ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月8日放送)に日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が出演。中国共産党が開催する党の重要会議「6中総会」について解説した。
中国共産党が重要会議「6中総会」を開催
中国共産党は11月8日~11日までの日程で、党の重要会議である第19期中央委員会第6回総会(6中総会)を北京で開催する。結党から100年を迎えた党の歴史を総括する「歴史決議」案を審議し、最終日に採択する見通しだ。
飯田)「歴史決議」という言葉が国際面の見出しに並んでいます。毛沢東、鄧小平に続く第3の決議ということで、これは相当、重要なのですか?
秋田)相当、重要ですね。中国にとっての毛沢東さんは、企業で言えばオーナーです。中国をつくった人、創業者である毛沢東さんが創業直前に「このような国をつくって行くのだ」ということを決めました。これがまず歴史的ですよね。その次が1981年。第2のオーナー経営者と言ってもいいと思いますが、鄧小平さんが文化大革命の大混乱を収拾し、毛沢東さんの誤りを総括して、いまの改革開放につなげる歴史的な決議をした。いまはその2つしかありませんが、習近平さんが3つ目をやろうとしているのは、当然、「自分は毛沢東さんや鄧小平さん並の立派な指導者だ」ということを見せる狙いがあるのだと思います。
歴史決議をやらざるを得ないいまの中国共産党の脆さ
飯田)最近ではこれに向けたような感じで、「習近平さんはすごい人だ」という本や報道がたくさん出ているようですが、疑問に思ったのは、「この国は個人崇拝を禁止していなかっただろうか」ということです。
秋田)まったくその通りなのです。毛沢東さんの時代の反省から、鄧小平さんの時代に集団指導体制になりました。いま再び習近平さんは、毛沢東さんの時代に逆戻りする路線を突き進んでいます。興味深いのは、ここまでネットや言論を統制しているのだから、歴史的な決議をしなくても十分求心力はあるのだろうと思っていました。しかし、共産党100周年を理由に歴史決議をするのですけれど、「やらざるを得ない」のではないかということです。これは強さの表れではなく、脆さの表れなのではないかと感じています。
飯田)足元はやはりガタガタ来ていますか?
秋田)格差の問題や、最近では巨大になってしまったアリババやテンセントなどへの締め付け。また恒大集団という不動産会社が大変な負債を抱えていたり、さまざまな問題があるではないですか。日本や普通の国であれば、選挙をやって政権を変えればいい話ですよね。トランプさんもいろいろなことをやったけれども、トランプさんが負けてバイデンさんになればいいだけの話です。
飯田)政権交代して。
秋田)しかし、中国は選挙をやったことがないので、下野するということは国が崩壊するということなのです。そのような問題を抱えていて、指導者が求心力を自分で貼り付けて保たなければならない。そんな厳しい状況にあるということを、歴史決議をやらなければいけない現状が示しているのだと思います。
今後の格差は「共産党の体制が維持できるのか」という問題に関わる
飯田)最近は「共同富裕」という言葉が出て来ていますが、それも格差が酷くなってしまったことの表れなのでしょうか?
秋田)そうだと思います。格差が酷くても、これまでの格差とこれからの格差は違います。成長しているときは、上は豊かになるのですが、下も底上げされるという格差ではないですか。ところが、これからの格差は少子化が進んで、成長が下がって行くなかでの格差です。そうすると、下が厳しくなって上との差が開く。そのなかで「共産党の体制が維持できるのか」という問題に関わると思います。ですので、「共同富裕」というスローガンを掲げて、金持ちを叩くわけではないのですが、「もっと下にも配慮しろよ」という国づくりをせざるを得ないというところがあります。
気を付けなければいけない衰退大国に入りつつある中国
飯田)ある意味で撤退戦のようなもので、何をやってもどこかから不満が出るというような、綱渡りを続けて行かなければいけませんよね。
秋田)これまでは中国は大きくなって行き、「台頭する中国と私たちはどのように付き合ったらいいのか」ということを、「フォーリン・アフェアーズ」や「フォーリン・ポリシー」のようなアメリカの外交誌も取り上げて来ました。
飯田)台頭する中国と。
秋田)でもここ1~2ヵ月で面白いのは、中国は「衰退大国に入った」というような論調が出ているのです。ただ、そちらの方が我々としては気を付けて行かなければならないと思います。上り調子のときは、自信過剰な中国を心配していればいいのですが、人間でも不安になったり体の調子が悪くなってしまった巨人の方が、人には優しくできないではないですか。寛容に振る舞ったり落ち着いた行動ができないのです。
飯田)イライラして当たり散らしてしまう。
秋田)中国という帝国は、これから体は大きいまま、内部が不機嫌になって行く。そこに気を付けて行かなければいけないのだと思います。喜んでいる場合ではないのです。
アメリカに対抗することで国内の不満を収める
飯田)そのような国内の不満を収めて統合するためには、外に明快な敵をつくると統合できるということは、歴史が証明しているところもあります。この矛先が向くのは、やはり最も近い日本ということになるのでしょうか?
秋田)江沢民さんの時代は反日運動を教育としてやって、それを愛国主義という形に強め、接着剤にして来ました。しかし、悲しいのですが、いまの日本より中国の方が圧倒的に大きくなりつつあるので、日本だけでは足りないと思います。そこで、いま彼らが相手にしているのはアメリカなのです。アメリカを抜いて「2050年には世界の最強国になる」という事実上の目標を掲げ、ハイテクや軍事でアメリカに対抗しています。いまアメリカがその対象になったということだと思います。
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