ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月4日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。世耕参院幹事長がコロナ追加支援策として、30兆円規模の補正予算を編成すべきだと述べたニュースについて解説した。
世耕参院幹事長~コロナ追加支援策として補正予算案編成を
新型コロナウイルスの経済への影響が長期化するなか、自民党の世耕参院幹事長は飲食業などの事業者や生活に困っている世帯への追加の支援策が必要だとして、30兆円規模の2021年度補正予算案を編成すべきだとの考えを示した。
飯田)需給ギャップ、需要が冷え込んでいるので、そこを埋めなければいけないということですよね。
予算の繰越金30兆円~持続化給付金詐欺対策で審査を厳しくしたことも一因か
佐々木)そうですね。30兆円というのは、財政出動したなかで積み残しているのが30兆円くらいあるので、これを足さないといけないという話です。振り返ると、2020年に当時の安倍首相が「230兆円、GDPの4割を使います」と支援策を打ち上げました。これは真水ではなく民間事業含めてだからなのですけれども、ふたを開けてみると、GDPの7%くらいしか国費は投入されていない。アメリカは13%でした。ですから財政出動の見かけの数字だけでは、GDPで言うとアメリカに次いで2位くらいで、「大規模だ」と言われていたのだけれど、そのわりにお金が回って来ないという感じがあった。結果的には、積み残しが非常に多かったということです。
飯田)先日、決算が出ましたね。
佐々木)原因はよくわからないのだけれど、審査を緩くしたら当初、持続化給付金詐欺が起きた。それで締め付けたのではないかと思います。私も株式会社にしているので、いくつか給付金を申請したのですけれど、まったく下りないのです。3ヵ月くらい経っても何の返事もないものがいくつかあります。審査を厳しくしているのではないでしょうか。
1月に申請した東京都の飲食店への協力金がまだ下りない~全国民に「1人20万円」を配ってもいいのでは
佐々木)これは自治体ですが、東京都も飲食店の休業要請に対して協力金を出しています。しかし、「1月~2月に申請したものが未だに下りて来ない」という声が聞こえていて、半年も下りて来なかったらお金が持たないので、休業要請に対応できなくなり店を開くという報道を目にしますよね。
飯田)そうですね。
佐々木)そう見ると、詐欺などを心配して、お金を出し渋り過ぎているのではないでしょうか。だから30兆円も余ってしまうわけで、ここは追加支援を世耕さんの言う通り積極的に行うべきで、審査も、もう少し緩くした方がいいのではないかと思います。30兆円もあるのなら、1人20万円くらい回りますので、いっそのこと、「ドカン」と全員に20万円ずつ配ってもいいと思います。
飯田)各省庁の執行状況調査が、政府の新型コロナ対策のホームページにも出ていますけれども、特別定額給付金は1人10万円で12兆6600億円が既に執行されているということで、これに関してはきちんとお金が出ているのですよね。
佐々木)2倍の20万円にしても約25兆円で済むのであれば、30兆円で払えるではないですか。
軽々しく「ロックダウンせよ」と言うが
佐々木)あとはデルタ株がまん延していて、西浦博さんが、「8割の接触を抑制してもデルタ株の基本再生産数は減らせないので、ロックダウンするしかないけれども、ロックダウンをしても減らないのであれば、もうあとがない」という記事を書かれていました。
飯田)ロックダウンしても減らなければ。
佐々木)ロックダウンを求める声が急に高まっています。「補償すればロックダウンをしてもいい」という声が多いのだけれど、ロックダウンというのは単なる自粛要請でも、罰金でもなく、刑事罰を伴う封鎖です。外出したら逮捕されるとか、店をやっていたら強制捜査が入るということです。「そこまでみんな協力できるのか」ということを、もう少し真面目に議論しなくてはいけないし、軽々しく「ロックダウンせよ」と政府に迫るのはどうなのかなと思います。
飯田)現行法でもできるということを言う人もいますけれども、最終的には、移動の自由や営業の自由の制限ということで、憲法とバッティングしますよね。
佐々木)基本的人権の侵害には間違いなくなるので、どこまで私権を制限するのかという歯止めをかけるためにも、きちんと憲法に緊急事態条項を取り入れた方がいい。例えば国会の承認を必ず3ヵ月後に求めるとか、「ここまでしかやりません」という歯止めをかけるためにも、緊急事態条項は必要なのではないかと思います。「緊急事態条項」などと言うと「政府が自由に何でもできるようにするつもりか!」と言う人がいますけれども、そうではありません。いまのように空気の流れでやるよりは、きちんと歯止めをかけるということを法律で行うのが、法治国家のやることではないかと思います。
飯田)それこそが権力を縛る、立憲主義の最たるものですよね。
佐々木)法律で権力を縛るというのが立憲主義であり法治国家であって、自由にやらせるのは法治国家ではないですから。もう1度、立憲や法治の原則に立ち返って議論すべきではないかなと思います。
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