ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月18日放送)に、東京パラリンピックに水泳で出場する木村敬一選手が出演。東京パラリンピックにかける思いを語った。
パラリンピックにかける思い
8月17日、東京パラリンピックに臨む日本選手団の結団式が都内で開かれ、8月24日の開幕まで秒読みの段階に入った。東京パラリンピックは日本から史上最多となる255人の選手が参加するが、なかでも注目を集めているのが、メダルの期待もかかっている、水泳の木村敬一選手である。
新行市佳アナウンサー)まずは簡単ではありますが、木村選手のプロフィールをご紹介します。1990年生まれの30歳。滋賀県のご出身。2歳のときに病気のため視力を失い、小学4年生から水泳を始めて、単身上京した筑波大附属盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)で水泳部に所属。北京、ロンドン、リオと3大会のパラリンピックに出場しています。ロンドンで銀メダル、銅メダルを1つずつ獲得し、前回のリオ大会では銀メダル2つ、銅メダル2つを手にしました。4大会目となる東京パラリンピックにかける思いについて、リモートでお話を伺いました。
木村選手にとってパラリンピックとは
新行)北京、ロンドン、リオと出場して来られて、いよいよ東京パラリンピックということになりますが、木村選手にとってのパラリンピックとはどんな舞台ですか?
木村)その4年間、今回は5年間になりますけれども、頑張って来たものを発表する場という感じです。4年間のタームのゴール地点であり、次の人生に向けてのスタート地点になる瞬間だと思います。
回を重ねるごとに注目度が高くなって来たパラリンピック
新行)パラリンピックに出場して来られるなかで、競技を取り巻く環境にも変化があったと思いますが、その変化をどのように捉えていらっしゃいますか?
木村)毎回、変わって来たと思います。北京のときは、いまからは考えられないくらいだなと思います。メディアに取り上げてもらう機会も、ほとんどありませんでした。「出場できて嬉しかった」というだけでした。
新行)北京では。
木村)その次のロンドンでは、北京のときに比べれば、注目度は上がりましたが、メディアに取り上げられることは多くありませんでした。ただ、自分がメダリストになったということと、大学生だったので、応援してくれる人が前の大会より多かったですね。そういう身近なところで盛り上がってくれた大会だったなと思います。
新行)リオはどうでしたか?
木村)リオになると、限りなくいまに近いです。成績もよかったですし、日本中の人たちが、僕がメダルを獲ったという事実よりも、「たくさんの人がレースを見てくれた」と思います。次の東京は、もちろんたくさんの人がレースを見てくれるだろうし、それ以前に、このように取材してもらうことも増えたので、みんながレースに臨むまでのプロセスを知ってくれているという状態なのかなと思います。
東京パラリンピックは特別過ぎる大会~みんなに豊かな心を取り戻して欲しい
新行)どんなレースをしたいか、そしてどんなメッセージを届けたいか、教えていただけますか?
木村)今年(2021年)のオリンピック・パラリンピックは特別過ぎる大会だと思います。日本の東京でやるということもそうですし、コロナ禍でやる、それに打ち勝って行こうとする大会でもあるので、そこに込められたメッセージは一言では言い切れないものが詰まっていると思います。
新行)そうですよね。
木村)人が心を揺さぶられることに飢えているというか、感動することに飢えていると思います。もちろん自分の成績で自分に感動したいと思っていますし、世界中の選手たちが激しく戦っている場を見てもらって、人間として豊かな心をみんなが取り戻せればいいなと思います。
参加できる喜びを噛み締めたい
新行)では、東京パラリンピックの目標と意気込みをお願いできますでしょうか?
木村)目標としてはもちろん、いままで獲ったことのない金メダルをいちばんに置いて、しっかりと頑張りたいなと思っています。あとは、せっかく自分の国でやる大会なので、日本中の皆さんと一緒に、この大イベントに参加できる喜びを噛み締めたいと思いますし、盛り上がりに参加したいと思います。
木村敬一選手の自伝『闇を泳ぐ~全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。~』が8月20日発売
新行)私も心から応援しております。それでは最後になってしまうのですけれども、木村選手の自伝をこれから手にする人に向けてのメッセージもお願いします。
木村)パラリンピック直前に出すということで、パラリンピックをもっと知ってもらえればいいなとか、盛り上がればいいなとか、障害を持った人のリアルな生活を知ってもらえたら嬉しいなと思っています。あとは、そんなにとんでもない苦難が僕の周りで起きたわけではなく、けっこう穏やかに生きて来たつもりです。ただ、たくさんの人が僕の周りには常にいてくれて、僕はこの30年の間、独りぼっちになったことはなかったと思っているので、それはすごく幸せなことなのですけれど、そういう人たちとの温かいエピソードをたくさん盛り込んだので、そういう人間ドラマを読んで、ほっこりしてもらえたら嬉しいと思います。
パラリンピック競技の素晴らしさ
ジャーナリスト・佐々木俊尚)素晴らしいですよね。以前、文春オンラインの記事で、パラ陸上競技の山本篤さんが「活躍を社会面に載せるのではなく、スポーツ面に載せて欲しい」ということをインタビューで答えられて、その通りだなと思いました。パラと言うと、すぐに弱者とか、可哀想な人のようなイメージを持つメディアや人が多いのだけれども、そうではなく、一競技者としてみんなで応援したいですね。その競技の素晴らしさを見るということ、そちらに徹したいなと思います。
新行)木村敬一選手は、水泳競技に出場されますけれども、パラリンピックの水泳競技にはさまざまな障害があります。身体障害や知的障害、視覚障害などですけれども、障害に応じてクラス分けがされていて、また、いろいろな工夫もされています。例えば木村選手でしたら、ターンするときやゴールする直前に「タッパー」という人が、棒の先にスポンジのようなものが付いているのですが、それで合図を出してターンし、また泳ぐというような形になっています。そのタッパーの人と木村選手とのコンビネーション、阿吽の呼吸、そういったところもまた注目のポイントです。
なぜ車椅子のスポーツはパラなのに、スケートボードはオリンピックなのか
佐々木)障害があると言っても、それは障害というより、ある種の特質、パーソナリティの1つであるということです。それに合わせていろいろな競技がある。しばらく前に乙武さんが言っていて、なるほどなと思ったのですが、「なぜ車椅子のスポーツはパラなのに、スケートボードはオリンピックなのか」ということです。道具を使うのは同じではないかとおっしゃっていました。自分の特質を応用して、さまざまな競技を行う。例えば手を使わないからサッカーとかね。それだって、手を使わないということが、ある種の特質ではないですか。車椅子や目が見えないということも、それと同じように捉えていいのではないでしょうか。
木村敬一選手の自伝、『闇を泳ぐ~全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。~』プレゼント
新行)ミライカナイから出版される木村敬一選手の自伝、『闇を泳ぐ~全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。~』を5人の方にプレゼントいたします。読んでみたいという方は「木村選手の本希望」とお書きになって、番組のメールアドレスまでご応募ください。当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。8月18日の日付が変わるまでお待ちしています。
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