野球日本代表・稲葉監督 「気持ちは一つ」代表メンバー選出への思い

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「WBC=ワールド・ベースボール・クラシック」や、「プレミア12」など、野球日本代表のメンバー選考には、指揮官によっていろいろな選び方があります。ときには、メンバーの調子よりも、代表としての「一体感」を重視して選ぶことも。今回は、野球日本代表・稲葉篤紀(いなば・あつのり)監督の、代表メンバー選びにまつわるストーリーです。

野球日本代表・稲葉監督 「気持ちは一つ」代表メンバー選出への思い

記者会見で東京五輪の野球日本代表に内定した選手を発表する稲葉監督=2021年6月16日午後、東京都内のホテル 写真提供:共同通信社

おととし行われた国際大会「プレミア12」で、稲葉監督のもと、世界一に輝いた日本代表。この大会はシーズンが終わった直後に行われたため、出場を打診しても、疲労や体調を理由に辞退する選手も多かったそうです。そんな中、自国開催のオリンピックを見据えて集まってくれた選手たちに対する稲葉監督の思い入れはことのほか強く、今回も、あのとき一丸となって戦ったメンバーで臨みたい、という稲葉監督の希望を反映して「プレミア12」に出場した選手を中心に選ばれました。

その中には、今シーズン本調子ではない選手や、故障明けの選手も含まれており、「大丈夫なのか?」と不安の声も上がりましたが、「本番までに調子を上げてくれると信じている」と語った稲葉監督。現在の調子よりも、あえて「2年前の絆」を優先したのです。

「プレミア12」の出場メンバー以外に、「日本代表への思いが人一倍強い」ということで稲葉監督が選んだのが、今年から日本球界に復帰した楽天・田中将大投手です。メジャーリーグから、8年ぶりに日本に戻ってきた田中投手。楽天復帰を決めた大きな理由の一つが、「オリンピック出場」でした。実は、今回の代表メンバーのうち、首脳陣も含めて、前回野球が行われた2008年の北京オリンピックに選手として出場したのは、田中投手と稲葉監督の2人だけです。

あのとき、日本代表の指揮を執った星野仙一監督は、調子のいい選手よりも「日の丸に対する思い」を優先してメンバーを選びました。稲葉監督は、故障を抱えながら参加。全試合に出場して決勝打を2本放ち、当時メンバー中最年少の19歳で出場した田中投手は3試合に登板。無失点と好投しました。

しかし日本は準決勝・3位決定戦に連敗。メダルなしという結果に……。次のロンドン大会で野球が採用競技から外れたため、雪辱の機会がなくなってしまいましたが、東京大会限定で野球が正式競技に復活。田中投手は、楽天復帰会見でこう語りました。

「選ばれたら、断る理由なんてない。金メダルを獲りたいと思っている」

13年前のリベンジを果たしたい気持ちは、稲葉監督も同じ。田中投手を投手陣の柱に据えたのは、北京での悔しさを共有している唯一のメンバーだからです。

北京で苦い思いを味わったにもかかわらず、稲葉監督はなぜ、今の調子よりも「日の丸への思い」や「絆」を重視したのでしょうか?その背景には、現役時代の2009年に行われた、野球世界一を決める大会「第2回WBC」での経験も影響しています。

日本の連覇が懸かったこの大会に、最年長プレーヤーとして出場した稲葉監督。このときの日本代表には、当時メジャーリーガーだったイチロー選手も出場していました。世界一をつかもうと、誰よりも早く球場入りして練習を始め、率先して声を出し、ベンチを盛り上げたイチロー選手。その姿勢に、稲葉監督をはじめ他の選手たちも大きな影響を受けました。

ところが大会中、イチロー選手は思わぬ不振に陥ってしまいます。なかなかヒットが出ない日々が続くなか、代表のメンバーが自然に始めたのが、ユニフォームのズボンの裾を膝まで上げて、ソックスを見せてはくことでした。それは、イチロー選手が続けているクラシックスタイル。「気持ちは一つだよ」という、無言のエールでした。

みんなの後押しもあって調子を取り戻したイチロー選手は、韓国との決勝戦で試合を決めるヒットを放ち、日本はWBC連覇を達成。頂点に立つためには、あのときのような「全員一丸となって戦う集団」を作りたい……稲葉監督のメンバー作りへの思いは、ここにあるのです。

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