作家で政治評論家の竹田恒泰氏が、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。中国海軍で初めてとなる強襲揚陸艦の配備にみえる尖閣諸島への中国の意図について解説した。
台湾を侵攻するということは、尖閣諸島も含めた台湾を侵攻するということ
中国海軍で初めてとなる強襲揚陸艦の就役式典が4月23日、南シナ海に面した中国海南島で開かれ習近平国家主席が出席した。強襲揚陸艦は空母に似た甲板や揚陸艇などの格納庫を備えて、中国軍の上陸作戦遂行力は大幅に向上することになる。今回の配備は、南シナ海の衝突だけでなく、台湾上陸も想定していると見られている。
竹田)中国が尖閣諸島、もしくは台湾侵攻をするのではないかということは前々から言われていて、緊張度が高まっているのですが、強襲揚陸艦を配備するというのは、数段この緊張感が高まることになると思っています。
この強襲揚陸艦というのは一見空母のような形をしているのです。そして今回のものは、排水量約4万トンということですから、かなり大きいです。日本の最大の護衛艦「かが」ですら約2万トンですから、それの倍くらいの排水量があるということで、全長も250メートルでヘリコプター30機搭載可能と。これを何に使うかというと、まさにどこかを占領するときにです。アメリカで言えば海兵隊が持っているものが強襲揚陸艦でして、それなりの兵力を上陸させることができる船なのです。これまで中国がどういう兵器を持っていて、尖閣や台湾に対して、何が可能かということはもちろん分析されていますが、大兵力を確実に迅速に陸にあげる能力は低いと見られていたのです。ですから、中国がどんどんステージアップするような態度を取っても実際には攻めないだろうと見られていたわけなのです。
ところが今回、初となる強襲揚陸艦が実際に就役したと。そして次には2番艦もいまつくっていて、3隻体制まで持っていくような雰囲気がありますので、そうなってきますと、いよいよ台湾侵攻ができるという状況になるのです。だから、いろいろと中国のステージアップの話があるにはあるのですが、強襲揚陸艦の配備というのはかなり、日本としてもこれに対してどう対応するかということを考えなくては、すぐに対応しなくてはいけないという段階です。
森田耕次解説委員)台湾有事は日本有事でもあるわけですね。
竹田)そうなのです。台湾が攻められたら米軍が支援するということになるのですが、その米軍がどこからいくかとなったら、沖縄の基地から行くわけです。そうすると、中国軍からしたら、台湾を攻めてそこにアメリカ軍が加わると。そのアメリカ軍の拠点を叩くわけですが、そうすると当然沖縄を攻撃することになるのですよ。ですからこの台湾有事というと他所の国のことなのかと思うと大間違いで、「台湾有事=日本有事」と見ないといけないと思いますね。
森田)もちろん日本自体が攻撃されれば日本有事になるわけですが、もしアメリカ軍が攻撃を受けたときにどうするのか。あるいはグレーゾーンのようになったときにどうするのか。その辺りの議論をしなくてはいけないですよね。
竹田)そうですね。問題は、やはりいまご指摘のあったグレーゾーンなのです。例えば日本の自衛隊の船や飛行機が直接攻撃を受けた場合は防衛発動して、戦闘行為を行うということになるのですが、あえて中国軍がそれをしてこなかったときですよね。特に中国は尖閣諸島を自分たちのものだと言っていますが、それは「台湾のものであるから、したがって自分たちのものだ」と言っているのです。ということは、台湾を侵攻するということは、尖閣諸島も含めた台湾を侵攻するということなので、少し中国としてはやりにくいではないですか。
どうせ台湾を攻めるなら日本も三つ巴ということになるのか、あえて日本を避けてくるのか、これで日本に揺さぶりをかけてくるのか。どちらかわからないですが、台湾有事は日本有事であり、一歩間違ったら尖閣が先に落とされるという可能性もあると思います。
自衛隊は攻撃を受けない限り「警察」としてしか振る舞えない
森田)一方でイギリス政府が、イギリスの空母のクイーンエリザベスを中心とする空母打撃群が日本に初めて寄港するという発表もして、中国を牽制する動きは出てきていますよね。
竹田)そうですね。特に香港の問題をめぐってイギリスは相当怒っているのだと思うのですよ。そしてこの最新鋭の空母をアジアの方に仕向けるというのは、アジアの圏域を確保する、中国が本当に南シナ海などで好き放題しようとしているのを抑えることが、イギリスの国益に取って重要だということで、アジアシフトしてきているということだと思うのです。
これはイギリスだけではないですね。ドイツやフランスも艦艇をアジアの方に、南シナ海、東シナ海の方に差し向けるという行動をしている。本当に世界が、中国がどこまで国際秩序を動かそうとしているのかということに非常に注目しているということだと思うのです。さすがに中国も馬鹿ではないので、絶対に不利だという戦端を自ら開くということは考えられないと。だから、ここで本当に、日本やアメリカ、台湾、それ以外のイギリスなども含めてしっかり連携して、許さないという姿勢を示せるかどうかですね。
森田)そうですね。石平さん(※中国問題の評論家)もこちらの番組に来ていただいたときに、北京オリンピックもあるし中国もすぐには動かないだろうとは言っていましたけれども。
竹田)ロシアがオリンピックの直後にクリミア侵攻をしたということがあったので、北京オリンピックが終わったら、台湾ということを言う人もいますが、アメリカの分析によると、この先6年くらいの間であっても本当におかしくないということがあります。しかもこの6年間でさらに中国は実力を積み重ねてきますからね。
本当に日本がグレーゾーンでどう対処できるか。というのは、要するに自衛隊は攻撃を受けない限り「警察」としてしか振る舞えないのです。ですから、「警察」が少し威力のあるものを持っているだけになってしまうので、本当に自衛隊としての動きができるためには、逆に攻撃されないといけないと。
だから、攻撃を受けるまでをどうするかと。どんどん進展するのを指を加えて待つだけで本当にいいのかという、この辺りは国会でもしっかり議論してほしいと思います。
(ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」4月27日放送分より)
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