中田翔・電撃トレード 巨人・原監督が受け入れた理由

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、8月20日に日本ハムから巨人への電撃トレードが伝えられた中田翔選手と、彼を受け入れた巨人・原辰徳監督にまつわるエピソードを取り上げる。

プロ野球 巨人 中田翔 移籍会見 チームメートへの暴力行為で出場停止処分を受け、日本ハムから巨人に無償トレードで移籍した中田翔が会見=2021年8月20日 球団事務所 写真提供:産経新聞社

『自分はまた一からやり直す気持ちと、覚悟をもってやらないといけないと思っている。そう簡単に信頼を取り戻すことは出来ないと思う。また一から、しっかりと自分を見つめ直して、野球人として、人としてしっかり前に進んでいきたい』

~『朝日新聞デジタル』2021年8月20日配信記事 より(中田翔 移籍会見コメント)

8月20日、球界を驚かせた、北海道日本ハムファイターズの主砲・中田翔の緊急トレード。中田はご存知のとおり、4日に函館市で行われたDeNAとのエキシビションマッチの際、試合前、チームメイトに対して暴力を振るったことが判明。事態を重く見た日本ハム球団は、野球協約に基づき、11日から1・2軍全試合への無期限出場停止処分を科していました。

暴行を受けた同僚選手がどの程度のケガを負ったのか、詳しい状況はわかりませんが、いずれにせよ中田がチームに居づらい状況になったことは確かです。栗山英樹監督も記者たちの前で、中田の移籍を示唆する発言をしていたため、トレード自体は想定内でしたが、移籍先が巨人になったこと、予想外に話が早くまとまったことに驚いた向きも多いようです。

中田を獲得した球団には、彼の残り分の年俸(今季は推定3億4000万円)を支払う義務が生じます。ある程度資金に余裕のある球団でないと獲得が難しく、かといってソフトバンクや楽天は同一リーグのため、シーズン中の移籍は難しいところ。

しかし巨人は“紳士の球団”を標榜するだけに「いくら何でも、暴力事件を起こした選手を獲得しないだろう。引退するしかないんじゃないか」という厳しい見方もありました。栗山監督が解説者時代から巨人・原監督と懇意にしていることもあって、今回の無償トレードが成立したと思われます。いずれにせよ中田は両監督に感謝しなければなりません。

とはいえ、今年(2021年)の中田は故障の影響もあり絶不調。今季成績は19日現在で、39試合に出場し打率.193、本塁打4本、打点13。とても年俸に見合う成績ではなく、「獲ってもいまの中田では戦力にならないだろう」「むしろ士気が乱れてマイナスになるんじゃないか」という辛辣な声が早くも上がっています。

もちろん、日頃の友情だけで中田を拾うほど原監督も甘くはありません。貴重な支配下選手枠を1つ潰すのですから、「使い方次第で十分戦力になる」と考えてのことでしょう。自分なら、中田を使いこなせるという自信の表れのようにも見えます。

また阪神追撃のためにも、一発があるスラッガーは何人でも欲しいところ。今季は特に、一塁を任せる予定だった新外国人・スモークが、新型コロナ禍による家庭の事情で途中帰国するという誤算がありました。ウィーラーは一塁以外に外野も守れますし、中田が心技体とも本来の状態に戻れば、先発・一塁で使うことも可能です。

他チームのファンからすれば「もうこれ以上補強しなくてもいいでしょう」と言いたくなりますが、とはいえ現時点(19日現在)はリーグ2位。いつ主力が故障するかも知れず、スペアが多いに越したことはありません。

中田は昨季(2020年)、12球団の本拠地のなかでも屈指の広さを誇る札幌ドームがホームにもかかわらず、31本塁打を放っています。東京ドームが主戦場となれば、十分40本は打てるポテンシャルを持っています。そして、一昨年・去年(2019年・2020年)と2年続けて日本シリーズでストレート負けを喫したソフトバンクに対抗する意味でも、パ・リーグで主砲を張って来た中田は持っておきたいピースです。

「情けを掛けた」というよりも、「死んだ気になって、もうひと働きしてくれないか」というのが原監督の本音であり、戦力にする自信があるのでしょう。また中田も、4番にずっと据え続けた栗山監督に対してそうであったように、恩義には報いるタイプの「昭和な男」です(平成元年生まれですが)。

もちろん、暴行を働いた事実は簡単に許されることではありません。出場停止は20日付で解除になりましたが、再びプレーする前に、まずは真摯に反省し、迷惑を掛けた関係者にも改めて誠意ある謝罪をしてからすべては始まります。そして、この恩に報いるにはプレーで返すしかありません。もう一度チャンスを与えられた中田がどう生まれ変わるのか、原監督の手腕も含め、注目したいと思います。


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