「告げ口社会」ではなく「ルールを守っても大丈夫」な環境をつくるべき~酒類の取引停止要請

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月12日放送)に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。西村経済再生担当大臣の酒類の取引停止要請について、立憲民主党の枝野代表が批判したというニュースについて解説した。

「告げ口社会」ではなく「ルールを守っても大丈夫」な環境をつくるべき~酒類の取引停止要請

記者会見する西村経済再生相=2021年7月9日午前、内閣府 写真提供:共同通信社

西村大臣の酒類の取引停止要請について、立憲民主党・枝野代表が批判

立憲民主党の枝野代表は7月11日、西村経済再生担当大臣が新型コロナウイルスの感染対策として、酒類提供を続ける飲食店との取引を停止するよう酒類販売事業者に要請していることなどについて、「中国同様に強権的だ」と批判した。

飯田)枝野代表は11日に村山元総理と面会をしたのち、記者団に対してこうしたコメントが出たということです。飲食店に対しての締め付けというのは、いろいろと批判も出ていますね。

野村)国立感染症研究所が「お酒を伴う3名以上の会食に2回以上参加すると、感染リスクは約5倍になる」というデータを出しているのです。このインパクトがあって、「お酒を何とか」という思いが先走ったのだと思いますが、要請の仕方、特に金融機関を通じての要請については、やはり筋が悪いということは言えると思います。

飯田)応じない飲食店に対して、「金融機関と情報共有しながら順守を働きかけて行く」と発言して、「では具体的にどうやるのか」ということが言われていました。

野村)具体的に行政的な行為をするというより、「お願いをしようかな」ということを「ポロッ」と言ったのだと思います。ただ金融機関は、取引をすることによって、一般の企業に対して優越的な地位にあります。金融機関が何かを言うと、みんなが従うというのはよろしくないということで、銀行法などでも禁止されている行為なのです。それを助長することになりかねないという批判は出て来るだろうと思っていましたが、案の定ですね。本来、西村大臣もそういう趣旨で言ったわけではなかったので、すぐに火消しをしたということだと思いますけれども。

飯田)これに関しては撤回と。

野村)明確に撤回していますから、そこはやらないということだと思います。

要請に従わない4店舗に対して過料を科した東京都

飯田)一方で卸売に対しては、国税庁から通達も出ているという話があります。

野村)公平性の問題もあります。真面目にいまのルールに従って感染対策をやったり、時短に応じたりしている人たちも苦しいのです。それに対して、意に介さずやりたい放題やっている人たちもいる。その中間に、やらざるを得なくて困っている人たちもいると。その辺りが非常に難しい状況に陥っているのだと思います。

飯田)そうですね。

野村)今回、東京都は4つの飲食店に対して、罰則規定のなかに定められた、今回は行政罰ですが過料を科す手続きをして、裁判所もそれを認め、初めて4店に過料を科しました。おそらく何回指導しても、何を頼んでも「そんなことは知ったことではない」という対応をされているところには、厳しい姿勢で臨まなくてはいけないという判断があるのだと思います。

飯田)4店に。

野村)ただ、従業員のことを考えたり、その他の仕入れ先のことを考えたり、いろいろなサプライチェーンを考えたときに、「営業せざるを得ない」というような人たちをどうするのか。そういうところも、一律に排除して行くというやり方には、警戒が必要だと思います。

「告げ口社会」ではなく「ルールを守っても大丈夫」な環境をつくるべき~酒類の取引停止要請

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

1回目の協力金が出ていない飲食店をどうするか

飯田)飲食店の方々からもツイッターやメールで悲鳴のような声をいただくのですが、自分のところの商売を考えたら、閉めれば協力金をもらえるけれど、働いている従業員やお酒を入れてくれている業者さんを考えると、休んでもいられないと考えていらっしゃる方も多いですね。

野村)おしぼりを提供してくれている業者も、ある意味ファミリーなのですよね。そこを、「自分たちだけが協力金で何とかなるからというわけにはいかない」という人たちの声をどうするかということです。ましてや協力金の支払いが遅れているところもあって、今回は先渡し方式ということを決めたのです。1回目が払われているところには、2回目の審査を省略して、誓約書だけですぐに払うというやり方なのです。しかし、いま問題なのは、1回目がもらえていない人なのです。ここをどうするのか。そこに知恵を出さなくてはいけないと思います。

強制的にルールを守らせるのではなく、「ルールを守っても大丈夫な環境」をつくるべき

飯田)お酒への風当たりの部分で、グルメサイトなどで書き込む人たちに対して、「この店はどうでしたか」などと、隣同士で監視するような仕組みを政府が積極的に導入するというのは気持ち悪いなと思うのですが。

野村)告げ口社会になってしまうので、やり方を工夫しなくてはいけないと思います。我々は「エンフォース」と言いますが、ルールを実現させる手段がないのですよね。だから、開示とか、サプライチェーンとか、そういうところにどうしても手を突っ込みたくなってしまう。そういう状況に行政があるのだと思うのですが、ここは少し冷静に、先ほど出て来た協力金の問題などで休みやすくする方向に力を注ぐ必要があります。強制的にルールを守らせる方向にばかり頭を働かせるのではなく、「ルールを守っても大丈夫だ」という環境をつくるべきです。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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