ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月19日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。現地時間4月16日にワシントンで行われた菅総理とバイデン大統領による日米首脳会談について、産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成氏を電話ゲストに交えて解説した。
日米首脳会談が終了~菅総理が帰国
日米首脳会談のため、アメリカのワシントンを訪れていた菅総理大臣が4月18日、一連の日程を終えて帰国した。会談では「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米に加えてASEANなどと連携を強化することで一致。また日米同盟の強化に向け、具体的な方策を検討して行くことも確認した。
飯田)現地16日、ワシントンのホワイトハウスで開催された日米首脳会談、バイデンさんが外国の首脳と初めて対面で行う会談となりました。日本が選ばれたということになるわけですかね。
米中新冷戦時代の幕開けのターニングポイントとなる今回の日米首脳会談
須田)そうですね。中国サイドはこの日米首脳会談を強く意識して、「台湾に関連した話はするな」というプレッシャーをかけていて、王毅外相もそういう要求をして来たのだけれども、それを跳ね除けて台湾に関してしっかり言及しました。この点において、後の世になって見ると、米中新冷戦時代の幕開けとなるターニングポイントとして位置付けられるのではないかと思います。
中国に対して日本との強い同盟関係をアピール~アメリカのメディアは好意的に論じる
飯田)産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成さんに、アメリカではこの会談がどう伝えられたかなどを伺います。黒瀬さん、おはようございます。
黒瀬)おはようございます。
飯田)アメリカのメディアは今回の会談や共同声明について、どのように報じていますか?
黒瀬)基本的には主要各紙とも、アメリカ・バイデン政権が「中国に対して日本との強い同盟関係をアピールして対抗して行く」という意思を示したという論調で、好意的に論じております。
飯田)黒瀬さんご自身はどうご覧になりましたか?
黒瀬)バイデン政権は発足当初から、「同盟、パートナー諸国と連携して中国との戦略的競争を勝ち抜いて行く」という強いメッセージを示して来ました。そのなかで、具体的に中国に相対する最前線に位置付けられる日本の菅総理と会って、中国に対する連帯を訴えたことは、非常にいいことだったのではないかと思います。
「台湾」に拘るアメリカ
飯田)台湾への言及もあったことが注目されていますが、この辺りはアメリカサイドもかなり拘ったということですか?
黒瀬)そうですね。今回の台湾の言及に加えて、バイデン政権は何をやったかというと、会談が行われる直前にバイデンさん自身の盟友であるドッド元上院議員、アーミテージ元国務副長官などを台湾に派遣して、「台湾はアメリカにとって大事なのだ」というメッセージを示したというところがあります。実際にアメリカの政権高官に会談直前に聞いたときも、似たようなことをおっしゃっていました。
1対1の会談時間が20分のみ
飯田)スタジオにはジャーナリストの須田慎一郎さんもいらっしゃいます。
須田)今回の日米首脳会談なのですけれども、1対1の会談時間は20分しかなかったということですが、会談時間についてはどのように評価されているのでしょうか?
黒瀬)その辺りは、バイデンさんとしては、実務的な話をきちんとやりたいというところがあったのだと思います。もう1つは、バイデンさんが最初に会って何をしたかったかというと、「菅総理がどういう人か見定めたかった」というところがあると思います。ですから、実務的な話はもちろん実務者を交えた方がスムーズに進むと。バイデンさんは外交に関してはプロだと自負されていて、実際に副大統領時代、上院議員時代には外交に深く関わって来た部分もあるので、実務的な話の前に、首脳間の個人的な関係の確立をしたいということだったのだと思います。
飯田)家族の写真を見せたりして話したということが報道されていますが、黒瀬さんはご覧になっていて、あるいは周りの取材などから、ケミストリーはあったのでしょうか?
黒瀬)バイデンさんを好意的に評する方は「非常にフレンドリーだ」とする一方で、1対1の場面でカメラを前にしてパフォーマンスをするという傾向がある人ではないとも言います。菅さんも同じようなところがあると思いますので、そういうところはなかなか一致する部分があったのではないでしょうか。
飯田)派手にハグをするというパフォーマンスを見せるタイプではないということですね。
黒瀬)ないということです。新型コロナのこともあって、あまりハグなどができないというところもあり、またバイデンさんは少し話が違いますが、女性にハグをしていろいろ問題になったことがありますから、その辺りも気をつけているのではないでしょうか。
飯田)ハンバーガーを前にして口をつけずに終わったというところで、盛り上がらなかったのではないかというような指摘も一部ありますが、決してそういうことではなかったということでしょうか?
黒瀬)そうですね。ハンバーガーに手をつけなかったというのは、アメリカサイドでは、「話に夢中になっていた」というところが強調されているという気はします。
外交への関心が低いアメリカの国民~「外交政策が一般のアメリカ人にとって、重要なものである」ことをアピールして行くバイデン政権
飯田)会談後の会見のなかで、最初の記者の質問が、いきなり内政の話から入っていて、アメリカのメディアの注目は内政、銃規制やイランの話なのかということも思ったのですが、東アジアへの興味というところは、全体としてどうでしょうか?
黒瀬)ご指摘の通りバイデン政権にとって、そこがいちばん難しい点なのではないかと思います。アメリカの国内では、「中国は非常に厳しい相手で、中国に対抗して行かなくてはいけない」という意識はありますが、外交への関心は低い。どうしても関心が銃などに行ってしまうということを反映した記者会見だったと思います。しかし、そこでバイデンさんがやろうとしているのは、「外交政策が一般のアメリカ人にとって、どれだけ重要なものであるかということを結びつけて行く」ということです。「中産階級外交」という言い方をしています。「中国に対して同盟国と一緒にやって行くことが、結果的にアメリカの国力の回復や再生につながる」ということを、どう打ち出せるかというところを、課題として改めて行くつもりなのではないでしょうか。
飯田)なるほど。黒瀬さん、お忙しいところありがとうございました。
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