9・11から20年 ~今後のアメリカのあり方、日本のあり方

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月9日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。9・11から20年が経ち、今後の世界におけるアメリカのあり方、また、日本のあり方について解説した。

世界貿易センタービルに接近するハイジャックされた航空機(左)と、衝突炎上する世界貿易センタービル。手前右に見えるノースタワーに続きサウスタワーに2機目の民間機が衝突した(アメリカ・ニューヨーク) AFP=時事 写真提供:時事通信

9・11から20年、民主国家のあり方とは

旅客機4機がハイジャックされ、アメリカ・ニューヨークの高層ビルなどに突入し、世界に衝撃を与えた同時多発テロから20年が経つ。20年を経て、米バイデン政権はアフガニスタンの米軍を完全撤退させ、イラクでの戦闘任務も年内に終える。今後、アメリカはどこに行くのか、また、日本はどう進むべきなのか。

飯田)9・11から20年ということで、「民主国家のあり方とは」という大きなテーマでお話を伺います。あの同時多発テロから、いよいよ20年を迎えます。

9・11で変わったアメリカの外交政策~エネルギーを中東に注ぐ

宮家)1990~1991年にソ連が崩壊しました。それまでは、東西冷戦の時代だった。しかし、ソ連がいなくなってしまったわけで、「さあ、これからどうする?」というのがクリントン政権でした。1992年に選挙で勝って、8年間やった。そして2001年になり、ブッシュ政権ができました。その途端に、9.11があり、「これからはテロとの戦いだ」ということになる。「ガラッ」とアメリカの外交政策、もしくは優先順位が変わった瞬間です。

飯田)9・11で。

宮家)あれから20年が経ったわけだけれども、その間にいったい何が起きたのか。ブッシュ政権のころは、テロにやられたとは言え、ソ連が壊れましたから、アメリカは唯一の超大国です。「これから民主主義を世界に広めるのだ」「テロを潰してしまえ」「その上でイラクもやってしまえ」と。そして、「国づくりをするのだ」と。くさい匂いはもとから断たなければいけないから、ゼロから民主国家につくり直さなければいけないということで、膨大なエネルギーをイラク、それからアフガニスタンにも注いだわけです。

結果が出なかった中東での20年間

宮家)しかし、中東のあの人たちが民主主義をやるということは、簡単なことではないわけです。19世紀の頭のつくりの人に「21世紀になれ」と言っても、それは無理なのです。アメリカはその意味では、すごいなというか、あまりにも人がいいというか、楽観的というか。その挙句、あれだけの投資をしながら結果がほとんど出なかった。

飯田)投資をしたけれども。

宮家)それはそうですよ。アフガニスタンからすれば、外国の勢力が変なことを押し付けて来たとしか思っていないわけです。そうなると、「我々の過去20年間は何だったのか」というような思いに変わります。

飯田)20年間で変えることができず。

宮家)当然のことながら、アフガニスタンはこれから不安定化します。米軍が抜けるわけですから、力の空白ができる。パキスタンは喜んでこれに手を出します。その裏に中国がいますし、イランは「大変だ、大変だ」と言ってまた手を出すし、インドはパキスタンの反対側ですから当然、手を出す。ロシアもみんな待っている。アメリカ以外はみんな今、あそこの空白をどうやって埋めるかを考えているわけです。そうなると、本当は中東が安定して行くべきなのに、逆の方向に動く可能性がある。

中東からインド太平洋にシフトチェンジ~台頭して来た中国との覇権争いへ

宮家)最後にいちばん大事なことは、アフガニスタン発の9・11の20年後に戦いがこういう形で終わって、米軍が撤退する。これは極めて象徴的なことです。先ほど申し上げた1991年以前の東西冷戦。2001年以降のテロとの戦い。その時代が終わって、やはり次は、インド太平洋に来るのではないかと思います。

飯田)アメリカが。

宮家)それはアメリカが20年~30年、中東で戦っている間に、中国は着々と軍事力、政治力、経済力を強めて来た。しかもアメリカが持っていた西太平洋における覇権にチャレンジしている。アメリカはそう受け止めるわけです。そうなれば、中東を相手にしている場合ではない。本拠地の1つである西太平洋に帰って来なければいけないということで、米外交の政策変更が始まったのではないでしょうか。

飯田)対中国へと。

宮家)アフガニスタン撤退の発表が4月14日で、その2日後に日米首脳会談、菅総理とバイデン大統領の会談がアメリカであったわけですけれど、これは決して偶然ではないと思います。先ほど申し上げたテロとの戦いから、インド太平洋へ向かう政策の重点、もしくは優先順位、の変化というものを象徴した事件だと思います。

16日、カブールの空港で、旅客機の上に上がったアフガニスタンの人々(アフガニスタン・カブール)=2021年8月16日 AFP=時事 写真提供:時事通信

民主主義の価値を掲げることは変えないが、具体的な行動は今後しないアメリカ~中国との競争にエネルギーと時間をかける

飯田)東西冷戦のイデオロギーの対立からテロという流れがあり、そしていま、バイデンさんは、権威主義的なものなのか、民主主義なのか。「デモクラシーかオートクラシーか」という対立軸を出しています。そこへ来て、コロナ対策等々で「民主主義国家の方が弱いのではないか」ということが言われ、特に途上国のなかでは、「中国的なモデルが手っ取り早いのではないか」という価値観になって来ている。そういうところを危惧される方もいらっしゃいますが、宮家さんはどうご覧になっていますか?

