コロナ禍に政権を背負ってしまった菅総理の悲劇
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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月17日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。9月16日で発足から1年を迎えた菅内閣について解説した。
菅政権の1年
菅内閣は9月16日、発足から1年を迎えた。総理は自民党総裁選後の退陣を表明しており、政権は1年あまりで幕を引くことになる。東京を含む緊急事態宣言を3度発令するなど、新型コロナウイルスの対応に追われて世論の支持が低迷したが、その一方で行政のデジタル化や脱炭素など、世界で遅れをとる分野で成果を残した。
新行)加藤官房長官は15日の記者会見で、「国民の命と暮らしを守る点を第一に取り組んで来た」と強調しました。コロナ対策については、「国民の理解を得ないと進んで行かない。次の政権でもしっかり反省材料として行く必要がある」と述べています。
菅総理の盾になる人材がいなかった~「菅総理には菅官房長官がいない」
鈴木)私なりに1つずつ挙げてみますが、まずは悪かったところについて。2020年12月に、例の「こんにちは、ガースーです」という挨拶をしてしまった、ネット番組がありました。私が司会をしていた番組でしたが。菅さんはあのとき、経済から感染対策に転換しようとしていた。話していてそのニュアンスがわかるわけです。しかし、周りの人たちがなかなかそれを理解していなかった。
新行)周りの人が。
鈴木)支えている官僚や大臣たちが、それでも「菅さんは経済ですよ」と言っている。菅さんのスタイルがわからなかった。その辺りの風通しが悪く、意思の疎通ができないという問題を感じました。「これは弱点だ」と思いましたが、それが最後まで響いた感じがします。盾になる人がいないのです。
新行)よく「菅総理には菅官房長官がいない」という言葉を耳にします。
鈴木)名言ですよね。安倍政権が長く続いたのは、盾になる人がたくさんいたのです。補佐官、秘書官、菅さんも麻生さんも盾になっていた。何か問題が起こると、菅さんや麻生さんが揉めていたでしょう。その後ろに安倍さんがいた。安倍さんを守っていたのです。
新行)安倍さんを守っていた。
鈴木)菅政権で誰が盾になりましたか? すべて批判は菅さんに直接行っていましたよね。その手前で守る人がいなかった。この辺りの組織論で失敗したのかなという気がします。
ワクチン接種を何とか世界に追い付くまで持って行った
鈴木)あえて言えば、ワクチンには気合を入れた。これは間違いないです。世界に追い付いたから素晴らしい、と言っているのではありません。やらなければもっと遅れていた。だから、何とかそこに付いて行くところまで持って来たという意味合いでの評価です。決して十分だと言っているわけではないのです。
新行)何とか追い付いて来た。
鈴木)最悪の状態を少しの遅れくらいまで、何とか持って来た。ワクチンには縦割りでいろいろな役所が絡んで来ます。厚労省が中心だけれども、国交省や経産省、文科省や総務省など、接種会場1つ探すにも、全部関わって来るわけです。
新行)接種会場を探すのにも。
鈴木)そういうところを、厚労省がしっかりやらなかったものだから遅れた。それでネジを巻き、「ワクチンを早く」とずっと言い続けたのです。世界から少し遅れたくらいのところまでで、何とか済ませたということです。ここは菅さんらしかったかなと思います。
コロナ禍に当たってしまった菅政権の悲劇
新行)手元の産経新聞に「モンテーニュとの対話」という欄がありまして、一部引用させていただきます。「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標の設定。デジタル庁の創設。携帯料金の値下げ。35人学級の実現。不妊治療への助成。最低賃金の引き上げ。福島第1原発処理水の海洋放出の決定。一定収入のある後期高齢者の医療費について、窓口負担のアップ。憲法改正の手続きを定める改正国民投票法の成立。新型コロナウイルス対策。東京オリンピック・パラリンピック」など、菅内閣の功績として、いろいろなことが挙げられています。一方で、「減点方式で報道するマスコミの姿勢はどうなのか」ということが書かれています。
鈴木)菅内閣の功罪はいろいろあるのだけれども、個別に見ると、実現した政策は新行さんがおっしゃったようにたくさんあるのです。しかし、コロナが全体を覆ってしまった。
新行)コロナが。
鈴木)これは当然だと思うのです。政策テーマはある程度、限られた人にかかって来ます。しかし、コロナは国民全員の問題です。
新行)そうですね。
鈴木)当然、国民の政治への意識も高くなるし、注文も厳しくなる。それによって、政治を見る目も厳しくなる。コロナが菅政権を覆って、そして1年が過ぎた。そこで批判が出たのが、例えばメッセージが届かないとか、科学が足りないということですが、これは菅政権だけではなく、日本の政治そのものに科学が足りないという問題があるのです。そういう意味では、いちばん厳しいときに、菅さんが政権を背負ってしまった。そういう悲劇的なところもあったと思います。
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