ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月21日放送)に慶応義塾大学教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。EU加盟各国が合意した新たな「インド太平洋戦略」について解説した。
EU、日本などインド太平洋地域との関係強化へ
ヨーロッパ連合(EU)の加盟各国は4月19日、中国の影響力の拡大を念頭に、日本や韓国、オーストラリアなどとの経済や安全保障上の関係強化を目指す、新しいインド太平洋戦略をまとめることで合意した。
飯田)各国が合意した文章のなかには、「この地域では貿易や安全保障上の緊張が高まり、地政学的な競争が激化している他、人権も脅かされている」ということで、この内容は中国を強く意識したものだろうと報じられております。このところ、ヨーロッパが東アジアに関心を示しています。
経済的な利益から中国との関係を優先して来たEU~「中国とは基本的な価値を共有していない」に変化
細谷)この背景として、1990年代後半から、アメリカと中国との対立が指摘されるようになった。特に1999年のコソボの米軍、NATO軍による空爆が大きかったのです。そのあとアメリカと中国が対立したときに、中国がどういう方向に行ったかというと、EUとの関係を強化したのです。EUの科学技術を支援したり、EUに投資をした。2003年以降、戦略的なパートナーという形でEUと中国の関係が一気に進んで行きました。これがさらには経済的に拡大して、最大の貿易相手となるわけです。
飯田)そうですね。
細谷)EUでは「経済的な利益から中国との関係を優先する」というような動きが長く続いて来たわけです。これが2~3年で大きく変わって来ている。依然として、EUにとって中国は重要な貿易のパートナーなのですけれども、2年くらい前から、EUが中国のことを「体制上のライバルであって、中国とは基本的な価値は共有していない」と言い始めた。
人権や法の支配を守らなければ、ポストコロナの国際秩序が崩れて行く~アジアで提携するパートナーとして、日本を再評価
細谷)もともとEUは人権問題に敏感ですから、特に新疆ウイグルの問題をはじめとして、アメリカよりも人権問題に関しては厳しいのですね。そうなったときに、やはりアジアで提携するパートナーはどこかということで、日本の存在が再評価されている面がある。経済的な関係は中国に比べて遥かに限定的なのですけれども、これまで日本が進めて来た「自由で開かれたインド太平洋」、この構想に対してEUが全面的に、ある意味では連携して行く。これから本格的にEUでまた策定することになるとは思いますが、新しいインド太平洋の戦略をまとめたということです。やはりEUも中国との経済的な関係を簡単には犠牲にできないかも知れませんが、少なくとも、いまアメリカとEUと日本との間で、「人権や法の支配を守らなければ、ポストコロナの国際秩序が崩れて行く」という深刻な危機感が表れているということだと思います。
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