ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月12日放送)にジャーナリストの有本香が出演。国会での岸田総理の所信表明に対する野党の代表質問について解説した。
岸田総理初の国会論戦 代表質問スタート
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立憲民主党・枝野代表)好循環の出発点は、適正な分配にあると考えますが、いかがでしょうか。総理の言う新しい資本主義も、アベノミクスとどう違うのか、総理はアベノミクスをどう評価していますか?
岸田総理)成長よりも分配を出発点にすべきとのご指摘ですが、岸田政権は「成長も分配も」が基本スタンスです。アベノミクスは6重苦と言われた旧民主党政権の経済苦境から脱し、デフレでない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大いたしました。成長なくして分配なし、まず成長を目指すことが極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます。それが、民主党政権の失敗から学んだことであります。
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国会では10月11日から岸田新総理の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。野党側は経済政策や政治とカネの問題などについて岸田総理を追及している。
飯田)新聞各紙は代表質問に関する記事が多いようです。
有本)そうですね。
飯田)朝日新聞の見出しは、
『金融所得課税見直し、首相修正 「分配政策、選択肢の一つ」 衆院代表質問』
~『朝日新聞デジタル』2021年10月12日配信記事 より
……となっています。
どのようにして成長軌道に経済を戻すか
有本)代表質問について、野党第一党党首の枝野さんからの質問が、「そこからですか」というような内容でした。いまコロナ禍で経済も傷んでいて、生活に困っている方もいらっしゃるなかで、「分配が先なのですか、成長なのですか」という質問をしているときではないと思うのです。岸田総理がおっしゃったように、成長なくして分配はないわけで、どうやって成長軌道に戻すかということを考えなければいけない。
軌道修正したと言われる「金融所得課税の見直し」
有本)そのために、「とりあえず皆さんに手当をしましょう」ということです。それを「バラマキ」と言ってしまうような財務次官がいるということですが。「軌道修正した」と言われている金融所得課税については、自民党総裁選のときも問題になりました。
飯田)なりましたね。
有本)高市さんもご自身の公約集のなかに書いていて、批判を浴びかけた。その直後に、私の出ているインターネット番組に来ていただいて、そこは説明していただきました。これは自民党の税調で常に出て来る案なのです。
飯田)毎年のように出て来る。
有本)第2次安倍政権がスタートした翌年ぐらいに、10%から20%に上げているのです。20%というのは妥当なラインです。あのときはNISAを導入するということとセットでした。
飯田)NISAの導入と。
「税収を上げることとセットでしなくてはいけない」ということが常にあった ~いまはやるべきではない
有本)そのあと、これを30%にするという案がずっと自民党の税調では出ていたのです。高市さんの説明を聞いていても、税金を取らない、あるいは新たな控除を設けるというような話ばかりだと、では税金を取る方はどうするのか、そこをセットで語らないといけないという話なのです。それもよくわからない。マクロ経済政策をしっかりやって成長して行けば、控除が増えたところで、全体の税収は増えるという方向の考え方なのだから。
飯田)パイが大きくなれば、率は同じでも取り分として額は大きくなる。
有本)総額としては増えるということでしょう。だからそれでいいはずなのに、「ではどこで税収を上げるのですか」という話をセットでしなくてはいけないという、おかしな話があるけれども、その案として常にあるということです。でも、「いまやるべきことではない」と軌道修正されました。
飯田)高市さん自身も、物価上昇率2%に行くまでは。
有本)それまでは、すべて凍結というか、あり得ない話なのだと。岸田総理はそこまで明確にはおっしゃっていないけれども、「いまやることではないと思っている」ということです。
20%からいきなり30%に上げるのか ~上げる必要はないのでは
有本)高市さんもNHKで言っていましたけれども、この税については、自民党の税調でやりますよと。そして、そこの陣容を見ると、それこそ岸田人脈になっているわけです。岸田人事なのです。
飯田)税調会長が宮沢洋一さん。この方は、総理の従兄弟でもありますが。
有本)従兄弟、親戚でね。だから岸田さんが何かと「財務省に近い」と言われている根っこのところにある人材と。
飯田)そもそも宮沢さんは財務……。
有本)財務官僚ですからね。そういう方を据えているというところで、やはりこの政策にはこだわりを持ち続けるのだろうなと思います。
飯田)どこかのタイミングで、「やるのではないか」ということが燻る。
有本)それを20%からいきなり30%に上げるのか、25%ぐらいにするのか……。そこはわかりませんが、それは投資マインドを冷やしますよね。
飯田)それだけに、タイミングもとても重要になって来る。
有本)とても重要です。
飯田)やらなくていいのであれば、やらなくていいのではないかという話も。
有本)やる必要はないと思いますね。諸外国のパーセンテージを見ても。
デフレは脱却しきっていない
有本)アベノミクスに対する評価ですが、「民主党政権で酷いことになったのを回復させた」という岸田さんの評価は正しいと思いますけれど、1ヵ所だけ気になったのは、「デフレを脱却した」というような言い方をされていたところです。脱却しきっていないのですよ。そこまで行き切らなかったところが残念なところなのです。これは高市さんもおっしゃっていたように、物価目標、きちんとそのインフレターゲットに行くまでは、冷やすようなことをするのは一切やめて欲しいですね。
飯田)高市さんが注目されたのは、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を……。
有本)黒字化も凍結すると。
飯田)物価目標が上がるまで当分は。
将来に対する投資についてはどう考えているのか
飯田)結局ここの部分が強力なタガとしてはまってしまって、物価を上昇させるような、あるいは景気を上げるような政策が打ちづらくなる。
有本)だからそれはダメなのです。将来に対する投資をもっと積極的にやるべきで、政府投資をもっと増やすべきだと思います。その辺りを岸田さんが本当はどう考えているのか。その各論を代表質問で引き出して欲しかったですね。国会はもう終わりますし、委員会もやらないのですから。
新型コロナについての対策 ~野党には治療薬の治験について厳しく質問して欲しかった
飯田)コロナ対策にしても、具体的というよりは、各論、総論的な「フワッ」としたものでした。
有本)そうですよね。
飯田)大臣に、人材確保や在宅療養者に対する対策を早急に示すよう指示をしたと。
有本)指示をしたと。
飯田)「その中身を知りたい」と思うのですが。
有本)ようやく、新型コロナの治療薬が出て来るわけではないですか。この治療薬がどういうタイミングで投与されるものなのかなど、いろいろありますけれども。
飯田)そうですね。
有本)総裁選の論戦のなかでも出ていたように、もう「感染予防一本槍」という話ではなく、治療を充実させて行かなければならない。在宅の人たちに適切な形で薬の投与ができ、重症化させないということになれば、限りなく普通の風邪やインフルエンザに近付くわけですから。「そのようにシフトするのかどうか」という大きな話をするのであれば、大きな方針転換についてきちんと聞くべきだったのではないかと思います。
飯田)分科会のあり方も含めての話になりますよね。
有本)含めての話ですね。ここに来て、急に陽性者数が減っていますが、治療薬の治験について政府はどのように捉えているのか、というところも厳しく質問して欲しかったですね。
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