ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月18日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。中国の4月の小売売上高が前年同月比で17.7%増であったというニュースについて解説した。
中国の4月の小売売上高、17.7%増
中国国家統計局が5月17日に発表した4月の主要経済統計によると、消費動向を示す小売売上高は前年同月比17.7%増だった。飲食店の収入などが大幅に増え、自動車や家具、宝飾品などの販売も好調である。
飯田)中国の数字でプラスが出て来ましたが、世界経済をまた牽引して行く形になるのですか?
クラフト)ここではワクチン普及を含め、コロナを抑え込んだ国の経済活動と、遅れている国の経済活動の差が表れたということが1つ言えます。日本は遅れていますし、いまは緊急事態宣言で経済活動も抑制されています。しかし、中国で商売している日本企業は多いです。したがって中国経済の増加は、日本にとってもプラスになるいいニュースですので、そこは歓迎すべき点です。
日本はアメリカと安全保障面で歩調を合わせる一方、経済面でどう中国と付き合って行くか
飯田)一方で、地政学的な面で中国を見ると、その部分ではサプライチェーンの見直しをバイデン政権も打ち出しています。今後の中国とのビジネス関係は、どのようなスタンスを取って行くのがいいのですか?
クラフト)まず、近年問題になっている経済力が、軍事力と同様に1つの武器になるのです。中国は反中国、あるいは中国に対して異議を申し立てるような、オーストラリアなどの国を経済力で叩くという手法を使っている。そこは日本企業としても日本政府としても、1つのリスクを抱えているわけです。ですから、今後は安全保障面でアメリカと歩調を合わせる一方、どうやってうまく中国と付き合って行けるのかというところが、日本の課題だと思います。
同盟国でつくる安全保障経済網
飯田)重要インフラに関わるところでの、データの移管等々も制限して行くという話が出ていたり、これもある意味で中国を念頭に置きながらの話だと思いますけれど、業種によってはこういう縛りが厳しくなって来るところも出て来ますか?
クラフト)今回のコロナで1つはっきりしたのは、やはりサプライチェーンの確保です。同盟国内での安全保障経済網をつくって行くということなので、これは日本だけではなく、各国みんなやっていることですから、それによって中国が大きく反発するということはないと思います。グローバリゼーションが見直され始めている1つのキッカケには間違いないですね。
バイデン政権に移行しても米中関係の対立は変わらない
飯田)米中交渉を考えると、アメリカ側は政権が交代したので、通商代表等々も変わった。中国側も、もともと劉鶴さんという経済の専門家で、ブレーンでもある副首相の方がやっていたのを、胡春華氏に変えるというような報道が出ています。
クラフト)はっきりとはわからないのですが、いずれにしても、中国政府内でも勢力争いなのか、体制変更があります。アメリカにおいても、トランプ政権からバイデン政権に変わったけれども、本質は変わりません。デジタル覇権争い、経済力、これに関してメンバーは変わっても中身は変わらないので、米中関係が大きく変わるとは思えないですね。
飯田)やはり対峙的にというか。
クラフト)そういうことです。それが長期化することは否めないのではないかと思います。
中国への強硬姿勢を貫かなければならないバイデン大統領
飯田)日本のなかには、環境面などで妥協してしまうのではないかという人もいます。
クラフト)バイデン政権も親中寄りに見せたり、強硬に寄ったりしています。最近では中国に寄り添うような発言をしたりしていますから、軸がはっきり見えて来ません。バイデン大統領自身は中国に対して宥和的と言われていますが、アメリカ世論、また議会はかなり強硬な反中姿勢なので、心のなかでは親中だったとしても、表向きはとてもそのようには見せられないですね。強硬姿勢を貫かなければならないという状況だと思います。
飯田)中間選挙も近づいているなかでは、なかなか変えられないと。
クラフト)おっしゃる通りです。いま議会は対中法案を議論して採決して行きますから、よりアメリカの対立姿勢は強まって行くと思います。
この1年がバイデン政権にとって勝負
飯田)中間選挙が終わったら変わるということはありますか?
クラフト)中間選挙の結果によります。基本的にバイデン政権は4年と言いますけれど、実際は2年です。中間選挙で負けたら残り2年はレームダックですから、中国にも相手にされない、国内でも力がなくなります。ですから、この中間選挙をとにかく勝つというのが優先課題です。ここでしっかり勝てば、国内の力を海外にも発信して、より中国に本気で向き合って行けるので、この1年がバイデン政権にとっては勝負ですね。
安全保障のより大きな役割を求められる日本
飯田)バイデンさんは同盟国を連ねつつ、ヨーロッパの国々も最近になって東アジア、太平洋地域にコミットするようになって来ました。この辺を日本としてはうまく使って行くべきですか?
クラフト)使うべきなのですが、同盟国連携の本当の意味合いは何かと言うと、既にバイデン政権も掲げていますけれど、「安全保障のより大きな役割を日本に担って欲しい」ということなのです。実際に菅総理がアメリカに行って首脳会談をしたときに、「日本の防衛力を強化します」とコミットしているのです。それは集団的自衛権を拡充するのか、ミサイル防衛を強化するのか……このような議論が国内ではあまりされていない。今後は日本としての役割を、どうやって大きく広げて行くのかを議論しなければならない局面まで来ています。それが同盟国連携であるということも認識しなければいけない。いいことでもあるし、より日本の責任が増えるのだということも認識しなければならない。
飯田)そのために防衛費を増やすなどの議論にもなるかも知れない。
クラフト)その一環としての議論ですね。
台湾有事が起きてから日本の役割分担を議論するのでは遅い~いまから議論するべき
飯田)そういうものを増やすためには、経済力が衰えてしまうと、それもできなくなります。
クラフト)おっしゃる通りです。経済力イコール軍事力なので、これはアメリカも中国もそうですし、日本もただお金を出すのではなく、自衛隊をどういう役割でアメリカと連携させるのか、集団的自衛権がどのように適用されるのか、台湾有事のときに日本はどういう役割分担をするのか。こういう議論をもっと明確にするべきです。台湾有事が起きてから議論するのでは遅過ぎる。いまからしないといけないのです。
飯田)いまから議論することで、「備えがきちんとあるのだ」ということが抑止力になると。
日本は「ここまではやるけれど、ここはできない」ということを明確に示さなくてはいけない
クラフト)抑止力になりますし、対外的に「日本はここまではやるけれど、ここはできない」とはっきり示すことで、それならば他の国がそこを補います、フランスがやります、イギリスがやります、オーストラリアがやります、とすることができる。曖昧にしていると、いざ何かが起こったときに、「日本はやってくれないのだ」となってしまって、連携が壊れてしまいます。日本はいまのうちにはっきりと、「ここまではやる、しかしこれはできない」という範囲を明確にするべきだと思います。
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