ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。大規模接種センターの予約の不備について報じた『AERA dot.』と毎日新聞の取材方法に対し、岸防衛大臣が抗議を表明したというニュースについて解説した。
大規模接種センター予約~岸防衛大臣が予約システムの不備を報道したメディアに厳重抗議
岸信夫防衛大臣は5月18日の記者会見で、架空の接種券番号で予約ができるか検証したと報じた毎日新聞社、ニュースサイト「AERA dot.(アエラドット)」を運営する朝日新聞出版に「厳重に抗議する」と表明した。
飯田)大規模接種センターの予約に関して、AERAや毎日新聞の取材方法に問題があるとして、岸防衛大臣は自身のツイッターでも「両社に抗議する」と投稿しています。「65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為」としています。
ジャーナリズムの目的は何なのか
佐々木)「ジャーナリズムの目的は一体何なのか」ということを改めて考えさせられます。もちろん「システムに障害がある、セキュリティに穴がある」ということを指摘するのは大事ですが、「この数字を入れても予約されてしまう」、「生年月日を適当に入れても予約可能」などと、詳細な手口まで事細かに報道する必要があるのかと。それは単に模倣犯のような、同じことをやって世間を惑わす人を増幅させるだけではないかということも、もう少しジャーナリズムは考えた方がいいと思います。
飯田)形は違いますが、潜入捜査、潜入取材というのは、調査報道の1つとしてあるし、それでいろいろな記事が出て来ましたけれども、「このタイミングか」というところですか?
「権力監視」が目的になってしまっている
佐々木)「目的は何なのか」ということです。政府がいろいろなことをして、暴走してしまって「おかしな方向に行っているところに歯止めをかける」というのが権力監視の目的なわけでしょう。でも今回に関して言うと、国も国民も「いかにワクチンを素早く接種するか」ということに対して、一丸となっているわけです。そこにわざわざ掉さすということが、果たしてジャーナリズムの目的に適っているのかどうか、もう少し自問自答する必要があるのではないでしょうか。「権力監視」ということをすぐ言いたがるのですが、権力監視というのは世の中をよくするために、政府の暴走を抑えるのが権力監視です。「何でも権力監視をすればいい」という目的になってしまったら、おかしいと思うのですよね。
飯田)権力監視は目的ではない。
佐々木)自衛隊の接種予約システムがおかしくなるということを報道する、それが「権力監視だ」と言うのなら、何の目的でそれをやっているのかということを考えないといけない。目的が明確ではありません。結局は「権力監視が目的」になってしまっているということです。
飯田)その先で、例えばシステムをよくすることが目的であれば、もっと別の書き方やアプローチもあっただろうと。
「はしゃいでいる」ように読めるAERAと毎日新聞の記事
佐々木)そもそもセキュリティの穴のようなものを見つけたら、セキュリティホールをみんなで共有するという、IPAのような公的機関があるわけです。「そういうところにまず報告をしてからだろう」という指摘もIT関係者からは出ています。これを真似する人が出て来たらまずいわけですので、「こういう行為をしてはいけません。または業務妨害になります。犯罪になりかねません」ということを記事のなかに書けばいいのだけれど、AERAと毎日新聞の記事を読むと、はしゃいでいるように見えるのですよね。「こんなものを見つけたぞ、これは酷いシステムだ」というように。その先の落としどころをきちんと捉えないで書いているところに問題があるのだと思います。
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