ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月30日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。朝鮮中央通信が報じた北朝鮮の極超音速ミサイルについて解説した。
極超音速ミサイルの脅威 ~コースが読めず迎撃が難しい
朝鮮中央通信は9月29日、北朝鮮内陸部の慈江道・竜林郡から28日朝に発射された短距離ミサイルと推定されていたものが、新たに開発された極超音速ミサイル「火星8」であったと報じた。
飯田)極超音速ミサイルは、各国が開発にしのぎを削っているものですよね。
峯村)アメリカもキャッチアップしようとしていますが、先行していると言われるのがロシア、中国です。これで北朝鮮が開発に成功したとなると、日本周辺の安全保障環境が大きく変わる、重大な事件だと思います。
飯田)極超音速。音速をはるかに超えるもので、相当速いのですか?
峯村)音速の5~6倍、もっと速く飛ぶと言われています。それ以上に脅威なのは、その飛び方です。普通の弾道ミサイルは弧を描きます。そのため予測できて迎撃可能なのですが、極超音速ミサイルの場合は、スピード弧から外れてフラフラと飛ぶため、コースが読めないまま着弾するので、迎撃が難しいと言われています。
飯田)コースが読めない。
峯村)朝鮮中央通信が発表した写真を見て、私なりに分析したのですが、弾頭をよく見ると小さな羽があります。これが極超音速ミサイルの特徴で、この羽を使って弾道から外れて飛ぶのです。この形状を見ると、これは本当に極超音速ミサイルだと思います。
敵基地攻撃能力の検討の前にインテリジェンス情報を獲得することが必要
飯田)迎撃の難しさを考えると、既存のミサイル防衛体制がまったく役に立たない可能性があるということですか?
峯村)まったく役に立たないというわけではないのですが、かなり難しくはなります。しかも、北朝鮮は先日も鉄道を使ったミサイル発射実験をしましたが、これは二重、三重の意味で予測しての迎撃が難しくなるという状況です。
飯田)総裁選のなかでも、敵基地攻撃能力の保有について議論になりました。鉄道から発射するようなことを考えると、情報をどう得るかなどの対策にも関わって来ますか?
峯村)そこがいちばん重要なのです。私は敵基地攻撃能力の検討は絶対に必要だと思いますが、それ以前に、まずインテリジェンスです。どこにミサイルの発射場所があって、地下何メートルの深さなのか、どの鉄道に乗っているのか。このインテリジェンス情報を取るというのは難しいですし、いまの日本にそういう機関が整備されているとは思えません。まずそちらの方から検討を始めることが重要だと思います。
中距離ミサイルの整備も含め、敵基地攻撃能力保有の検討が必要
飯田)いままでであれば液体燃料だから、補給のときに衛星から見えると言われていましたが、北朝鮮は固体燃料でどこからでも撃てる能力を獲得したと見ていいですか?
峯村)そう見ています。さらには、潜水艦から発射されるSLBMも開発していますので、日本はほとんどミサイル迎撃ができなくなって来ている状況です。
飯田)いままでは撃って来たものに対して、真剣白刃取りのようなことをやろうとしていた日本ですが、今度は「撃たせないようにするにはどうするか」という議論をしなければいけないですよね。
峯村)そのための議論は必要ですね。あと、撃たれたときの基地などの耐久性です。講演などで那覇基地などに行くと、視察するのですが、普通の民間空港ですよね。あそこに小さなミサイルでも着弾したら、しばらく飛行機が飛べなくなるというくらい、脆弱な状況です。飛行機のシェルターなどもない。
飯田)掩体壕がなく、普通の建屋ですよね。
峯村)米軍基地である嘉手納基地を視察した際、「このシェルターはどのくらい強いのか」と聞いたら、「台風には強いよ」と言われました。半分ジョークで言っていたのですが、要はミサイルにはほとんど無力だという意味なのです。先ほどおっしゃった敵基地攻撃から、中距離ミサイルの配備も含めて、総合的に検討するべきでしょう。まず検討することから始めるのが重要です。現実を見たら、排除するときではありません。
飯田)それを始めるというだけでも、周りは「ん?」となるわけですか?
峯村)3か国の極超音速も含めたミサイルに囲まれ、こんなに安全保障状況が悪い国は、たぶん世界で日本だけです。喫緊の課題だと思います。
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