横山由依がAKB48卒業直前の舞台でつかみたい「一人でやっていくのに必要なもの」 ~誰も観たことがないブランニューオペレッタ「Cape Jasmine」  吉田尚記・対談<後編>

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いまだに続くコロナ禍の中、注目の舞台公演が幕を開ける。約1年ぶりに演劇活動に復帰した劇作家の根本宗子が作・演出・企画を手がける、ブランニューオペレッタ「Cape Jasmine」(10月6~7日 日本青年館ホール)だ。演出家不在となった新作ミュージカルを、せめてもと記者会見のスタイルで楽曲だけ順に披露することとなった女優6人のユニークな物語。

注目されるのはそのキャスト。横山由依、中山莉子に加え、お笑いコンビ・ニッチェの江上敬子、今回が初舞台となるラッパーのあっこゴリラ、姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンのもも、踊り子のrikoなどジャンルレスで異色の顔ぶれが揃った。

その中でも特に注目されるのがアイドルグループに所属する横山由依(AKB48)と中山莉子(私立恵比寿中学)。

<前編>ではこの根本による起用について、ニッポン放送・吉田尚記アナウンサーが3人に話を訊いた。

吉田アナは根本の舞台をずっと見てきており、お互いの番組・イベントのゲストに呼び合う仲でもある。そして吉田アナの代名詞の1つが「アイドル好き」。公私問わず様々なアイドル現場に参じており、もちろん横山・中山とも頻繁に現場を共にしている。

そこで<後編>では、この舞台に起用された2人がどのような心境で臨んでいくのかを吉田アナの視点で訊いた。導入は、まずチャラン・ポ・ランタンの小春が担当する音楽から---

AKB48 で歌ってきた曲とは全然違う

吉田:チャラン・ポ・ランタンの音楽って、今まで触れていなかった方からすると「今の日本にこんな音楽が!?」みたいなところ、あるじゃないですか。横山さん、お聴きになって印象とかどうですか?

横山:すごくかわいいな!と。わたしが歌わせてもらう曲は、自分っぽいなと思いました(笑)。

吉田:自分っぽいと。当然、当て書きみたいな形になるんですよね?

根本:小春ちゃんも、「テレビの中でしか見たことない人たちだね、今回は。テレビでいっぱい見ておくね」って言ってました(笑)

横山:(笑)

吉田:まるで定食屋さんでの会話じゃないですか(笑)

根本:たくさんテレビ見たり、CD聴いたりとかして台本も曲も作って。

横山:だから自分の曲もそうなんですけど、莉子ちゃんの曲は莉子ちゃんにしか絶対歌えないだろうなって思うし、それがすごく面白いですね。曲でも個人個人を出せるようにしてくださっている。あと、AKB48 で歌ってきた曲とは全然違うなっていう感じがしました。

吉田:でしょうね(笑)。AKB48 の次のシングルが小春ちゃん作曲だったらビックリしますね。

全員:(笑)

吉田:エビ中(私立恵比寿中学)はあり得る話だと思うんですけど、

中山:実は、エビ中の春ツアーのオープニング曲をチャラン・ポ・ランタンさんに作っていただいたことがあって。(※2015年のホールツアーの舞台音楽『吟遊詩人』)

吉田:ああ、そうか!

中山:チャランポランタンさんの世界観がすごく好きで、それ以来聴いているんです。今回のわたしの歌う曲は難しい曲なんですけど、逆に演じやすい、舞台で気持ちよく歌える曲だなと思ってます。

中山莉子

中山莉子

ライブでは“自分”でいればいいけど、舞台は“別の何か”になる必要が

吉田:そもそもの疑問が浮かんじゃったんですけど、中山さんはライブとかエビ中の活動とお芝居の時で、何か違いは感じてるんですか? 中山さんの中で「演技」ってどんなものなんだろうって、すごく興味があります。

中山:ライブでは“自分”でいればいいじゃないですか。だけどお芝居となると、別の何かを演じなければならないから難しいです。でも、舞台で新たな発見がいつもあるんですよ。それを見たファンの人が「こんな一面があったんだね」って喜んでくれるのがすごくうれしいです。

根本:中山さんは、芝居の思い切りがいいのは知ってたので、その安心感はとてもあります。あとはこういう思い切りにしてくれという選択肢を提案するだけなので、あまり疑問を抱かずにとりあえずやってみてくれる。

吉田:ああ、それは「エビ中力」な気がしますね(笑)。今までやれと言われたことで、意味わからないこといっぱいありましたよね?

