ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月25日放送)に二松学舎大学国際政治経済学部専任講師の合六強が出演。岸田総理が11月24日に表明した国家備蓄石油の一部売却について解説した。
岸田総理、石油備蓄放出を表明
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協調の効果について、専門家の間で疑問視する声も
飯田)11月24日に総理官邸で、記者団の質問に答える岸田総理の模様をお聴きいただきました。国家備蓄の数日分を売却して、流通量を一時的に増やすという方向で、価格の抑制が事実上の目的となります。世界的に石油の値段が上がっていますけれども、こういう協調介入はあまり聞いたことがないですよね。
合六)今回の石油備蓄放出も、国家から出すことに関しては、日本でも初めてということで、驚きを持って受け止められています。同時にこの協調がどこまで効果があるのかは、専門家の間でも、やや疑問視する声があるようです。
政情不安が見られるヨーロッパ東部地域 ~ロシアがエネルギーを政治目的で使うのではないか
飯田)市場の動きを見ていると、そんなに価格が振れていないどころか、「少し上がったではないか」という話も出て来ていて、世界的に石油の値段が上がっている。アメリカも上がっていますが、ヨーロッパはどうなのですか?
合六)天然ガスの価格も上がっていると言われています。また、ヨーロッパ東部地域、ベラルーシの問題やウクライナ国境辺りでロシアが軍を集結させているなど、政情不安が見られるなか、ロシアがエネルギーを政治的な目的で使うかどうかということが注目されています。これからヨーロッパは寒くなり、暖房需要も高まりますので、気がかりな状況だと思います。
今後のヨーロッパのエネルギー事情に重要な影響を与える「ノルドストリーム2」
飯田)かつてもいろいろな局面で、「パイプラインをしめるぞ」ということを脅しとして使う場合がありましたが、あのやり方は効くわけですか?
合六)かつて、ウクライナとの間ではガス紛争がありました。ガスパイプラインがロシアからウクライナを通過してヨーロッパ方面に流れることで、ウクライナにも通過料収入があったのですが、最近、ドイツとロシアを結ぶ「ノルドストリーム2」というパイプラインが話題になっています。
飯田)ノルドストリーム2。
合六)これはウクライナを通る既存ルートを回避するもので、ウクライナも反対していますし、ロシアの行動に警戒感を抱いているポーランドなども同じく反対しています。アメリカも反対して来たのですが、ほぼ完成しているという状況で、事実上、バイデン政権になって完成を認めてしまったのです。実際、完工していて、ドイツ側の当局者が承認手続きを一時停止しているというニュースも出ていますので、ロシアがどう動き出すかというところは、ヨーロッパのエネルギー事情を考える上で、重要になって来るのではないかと思います。
飯田)つながってしまうと、中欧の諸国からすれば、ある意味でカードがなくなってしまうということですか?
合六)アメリカもその点を気にしていて、ドイツにプレッシャーを掛けていたのですが、事実上、完成を認めている。その上で、もしロシアが政治的な目的でエネルギーを使うということであれば、「米独が協調する形で断固たる姿勢を示す」という声明は出していますが、具体的にどうやるのかという方法については、その状況になってみないとわからない部分があります。ウクライナやポーランドなどの国々は、懸念を持ち続けているのだろうと思います。
ノルドストリーム2によるロシアとドイツ、ヨーロッパの今後の関係
飯田)ドイツにとって安定供給という意味ではいいのでしょうが、逆に言うと、ロシアに首根っこを掴まれてしまうことにもなりかねませんか?
合六)経済の相互依存関係というのは、関係性がいい場合はWin-Winでいいのですが、首根っこを掴まれるというところで弱みを握られているとも解釈できるわけです。また、逆を考えれば、ロシアの方もドイツ、ヨーロッパという市場に依存しているので、今度はヨーロッパ側がそれをテコにできるのかどうかが注目されるところです。
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