宮家)民主主義がそんなに簡単に移行できる、もしくは移植できるわけではありません。アメリカも2001年のテロとの戦いのときは、ネオコンと言われる、新保守主義の人たちがいて、アメリカの力があるうちに世界中にアメリカの価値、すなわち「アメリカ型の民主主義を広げるのだ」と言い出した。

飯田)9・11があり。

宮家)それが大失敗したわけです。バイデンさんがおっしゃっているのも、「権威主義的な民主主義対民主主義」という点ではネオコンに近いのだけれど、決定的に違う部分があります。バイデンさんは力を使って世界中に民主主義を広げて行こうということではなく、「やれるところはやってください」ということなのです。「できないなら、我々もそんなに介入しません」ということです。

飯田)自分たちで守ってくださいと。

宮家)民主主義という価値を掲げることは変えないけれど、具体的な行動は、特に中東においてのプレゼンス、もしくは介入は減らして、中国との競争にエネルギーと時間をかけて行く。これはアジア諸国から言えば、希望的観測なのかも知れませんが、そういう方向にいま動いていると思います。

無駄な戦争はもうしない~しかし中東でのプレゼンスをゼロにはしない

飯田)そうすると、軍事力的なパワーではなく、ある意味、アメリカもソフトパワー的な使い方をして行くということになりますか?

宮家)無駄な戦争はしないということです。アフガニスタンで戦っても仕方がない。イラクでもそういう時期があり、シリアでもそうでした。そのような無駄な戦争はもうしないと。だからと言って、中東におけるプレゼンスをゼロにする気はない。なぜかと言うと、イランという脅威がある以上、湾岸地域は、サウジアラビアも含め、みんな脆弱ですから。人口も少ないし、国土は広いわけですから、なかなか撤退は難しい。

飯田)プレゼンスはゼロにしない。

宮家)やはり湾岸地域にはプレゼンスを置く。今回もタリバンとの交渉場所はカタールです。カタールにはアメリカ軍の巨大な基地があるのです。バーレーンにもありますし、中東の地域でも、現在もアメリカが大規模な軍隊を駐留させているのは湾岸地域なのです。今後もそれを止めようということには絶対にならないと思います。

日本がやって来たことは「国づくり」と支援すること~今後も続けるべき

飯田)日本の役割なのですが、アフガニスタンへのアプローチについて。アメリカは軍事介入も含めて入って行った。そのあとの平和構築や国家をつくるというところで、日本は緒方貞子さんもなかに入り、ある意味、いろいろな包摂のようなところを努力した。これは、今後の日本の役割として、ある意味でロールモデル的なものになりますか?

宮家)今回、同盟の国々、特にNATO諸国はタリバンも含めてアフガニスタンの国内で戦ったわけです。軍事力を使い、相当国内で反発を受けた。だからこそ、大使館で働いているアフガン人も含めて身が危ないわけです。

飯田)特にNATO諸国は。

宮家)では、日本がそういうことをやったのかと言われれば、別にアメリカと一緒に戦ったわけではありません。いまおっしゃったように民生の支援、人道的な支援しかやっていないわけです。だから、私は日本について、甘いと言われるかも知れませんが、欧米諸国、特にアフガニスタンに軍隊を駐留させて戦った人たちと日本人が、タリバンの人の頭のなかでまったく同じだとは思いたくないし、思いません。

飯田)欧米諸国と日本は違う。

宮家)我々がやって来たことは、ある程度理解されていると思うし、これからも支援は続けるべきだと思います。やる価値はあると思います。どんなに国が内戦で荒廃しようと、我々が基本的にやろうとしているのは、民主主義をやろうとしているのではない。そういうことではなく、国づくりをする。「国づくりの基本は人づくり」です。そのような人たちは、タリバンが来ようが、誰が来ようが、能力なり意志なりを持っている。日本はそうした国づくりをやってくれる人たちを育てているはずです。それが成功している限りにおいて、日本の成果が消えることはないと思います。

国づくりのノウハウを現地の人と共有しながら支援するのが日本の役割~日本の国益にもつながる

飯田)その意味では、「草の根的なことをやる」というのが、日本の真骨頂であるわけですか?

宮家)そうです。そして、別に力で押し付けるのではなく、彼らと国づくりの能力なり、ノウハウなり、知識を一緒に共有しながら、彼らがやって行くことを支援する。あくまで主人公はアフガン人であって、外国から押し付けるわけではないということは、タリバンの人たちだってわかっていると思います。ですから、日本大使館のアフガン人の協力者、スタッフでも、他の国の大使館、軍隊の通訳とは違うだろうと思います。

飯田)そのアプローチをアフガンのみならず、いろいろな国にやって行く。いまもやっているということになりますか?

宮家)それしかないと思います。日本は中東に政治的な野心があるわけでもないし、あそこでグレート・ゲームをやっているわけでもありません。あくまで主人公は現地の人々、国民、一般庶民だと思います。この人たちを助けるということに尽きるのではないでしょうか。それが日本にとってのいちばんの国益だと思っています。

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