中山:はい(笑)。

横山由依

横山由依

壁にぶつかっても「舞台に立ちたい」という思いが結局残った

吉田:そして横山さん、ニッポン放送に関係するところで言うと、『熱海五郎一座』(三宅裕司率いる喜劇ユニット)から根本さんの舞台まで、あまりに違うものに出ている(笑)

横山:ああ! 確かにそうですね(笑)

吉田:あまりに違うということでいうと、舞台への出演、始めは結構厳しい演出のところからスタートして、以後いくつか出られている中で、それぞれ全然違うなと思っていらっしゃいますか?

横山:確かに、自分って本当に演劇が向いてないのかもしれないなって思ったりもしたんです。いろいろ言われて訳がわからなくなって、周りの人からもいろいろアドバイスをもらっても、それも何もできないし。でも、やっぱり舞台に立ちたいなっていう思いが結局残ったんですよね。そのときに親に話したことがあって、そうしたら「自分がやりたいならやりな。何言われてもやればいいじゃん」って言われて、「あ、そうか!」と。やっぱり自分がやりたいことってやっていいんだなって、本当に基本的なところなんですけど、それを思って。その中で『熱海五郎一座』とかいろいろな舞台をやらせていただいて、「あ! 全部“楽しい”で終わることもあるんだ」って。

吉田:必ず何か辛いことがあるって思ってきてた?(笑)

横山:怒られるのはすごく大丈夫なんですけど、それに対してできない自分がすごくイヤだっていうので(舞台は)ダメかもなって思ったんです。でも、いろいろ舞台をやると「こういうのもあっていいんだ」「楽しいのもあるんだ」と思えて、「舞台って楽しいな」って思っていたときに、この根本さんの舞台のお話を頂いたので、絶対にやらせて頂きたいと思ってました。

根本宗子

根本宗子

この舞台は横山由依が人間に戻る話?

吉田:横山さんのアイドル人生としてはめちゃくちゃ重要なタイミングですよね、これは。12月に卒業で、その直前にアイドルとしてまだ看板が立つ最後の……?

横山:ラストですね。アイドル・AKB48の横山由依としての舞台出演は。

吉田:アイドルというものの意味を日本で一番考えている一人だと思うんですけど、今、総括できるぐらいの時期に来て、どういうものだと思いますか、アイドルって。演劇のことともあわせて聞きたいです。

横山)アイドルは……見てて楽しいですよね(笑)

吉田)シンプルなところ(笑)

横山)見てて“楽しい”って思うんですけど、演劇の作品や舞台に出させていただくと、自分がアイドルとしてやってきたことが染み付いている部分があったなと。根本さんも「セリフを言ったときに横山さんの“楽しい”っていう気持ちが前面に届いてくるけど、その下にある他のことを考えてるときの感情とかが見えたらもっといい」と言ってくださるんです。それはアイドルをやってたことで、失ったわけではないですけど、嫌なこととかあった日でももちろんステージでは“楽しく”やってきたし、でもそれはアイドルとしてはそれでよかったんです。ただ、そこの「嫌だったな」とか「こんな気持ちでステージ立てないけど」みたいに思ってた自分は一応いたので、そこを取り戻していかないといけないなって思っていて。そこで、アイドルもラストというタイミングでのこの根本さんのお芝居。アイドルとして片足を入れながら、「演劇」「お芝居」をしたい新しい気持ちが混ざっている……両方の気持ちがあるところを表現していく場があるっていうのは、すごく大事です。

吉田:めちゃくちゃ重要なステップですね

横山:そうですね。これから自分が一人としてやっていくときに無いといけないものを、今回の舞台でカケラでもいいからつかめたらいいなと思っています。

根本:横山さんの役は、きれいに教科書通りやろうと思えばいくらでもできる役を書いているので、もう「正解」は稽古場で出しているんです。でも、今回見たいのはそれ「プラスアルファ」のことになるので。「取り戻す」っておっしゃってましたけど、これはある意味、人間に戻る……横山さんが人間に戻る話です!(笑)

全員:(笑)

根本宗子、横山由依、中山莉子

根本宗子、横山由依、中山莉子

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Cape Jasmine

「Cape Jasmine」
2021年10月6日(水)・10月7日(木)(全3公演)
10月6日(水) 18:30開演
10月7日(木) 14:00開演/18:30開演
会場:日本青年館ホール 東京都新宿区霞ヶ丘町4-1
公式サイト:https://event.1242.com/special/cape_jasmine/

取材・文/田中宏明  取材・文・構成・撮影/安田隆也

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