、排出権取引制度もそうです。ありとあらゆる制度が二酸化炭素を減らそうという方向で構築されてしまうものですから、自動車の主流も将来は電気自動車になるので、世界最高のガソリン自動車をつくったとしても売れない可能性があるのです。
飯田)ガソリン自動車では。
本田)日本はすべて1から積み上げて来ています。素晴らしいガソリン自動車、素晴らしいハイブリッドをつくり、その上に電気自動車です。しかし、中国は電気自動車だけを直接開発してしまうのです。これはリープフロッグと言って、カエル飛びのようにピョンピョンと上まで行ってしまうと。日本は下からすべてやっていますから、その辺りでは少し資源がもったいないのですが、自動車メーカーも世界の流れに合わせなければなりません。
事実はどうであれ、日本もルールのなかで産業を発展させて行かなくてはならない
飯田)悔しいところは、我々は技術を積み上げでたくさん持っているにも関わらず、ルールづくりで遅れを取ると、それだけですべてが吹っ飛んでしまうというのは、何ともやるせないところがありますが、これはもう仕方がないということでしょうか?
本田)仕方がないと諦めるより、できるかぎり日本がこれまで育てて来たモデルが世界の標準になるように努力を続けなくてはいけない。実際にいろいろな分野で日本のやり方がグローバルスタンダードになっていることが多いと思いますが、地球温暖化については、日本の学者でも意見が分かれるのです。気象学者の方はCO2を重視するのですが、地球物理学者の方は太陽の活動に原因を求めるという傾向があります。本当のところはわからないのですが、歴史的な事実、何万年、何千万年という話ですから、ここ100年~200年を見ても仕方がないのです。しかし、残念ながら流れはできているので、そこはきっちり日本もルールのなかで産業を発展させて行かなくてはいけないのは事実だと思います。
「中国はフェアではない」という認識が世界中に広がっている
飯田)先日トヨタが水素を燃料とした、燃料電池ではなく内燃機関を使うという技術で、耐久レースに参戦するという報道が出ました。日本もいろいろな技術を持っていますよね。
本田)そういう技術が一部でも中国に対する輸出に当てられてしまう。または中国においてトヨタがそういう新技術を開発した際、それが場合によっては軍事技術に転用されるかも知れないというのが恐ろしいですね。彼らは技術を盗みます。黙って自分の技術として活用してしまう。「中国はフェアではない」という認識が世界中に広まっています。
飯田)そうですね。
本田)つい最近までヨーロッパは、「中国は素晴らしいビジネスパートナー」だと思っていたのですが、最近は技術が盗まれているのではないかと非常に懐疑的です。また軍事技術に転用されているのではないかという動きもあります。最近締結されたEUと中国の投資協定でも、EUはまだ批准していないのではないですか。日本も入っていますが、RCEPという貿易協定です。これも日本はまだ批准していません。この辺りも要注意です。どこまで中国が国際ルールに従うのかと。中国は「国際ルールには従わない」と、いろいろなところで言っています。特に有名なのは、南シナ海のサンゴ礁の軍事施設としての利用ですね。国際仲裁裁判所で判決が出ているのにも関わらず、「こんな紙切れは関係ない」とはっきり言っています。そういう国とは、なかなか経済の取引ができない。それだけの覚悟がいると思います。
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