ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月27日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。米中の高官がビデオ形式で協議したというニュースについて解説した。
米中、経済の高官が電話会談 マクロ経済や2国間関係について協議
アメリカと中国の経済分野で重要な役割を担う、イエレン財務長官と劉鶴副首相が10月26日、ビデオ形式で協議した。年内に米中首脳会談がオンラインで予定されるなか、中国はアメリカによる中国製品への関税上乗せ措置の撤廃などを求めた一方、対話を継続して行くことを改めて確認した。
飯田)年内に首脳会談をするとなると、今回は露払い的な会談になるということですか?
高橋)いきなりできないからでしょう。でもイエレンさんは財務長官なので、露払いになるのでしょうかね。
飯田)関税の話になると、本来は米通商代表部(USTR)が。
アメリカが協議にイエレン財務長官を出した本当の理由 ~資本の自由化をさせる?
高橋)USTRの方ですよね。だから少し違うと思うのですが。イエレンさんであれば為替の話になってしまうのだけれど、アメリカはどこかで為替の話をするつもりなのでしょうか。為替の話が中国はいちばん嫌なのです。
飯田)いまは管理体制にあるけれども、ということですか?
高橋)中国は一党独裁の共産主義でしょう。共産主義は資本規制を抑えないと保てないのですよ。
飯田)そうですね。
高橋)資本規制は為替と関係するのですけれど、イエレンさんの分野なのです。だから「資本規制を緩める」ということを言えば、中国の体制としては、生産手段の国有化が必ずあるので、そこは抵抗するというか、体制に関わってしまう話になるのです。そういうことをわかっていてイエレンさんを出しているのであれば、面白いなと思いましたけれどね。
飯田)なるほど。為替を変動制にすると。
高橋)あとは資本の自由化をさせるとかね。こういう話が出て来れば面白いですけれどね。
資本取引を自由化し、その後は為替の自由化となる ~共産主義の中国は絶対に飲めない方向
飯田)かつての日本の歩みも、もともと固定相場でやっていたものが変動になり、そして資本の自由化になった。
高橋)資本取引の自由化と、固定相場はすべてリンクしているわけではないのですが、かなりリンクしています。だから資本取引を先に自由化すると、その次には為替の自由化となるのです。
飯田)そうなります。
高橋)そういう流れを考えてのことであれば、面白いのだけれど、共産主義の中国としては絶対に飲めない方向なのです。それをバイデンさんがわかっていて、イエレンさんを表に出し、「その話になったらどうなるのか」というのを見ようとしているのであれば、面白いのですけれどね。
ものの話しかしない中国
飯田)なるほど。この会談はいろいろな面で情報の出方が興味深いですよね。
高橋)興味深いですよ。
飯田)中国側がやたらと関税などの情報を出しているのですけれど。
高橋)商務省でしょう?
飯田)そうです。
高橋)そこは「もの」の話だけなのですよ。ものと金はいつも裏側の話になるのだけれど、金の話をしないわけです。金の話をすると「資本取引や為替の自由化」となり、中国の根幹に関わる話に突き進んで行くのです。だから中国はいつも、ものの話だけで留めたいということです。
飯田)なるほど。
高橋)それをアメリカはわかっていて、「金の話もあるよ」と。資本取引の話もあるとわかっていてイエレンさんを出しているなら、面白いと思います。
通常は同じ分野の関係閣僚と協議する ~中国の体制に風穴を開ける意図もあるのか
飯田)アメリカ側は特に、これに関して報道があまり出て来ない。確かに関税については、財務省に権限がないから、おかしいとは思いました。
高橋)おかしいでしょう。
飯田)普通、表と裏で中国側が発表したら同じようなことになり、少し違うことをアメリカが言ってもおかしくないですよね。
高橋)カウンターパートと言って、同じような分野の関係閣僚で話すのが普通なのですよ。そういうやり方ではないから、深読みしてしまうのです。
飯田)TPPの話のなかでも、ものの関税の話ばかりが出て来ますけれど、中国はそれ以外のことを言わないですものね。
高橋)言えないからです。お金の話にまで関わると、資本取引のところは中国が雁字搦めにしていて、それで中国体制を維持しているわけです。そこに風穴を開けると、実は習近平さんが焦るはずなのです。習近平さんは気付かないかも知れませんが、周りの人が気付くはずです。
飯田)ガタガタになってしまうぞ、と。
高橋)そうすると面白い。
AIIBの年次総会で人民元の国際化について中国が言及
飯田)一方、同じタイミングでアジアインフラ投資銀行(AIIB)がオンラインで年次総会を開いていますが、それこそ人民元の国際化などと言うではないですか。固定相場のなかでできるのですか?
高橋)自分の配下になっている国とだけしかやらない。だから完全にアンバンドリングというか、セパレートされているのです。自分の配下の国だけは人民元の国際化をするという話で、国際化ではないのですよ。自分の属国のようなところとだけやるという話なので、完全に世界とは分けているのです。
飯田)元の経済圏のような。
高橋)元の経済圏で、経済圏どころか軍事力も行使できるような属国としかやらないということですよ。
飯田)はい。
高橋)逆に言うと、AIIBなどに入ったら属国になりかねないという話にもなるのですけれどね。
AIIBは人民元の影響を強めるための経済圏
飯田)かつてAIIBが立ち上がるときには、「バスに乗り遅れるな」というようなことが日本国内でも言われましたけれど。
高橋)ありましたね。私もある番組で3対1で議論したことがありました。3人はバスに乗り遅れるなという意見で、私は「あんなオンボロバスに乗るな」と言ったのだけれどね。
飯田)投資額がどこまであるかということと、アジア開発銀行(ADB)と一緒になってやって行くという話もありましたけれど、その話はどうなりましたか?
高橋)別れるでしょうね。これは人民元の影響を強めるための経済圏なのです。そこに入ると全部、中国体制に飲み込まれるという運命のところです。ある意味で高利貸しに近いようなものなのです。規模だけを見てはいけません。どういう国でやっているのかを見ないとダメですよ。
読むことが難しい中国経済の今後
飯田)今後の中国経済の読みですが、指標等々をどこまで信用するかということもあり、難しいと言われます。どうご覧になられますか?
高橋)難しいですよ。中国経済に企業投資しても、ディスクロージャーはほとんどないわけです。紙切れかも知れませんよ。投資した人の自業自得という世界になってしまうので、どのくらい投資しているのかわかりませんけれど、たくさん投資している人は焦っているのでしょうね。対外債務はたぶん切り捨てでしょうから。
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