ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月31日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。反体制派ジャーナリストがベラルーシで拘束されたニュースを受け、自ら経験した中国での取り調べについて解説した。
ベラルーシで反体制派ジャーナリストが拘束
ベラルーシ当局は5月23日、ギリシャの首都アテネからリトアニアの首都ビリニュスに向かっていたアイルランドの航空会社「ライアンエア」の旅客機をベラルーシの首都ミンスクに強制着陸させ、同国の反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏を拘束した。
ロシアや中国など強権的な国家ではあり得る手口
飯田)ベラルーシで旅客機が強制着陸させられて、反体制派ジャーナリストが拘束された問題についてですが、峯村さんのご著書の『潜入中国 厳戒現場に迫った特派員の2000日』という本が朝日新書から出ていますけれど、「拘束された」という意味では、峯村さんは経験者でいらっしゃいますね。
峯村)中国特派員として拘束された回数としては多い方だと思います。
飯田)強権的な国家は、「いとも簡単に拘束する」という感じですか?
峯村)そうですね。ベラルーシはヨーロッパに残された「最後の独裁国家」と言われています。正直、「ここまでやるのか」と感じました。国によるハイジャックという意味では、一線を超えた許されざる行為だと思いました。
飯田)自分のところに着陸する飛行機ではなく、上空を通って他のところに行く飛行機に、「うちに降りろ」と言うだけではなく、戦闘機も上げて来ました。
峯村)「爆発物が仕掛けられたという情報がある」と言ってはいますが、これはどこでも起こり得る話です。ロシア政府当局者は、「よくやった」と好意的な反応を示しています。ロシアや中国のような国が同じような手口を使う可能性は、十分にあり得ると思います。
中国やロシアの上空を飛べなくなる時代に戻ることも
飯田)仮に峯村さんが東南アジア方面へ旅行に行こうとすると、中国の管轄する空域を通りますが、狙われる可能性が拭えないということになりますか?
峯村)そういうことを恐れています。私自身も香港でよく乗り換える機会があります。ただ、香港もいま、中国の法制度が及ばないという「一国二制度」の前提が崩れて来ているので、香港での乗り換えすらやめようかなと思っていたところです。ヨーロッパに行くときも中国の上空を通るので、穏やかではないですよね。
飯田)そうなると、かつてソ連上空を西側の飛行機が飛べなかった時代に戻るようなことになるのでしょうか?
峯村)究極的に言うとそうなりますよね。そうなると、乗る飛行機も選ばなければいけませんし、いままでのようにお酒を飲んでゆっくり寝ているというようなことができなくなりますよね。
中国での拘束~通訳もなく、罠だらけの調書
飯田)今回拘束された反体制派ジャーナリストのプロタセビッチ氏は、いまどうしているのかという情報が出て来ませんが、峯村さんご自身の体験のなかでも、取り調べは厳しかったですか?
峯村)そうですね。取り調べは中国語でやるので、まず言葉の壁があります。そして、とにかく同じ質問を何度も聞かれるのです。私はよく軍事施設を取材していたので、「どうやってこの情報を掴んだのか」、「誰がお前にリークしたのか」ということを「いい加減にしてくれ」というぐらい何度も聞かれるため、心理的に参ってしまうということはあります。
飯田)そのようなときは、通訳はいましたか?
峯村)いませんでした。
飯田)すべて中国語でやったのですか?
峯村)中国語でのやり取りですね。
飯田)中国語をきちんとわかっていないと、難しいですよね。
峯村)そうですね。最後に調書にサインをするのですが、気をつけないと、「私がすべて悪い」というようなことが書かれている場合もあるのです。
飯田)それも当然ながら中国語で書いてあるのですよね?
峯村)中国語で書いてあります。
飯田)喋るだけではなく、読み、特に行政文書をきちんと読み込まなければいけない。
峯村)わざと難しい故事成語のようなものを使っていることもあるので、かなり緊迫しました。もし、変なところにサインをしてしまえば、それを理由に今度は本当に拘束されたり収監されたりしてしまうので、そこが重要なところです。
飯田)「半年後に出頭します」というようなことが書いてあることも。
峯村)十分にあり得ます。「いかなる刑事的処分も受けます」ということが書かれていたら、「お前、そこにサインしただろう」という事態になりかねません。
飯田)まさに語学力が、本当に自分の命を左右するような場面がある。
峯村)そうなのです。私も自分が生き残るために中国語を勉強したというようなものです。
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